そして「脳のクセ」は、ときに他人の不幸を蜜の味にも変えてしまうという。いわゆる「メシウマ状態」も、脳のしわざなのである。
こうした感情にはうしろめたさが伴うため、恥ずべき喜びを意味するドイツ語「schadenfreude(シャーデンフロイデ)と名付けられ
、脳科学や心理学の研究対象にもなっている。シャーデンフロイデのカギを握るのは、不安情動に関与する前帯状皮質と、快
感を生み出す脳領域の腹側線条体とされている。
近年に行われた実験では、シャーデンフロイデに関する興味深い事実が判明した。「利他的懲罰(ズルした人に制裁を加えること)」に
関連した実験で、女性の場合は、苦しんでいるのがたとえ「公正さに欠ける人物」であっても、微弱ながらも共感する気持ちが生まれた。
しかし男性は「公正さに欠ける人物」が苦しんでいた場合、相手の痛みで脳の報酬系が活性化(喜びを感じていた)したのだ。つまり男性脳のほうが、メ
シウマ状態を感じやすい傾向にあることが示されたのである。
ちなみに、「妬み」に関連した他人の不幸を喜ぶ脳の活動についての研究も紹介されている。被験者の「かつての同級生の成功や豊
かな生活場面」を刺激として脳活動を記録すると、不安や痛みを感じていることが判明し、また「その同級生が不幸に陥ったことを知った
とき」の脳活動では、快感領域が活性化したという。この実験では男女を問わず、シャーデンフロイデが誰の脳回路にも実在する感情で
あることが証明されたのだ。
なんだかイヤな結果を聞いてしまったと思うかもしれないが、中野先生によれば、シャーデンフロイデは「社会がうまくまとまっていく上
で必要であったり、やる気やモチベーションを上げる役割も果たす、大切な感情でもある」とのこと。「メシウマ状態」は、脳にもともと備わ
っている感情であり、逆に言えば脳のクセでしかない。自分よりデキる同僚の失敗をみつけてほくそえんでしまい、「オレってちっちぇえ
」と凹む必要はないのである
http://ddnavi.com/news/195212/