安倍政権が特定秘密保護法案の今国会成立を目指しているのは、年内に発足させたい
日本版「国家安全保障会議(NSC)」と一体だと考えているためだ。米国など他国との機密情報の交換を
緊密にするには、情報管理を厳しくする必要があるとの立場だが、情報を隠す立法ばかりに躍起になっている。
日本版NSCは米国にある組織にならい、外交・防衛政策の司令塔として官邸に置く組織。
安倍晋三首相は、二〇〇六年に発足した第一次政権でも「日米両政府が常に意思疎通できる仕組み」が必要として
設置を目指し、自らの退陣で断念した経緯があり、設置へ強い意欲を持つ。
秘密保護に関しては、一〇年に沖縄県・尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件で現場の映像が流出し、
民主党政権が対策を検討する有識者会議をつくったのが議論の始まり。
民主党政権を引き継いだ第二次安倍政権は、一月のアルジェリア人質事件を受け、
外国政府との情報共有を進めるべきだとしてNSC設置と秘密保護法制の準備を加速させた。
ただ、公務員らが職務上知り得た情報を漏らすのは、現行の国家公務員法や自衛隊法でも禁じている。
違反した場合の罰則もあり、日本弁護士連合会は「現行法で対処できる」と主張。
実際、外部への漏えい事件で懲役刑が適用されたり、懲戒免職処分になった事例はあり、
漁船衝突事件では映像を流出させた海上保安官が停職一年になっている。
法案の内容も問題だが、今国会での成立を急ごうとする政権の姿勢も疑問だ。
政府・与党はNSC創設法案を先行処理し、十一月上旬から秘密保護法案の審議に入りたい考え。
しかし、会期は十二月六日までで、そこからは残り一カ月しかない。
重要な法案は、会期が長い通常国会で十分な審議を重ねるのが常識。
国民の「知る権利」にかかわる重大な法案を、与党の数の力で押し通すことは許されない。
特定秘密保護法案をめぐる動き
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/images/PK2013102602100051_size0.jpg ソース 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013102602000137.html