歴史小説家・関裕二氏が考察!「吉備団子とは、領地のことに違いない」
ドンブラコと流れてきた桃から生まれた桃太郎は、お腰につけた吉備団子をやって犬と猿とキジをお供に鬼ヶ島に鬼退治に向かう……。
このあまりに有名な昔話の背景に、実は、大和朝廷から遣わされた武将による壮絶な「温羅(うら、=鬼)征伐」の言い伝えが隠されていた?
江戸時代にさまざまな伝承をつないでできた昔話「桃太郎」に隠された意味を読み解くべく、歴史作家の関裕二氏に話を聞いた。
■岡山・吉備路は歴史ロマンの宝庫
「桃太郎には、実は暗喩が多く隠されています。まず、鬼のモデルとなった温羅は、百済(くだら)から来た王子だと考えられます。
確かに吉備津彦命(きびつひこのみこと)伝説の舞台となる弥生時代の日本には、朝鮮半島からの来訪者が頻繁にありました」
当時、朝鮮半島では青銅器文明が発展し、製鉄のための燃料となる木が不足するほどだったという。
「日本の森林資源は『浮く宝』と呼ばれ知られており、それを求めて百済や新羅(しらぎ)から製鉄技術を持った集団が訪れていたようです」
古今和歌集で吉備は「真金(まがね)吹く」と歌われているが、真金とは鉄のことであり、鉄の産地であったことをうかがい知ることができる。
さらに、関氏は昔話「桃太郎」でキーとなる「吉備団子」について、「実は領地のことだったのではないか」と考察する。というのも現在の岡山の平野部は江戸時代から近代にかけて干拓されたもので、
吉備津彦命の時代には海岸線は内陸まで迫っており、小高い丘などは島だったとされる。
「吉備津彦命は美しい海に浮かぶ島々を団子に見立て、領地の見返りに“猿・犬・キジ”に、温羅征伐を要請したのではないだろうか」
鬼が温羅であったように、家来にもそれぞれ元となった人物がいたとされる。猿は楽楽森彦(ささもりひこ)という、吉備で温羅とともに鉄を作っていたといわれる豪族で、朝廷の謀略の末、温羅を裏切り朝廷側に寝返ったという説がある。
犬は、吉備津彦命とともに温羅征伐にやって来た犬飼健命(いぬかいたけるのみこと)とされる。ちなみに、五・一五事件で暗殺された総理大臣・犬養毅(つよし)は、その子孫ともいわれている。
(以下ソース)
http://wpb.shueisha.co.jp/2013/05/14/18991/