2012年に提供が禁止された牛レバーの生食(レバ刺し)だが、消費者からの人気は根強く、
罰則(2年以下の懲役か200万円以下の罰金)が定められているにもかかわらず、隠れて提供している店もあるようだ。
こうした牛レバーの生食によって起こる病気として、肝蛭(かんてつ)症がある。岐阜県食肉衛生検査所の松尾加代子氏は、
日本寄生虫学会の会合で、原因となる寄生虫の肝蛭に感染したばかりの牛が検査などで見落とされ、
市場に出回っている恐れがあるとして注意が必要と呼びかけた。なお、肝蛭は牛だけでなく、豚や羊などのレバーにも寄生する。
牛の肝臓に寄生する肝蛭の成虫
http://kenko100.jp/images/assets/2014/05/275x229x140507_fasciolasp.jpg.pagespeed.ic.OrAHunyhgp.jpg 感染すると肝臓の痛みや黄疸など
肝蛭は体長5ミリほどの寄生虫で、成虫は体長2〜3センチ、幅1センチほどになる(写真)。
中間宿主(幼虫が発育する場所)は水田や小川などにすむ巻き貝のヒメモノアラガイ、終宿主(成虫が繁殖する場所)は人、牛、豚、羊など。成長すると水辺の植物にくっつくため、これらをよく洗わないで食べても感染する。
肝蛭に感染すると、肝臓の痛みや腫れ、機能異常、発熱、黄疸(おうだん)、嘔吐(おうと)、じんましん、発熱、下痢、貧血などの症状が現れる。
糞便(ふんべん)や胆汁などの検査で卵が出てくれば診断がつき、治療は抗線虫薬のプラジカンテル(商品名ビルトリシド)などを服用する。
全国の屠(と)畜場で肝蛭が発見される割合は減っており、近年は1%程度。しかし、人への感染報告は年に数例あるという。
そこで松尾氏は、同検査所管内で肝蛭に感染した牛の実態を調査した。
農家の高齢化で対策に遅れも
岐阜県内で処理される牛の過半数は愛知県産だが、2009〜11年度に肝蛭感染で肝臓を廃棄した54頭のうち、半数は岐阜県内の特定の農家から出荷されていることが判明した。
そのため松尾氏は、岐阜県中央家畜保健衛生所などと連携し、2011年に農家を視察、翌年にヒメモノアラガイを含む巻き貝の調査を行った。
その結果、肝蛭に感染した牛を多く出荷していた農家では、牛の飲み水用の水槽からあふれた水が地面にたまったまま放置されており、巻き貝の繁殖には絶好の環境だった。
http://kenko100.jp/articles/140507002950/