過激派組織「イスラム国」がヨルダン軍パイロットのムアーズ・カサースベ中尉を殺害したとされる映像が公開された3日、ヨルダンでは大きな衝撃が広がった。
生きたまま火をつけるという「イスラム国」の非道な手法とともに、中尉を奪還できなかった政府の対応に、市民は怒りをあらわにした。
これまで中尉の家族らが待機してきたアンマン市内の集会所には3日夜(日本時間4日未明)、約1千人の市民が押し寄せた。
政府の対応への賛否を巡り、集まった群衆の一部がもみ合いになるなど、一触即発の状況になった。
政府が中尉との交換を模索したとされるサジダ・リシャウィ死刑囚が近く処刑されるとの情報が入ると、歓声が上がった。
自営業ムハマンド・シャヤラさん(42)は「いてもたってもいられず、中尉の家族を支えようと集会所まで来た。イスラム教徒は、このようなことは絶対しない。『イスラム国』を強く憎む」。
自動車エンジニアのアバイダ・ダレエンさん(22)は「中尉が拘束されて以来、眠れない夜を過ごしてきた。家族のことを思うと胸が張り裂けそうだ。この怒りをどこにぶつけたらいいのか」。
中尉の伯父は集会所で報道陣に対応し、「公式な声明は、(中尉の)父親から発表する」と述べた。
アンマン中心部では3日夜、カサースベ中尉をたたえ、「イスラム国」の凶行に抗議するデモがあった。
100人以上の参加者は政府の支持者が多いとみられる。
ヨルダン国旗や「『イスラム国』をヨルダンで処刑する」などと書かれた横断幕を掲げ、「我々の血と魂をヨルダンに捧げる」などと怒号をあげながら練り歩いた。
大学教師のフォアド・ハサウネさん(33)は前夜、日本大使館前で「イスラム国」に殺害されたとされる日本人2人の追悼集会に参加したばかり。「ムアーズのことをずっと心配していた。ショックだ。ヨルダンと日本の結束はもっと強まるだろう」と話した。
中尉の出身地のヨルダン中部カラクでは同日夜、1千人を超える市民が行政庁舎を取り囲んだ。
政府の対応を支持する人と批判する人の間で怒鳴り合いやけんかになり、治安部隊が出動しているという。
(アンマン=三浦英之、渡辺丘、渡辺淳基)
ヨルダン市民、凶行に怒り 政府の対応めぐり賛否沸騰
http://www.asahi.com/sp/articles/ASH242581H24UHBI008.html