<認知症男性>身元不明のまま仮名で2年 大阪の路上で保護
2年前に大阪市の路上で警察に保護されたが、名前や住所など身元が全く不明のまま、
仮の名前が付けられ介護施設で暮らす重い認知症の男性がいることが分かった。
男性は自分の名前が分からず、該当する行方不明者届もない。
専門家は「高齢化が進み、今後このような人が増えていくのでは」と危惧している。
大阪市は男性に対し、保護された場所にちなんだ名字に「太郎」という仮の氏名を付けた。
福祉の保護を受ける手続きなどで必要なためだ。容姿などから70歳と推定して仮の生年月日も決めた。
現在推定72歳になったが、入所する同市内の介護施設の職員には「実際はもう少し若いかもしれない」との見方もある。
記者は4月上旬、介護施設を訪ねた。「お元気ですか」と声をかけると、太郎さんは「ああ」とうなずき笑顔を見せた。
判断能力が不十分な人を守る成年後見人に、市長申し立てで選任された山内鉄夫司法書士らによると、太郎さんの要介護度は3。
言葉を発するのが難しくトイレも介助が必要だが、足腰は丈夫でひとりで歩くことができる。
2012年3月11日午前8時前、日曜の朝だった。同市西部にある住宅街の歩道でしゃがんでいたところを警察に保護された。
水色のダウンジャケットにグレーのスエットズボン、黒の運動靴。身なりに汚れはなかった。
お金や所持品はなく、名前を尋ねても「分からん」と答えた。
(中略)
太郎さんは特殊なケースなのか。認知症介護研究・研修東京センターの永田久美子研究部長は
「超高齢社会では人ごとでなく、同様のケースが身近で増えることは確実だ。これまでも太郎さんのような存在と対面しているが、
実態把握も対応も進んでいない。一刻も早く本名を取り戻し家に戻れるように、国や自治体が本格的に対策に乗り出すべき時期だ」と話している。【銭場裕司、山田泰蔵】
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