環境汚染でホッキョクグマのペニス折れやすく
研究者がPCB濃度と陰茎骨密度の関連を示唆
2015.02.04
http://nationalgeographic.jp/nng/article/20150203/434200/ph_thumb.jpg 過去に猛威を振るった毒性物質PCBが、今も北極周辺で影響を及ぼし、ホッキョクグマのペニスの骨をもろくしていると、デンマークの研究者が学術誌『Environmental Research』2015年2月号に発表した。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、かつて変圧器から塗料まであらゆるものに使用され、世界中に無造作にばらまかれてきた化学物質。
生物が食べると体内の脂肪組織に蓄積され、ガンの原因になるなど深刻な健康障害を引き起こす。日本では1970年代に使用が禁止されている。
PCBの影響を大きく受けるのは、食物連鎖の上位にいる動物だ。魚1匹に含まれるPCBはごく微量だが、アザラシは毎日たくさんの魚を食べ、
そのアザラシはホッキョクグマに捕食される。最終的に、大型動物の体内には大量の汚染物質が蓄積される。
「こうした化学物質の場合、毒性がすぐに現れるわけではなく、非常に見えにくいかたちで影響してきます」と、今回の研究で主執筆者を務めた生物学者クリスチャン・ソンネは言う。
繁殖能力への影響は
ソンネらは狩猟民の協力を得て、カナダとグリーンランド北部でホッキョクグマの8つの亜集団から陰茎骨を収集、それぞれの骨密度を測定した。
併せて、同じ亜集団に属する別の個体の脂肪組織を分析し、PCB濃度の測定も行った。
その結果、PCB濃度が最も高い集団では陰茎骨の骨密度が最も低く、骨が折れやすい状態にあることがわかった。
他の骨も当然もろくなってはいるが、陰茎骨は非常に小さいため、骨密度低下のダメージが特に大きく出る。
陰茎骨が折れやすくなれば、繁殖能力、ひいてはホッキョクグマの個体数に影響することも考えられる。
なにより恐ろしいのは、これが氷山の一角にすぎないかもしれないことだとソンヌは言う。
「われわれは決して、本当に衰弱したホッキョクグマを目にすることはありません。そんな状態であれば海で溺れるか、他の個体やセイウチに食べられてしまうからです。
ですからこの問題は、われわれが考えているよりずっと深刻な可能性もあるのです」
http://nationalgeographic.jp/nng/article/20150203/434200/