終戦を知らぬまま沖縄・伊江島の木の上で、2年間暮らした2人の兵士がいた−。
劇作家、井上ひさし(1934〜2010年)が死の直前まで描こうとしていた実話を、
蓬莱竜太(37)が脚本化したこまつ座&ホリプロ公演「木の上の軍隊」(栗山民也演出)が4月29日まで、シアターコクーン(東京)で上演中だ。
「残されたのはタイトルと設定だけ。沖縄問題は井上先生が亡くなった後も変化しているから、戦争から遠い自分の世代が今、書く意味があると思いました」
舞台は美しい南の島の木の上。島の新兵(藤原竜也)と本土から来た上官(山西惇)が、敗戦前から木の上で生活している。
2人の会話から境遇や考え方の違いが浮かび、それは微妙な心理戦の様相を見せる。
「新兵は沖縄、上官は本土の象徴ですが、一緒に過ごすことで互いに顔のある存在になり、むしろしんどい関係になる。沖縄と日本も同じではないか」
2人が生活したガジュマルにも登った。木から下りた2人がその後、二度と会うことはなかったという事実から、どこか寓話的な戦争の物語が広がった。
戦闘シーンも声高なプロパガンダもないのに、現在の沖縄にまで思いが広がる骨太な戯曲だ。片平なぎさが木の化身で出演。
5月3〜6日、天王洲銀河劇場。5月16〜19日、大阪・シアタードラマシティ。
こまつ座(電)03・3862・5941。(飯塚友子、写真も/SANKEI EXPRESS)
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/130408/ent13040815490011-n1.htm