「真の文明ハ山を荒さず、川を荒さず、村を破らず、人を殺さゞるべし」 田中正造没後100年
正造の遺したもの(8月17日)
日光市足尾の松木渓谷はかつて「日本のグランドキャニオン」と呼ばれた。銅山の精錬所から出る亜硫酸ガスが、山々を赤茶けた姿に変えた
▼今年はその足尾鉱毒事件の解決に半生をささげた田中正造の没後100年に当たる。「デンキ開ケテ世見暗夜となれり」。
正造が、原発事故直後の日本の社会を言い当てた言葉は、県内外のシンポジウムなどで取り上げられた
▼「真の文明ハ山を荒さず、川を荒さず、村を破らず、人を殺さゞるべし」とも言った。音楽家の坂本龍一4 件さんも、この言葉をビデオで広く紹介、
100年後に生きる私たちに感動を与えている
▼荒廃した山々には18年前、足尾に緑を育てる会が「百万本の木を植えよう」と呼びかけ、植樹活動が始まった。木を植えてくれた人は12万人を超える。
本紙の客員論説委員だった作家の立松和平さん=故人=が「200年は軽くかかる、気の遠くなるような大事業」と語っていたが、遺志を継がねばならない
▼足尾の銅親水公園では18日、恒例の足尾グリーンフォーラムが開催され、作家の水樹涼子さんが講演、シンポジウムでも「正造の遺したもの」が紹介される
▼木を植えて緑を取り戻し、自然に親しむ。こうした活動こそ、正造が後世の人たちに望んでいたことではないだろうか。
http://www.shimotsuke.co.jp/special/raimei/20130817/1113416