◇火使わず安全 子ども向け体験も
スイカやパイナップル、枝豆の皮、竹などから紙を手作りできる方法を、
県立博物館(徳島市)が考え、完成した約150枚を同館で展示している。
火を使わずに一から作れるのが特徴で、子ども向けの体験教室を担当する学芸員が試行錯誤する中でできたという。
同館では、訪れた子どもたちが紙に触れるなどで関心を深めている。(苅田円)
考えたのは小川誠学芸員(植物学)。
通常、紙を手作りする場合、コウゾやミツマタなどに重曹を混ぜて煮詰めて繊維をばらし、上澄みをすくことで、再度繊維を絡ませるが、
小川学芸員はこの方法は火を使うため、子どもたちが自由研究などで取り組む際に、ネックになると感じていた。
そこで、竹と重曹を瓶に入れる実験を始め、数か月間様子を見るつもりだったが、そのまま約3年、忘れて放置していた。
しかし、偶然発見した後、ドロドロになっていた竹をすいてみたところ、紙作りに成功したため、2011年から本格的に研究を再開。
重曹よりもアルカリ濃度の高い漂白剤を使えば、短期間で繊維をバラバラにできることが分かった。
さらに、子どもたちに身近に感じられるようにと、竹以外でも実験をスタート。
パイナップルの皮なら1週間、ヨモギなら約1日で繊維を取り出せる状態になり、
昨年夏以降、同じ方法で枝豆や栗の皮、ススキなど身近な植物を使って次々と手作りしていった。
同館では2月から、150種類の素材で作った紙を、手順を紹介した資料とともに展示しており、
訪れた子どもたちは手にして触感を楽しんだり、自分たちが食べている野菜などが使われていることを知って目を丸くしたり。
鳴門市大麻町から訪れた同市堀江南小3年、中山深優(みゆ)さん(8)は
「大好きなブドウから紙ができるなんて知らなかった。家でもやってみたい」と目を輝かせた。
展示は今月7日まで。夏休みには体験教室を開く予定で、
小川学芸員は「身近なものだからこそ、より興味が湧くのでは。今回の展示をきっかけに、自然科学にも関心を持ってほしい」と話している。
(2013年4月4日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokushima/news/20130403-OYT8T01583.htm