電子小説誌が新人を育成
デジタル化の波は小説誌にまで――。
創刊から2年半となる角川書店の電子小説誌「デジタル野性時代」に続き、今春、文芸春秋が電子小説誌「つんどく!」を刊行した。どちらも既存小説誌の
電子書籍化ではなく、オリジナルの書き下ろし作品で作る新雑誌。新潮社も、会員制ウェブサイトで書き下ろし小説などを読める「yomyom pocket
(ヨムヨム・ポケット)」を始めるなど、新たな試みが広がっている。
4月創刊の「つんどく!」は、小説誌「別冊文芸春秋」編集部が担当し、主要電子書店で販売する。
第1号は東川篤哉、有栖川有栖ら人気作家10人の読み切り小説と、「別冊文芸春秋」が新たな書き手を育てようと行う「新人発掘プロジェクト」の入選者7人の
作品を掲載する。
電子小説誌の利点の一つは、ページ数=紙幅を考える必要がないことだ。その分、「デジタル野性時代」「つんどく!」「yomyom pocket」とも若手作家に作品
発表の場を与えることができ、「つんどく!」で新人7人の作品を一挙掲載できたのもそのおかげ。中には原稿用紙200枚を超える作品もあり、「『別冊文芸春秋』
なら『50枚で』とお願いしていた」と吉田尚子編集長。
ベテラン作家にもメリットがある。「つんどく!」では今回、作家に執筆を依頼する際、原稿の長さを一切指定しなかった。吉田編集長は「本来なら、小説にはそれ
ぞれ作品に合った長さがあるはず。作家にもそれぞれの呼吸があり、それらをうまく生かすことができた」と話す。「つんどく!」は税込み850円。年内にもう1冊出し、
来年度からは季刊の予定だ。
電子小説誌の先駆けとなった「デジタル野性時代」の足立雄一編集長は「電車に乗って周りを見れば、多くの人がスマートフォンやタブレットを見ている。それらの
端末は、本を読むこともでき、どうしたら本を読んでもらえるのかを考えるのも出版社の仕事だと思う」と話している。
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20130529-OYT8T00571.htm