世界貿易機関(WTO)ドーハ・ラウンド(多角的貿易交渉)の先行合意を巡る協議が山場を迎えている。
加盟国は21日に途上国の開発支援策に関する点検で合意し、週末返上で貿易円滑化を協議。
先行合意の断念が瀬戸際で回避される可能性が出てきた。
農業分野の案件で情勢はなお不透明だが、うまくいけばWTOは25日にも一般理事会を開き、来月の定
例閣僚会議に示す先行合意を盛り込んだ閣僚文書を正式に承認する可能性がある。
貿易円滑化をめぐる協議でアゼベド事務局長は22日、途上国に設ける長期の猶予期間などの優遇措置
と資金援助に関する文書案を提示した。
争点は途上国が資金援助を受けながら税関手続きの規律強化などで履行を怠った場合で、対象となる途
上国の実情を検証する有識者会合を設置する仲裁案をたたき台に協議が続いている。
農業分野では農産物の低関税輸入枠未消化の改善について、先進国だけ先行実施するものの、6年後に
見直しを可能とする妥協案に米国と中国が合意した。
日本も当初は先進国・途上国とも対象にすべきとの考えだったが、最後は歩み寄った。
農産物輸入途上国が食料安全保障として拠出する補助金の増加は、4年間は提訴の対象としない譲歩案
に加盟国は一旦合意した。
しかしその後、パキスタンやウルグアイなどの農産物輸出途上国が一転して反対を表明。
増産された農産物の輸出に発動できる緊急輸入制限措置(セーフガード)の創設の文言が弱いなどとして
再協議を求めている。
インドも譲歩案に反対するとの報道が現地から伝えられている。
農業輸出補助金の撤廃も、アルゼンチンが先進国の先行実施に強いこだわりをみせており、農業分野の
案件をめぐる特定の加盟国間での埋めがたい溝は依然として続いている状況だ。
日本農業新聞(2013/11/25)
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=24680