美味しんぼ 福島で「鼻血」表現 行政抗議を危ぶむ声
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20140514162240022 小学館の週刊誌で連載中の漫画「美味(おい)しんぼ」で福島第1原発事故(福島県)の
被災地で主人公らが鼻血を出す表現をめぐり、県知事や閣僚、行政側から批判が相次ぐ。
一漫画作品への異例ともいえる「抗議」の過熱ぶりに、福島県出身者からも「『安全』の押しつけ」
と反発の声が上がる。専門家らも「表現の抑圧につながる」と危ぶむ。(福岡範行、小室亜希子)
作品をめぐっては福島県はホームページで「風評被害を助長する」とコメント。
客観的な表現にするよう小学館に強く申し入れているとした。
13日には根本匠復興相ら閣僚、環境省からも作品に対する批判が続出した。
震災後、福島県田村市から避難している金沢市の浅田正文さん(72)は
「福島では鼻血がよく出るという話を何度も聞いた。『風評被害』を強調する福島県こそが、
その事実に目を背けている」と批判。閣僚までもがこぞって漫画を批判していることに
「まるで圧力をかけているかのよう」と懸念する。
浅田さんは「行政機関として、より住民の安全を重視した立場で考えないといけない」と、
今回の県側の対応を危ぶみ、近く佐藤雄平知事あてに抗議のファクスを送るという。
石川県白山市在住の須藤春夫・法政大名誉教授(メディア論)は「行政の側が表現のあり方に意見するのは、
好ましくない。作者の雁屋(かりや)哲さん以外の人も、いちいち行政からの評価が入ってくるのではないかと感じて、
表現を萎縮させてしまう恐れがある」と、県や閣僚の対応を問題視する。
「健康被害が問題提起されたら行政は、応えるべきなのに、逆に風評被害と騒いでいる」と
指摘するのは表現の自由に詳しい田島泰彦上智大教授(メディア法)。
「権力者が表現の中身や手法について『これはいかん』と言っており、
強力な萎縮効果をもたらす。ただちに(憲法違反の)検閲ではないとしても、
率直なことを描くと権力から抑圧されるというメッセージを送っており、悪質だ」と話した。