<「何者」で第148回直木賞を受賞した。男性では史上最年少だ>
自分では、受賞したとはまだ言えない気がします。本の世界は、スポーツのように勝敗を分ける確固たる物差しがあるわけじゃないので、
分からないんですよね。ずっと疑い続けているような形です。
<小学生の時の体験が作家の原点だ>
文学賞に初めて投稿したのは小学6年の時です。その小説を担任の女の先生に見せると、卒業式の前、便箋3枚に書いた感想をくれて。
遠い存在と思っていた先生が、一人の人間として対等に向き合ってくれたんですね。文章に大きな可能性を感じました。あの時の感動を
追い続けていたら、その先に直木賞がありました。球児のみなさんも、この先出合う、どの出来事が自分の未来を支えてくれるか分から
ないという気持ちで頑張ってください。
<息の長い作家になりたい>
ミステリー作家ではない人が、売れ続けるのは難しいかもしれません。それでも書き続けるつもりです。ミステリー的な仕掛けは好きなので。
「何者」でも最後にトリックを仕掛けましたが、ああいう仕掛けを考えるのが好きなんです。
<世の中を疑うことが小説の着想につながっている>
今、児童養護施設にいる小学生男女の話を書いています。いじめとか体罰のニュースを見ていると、なんでこの子は逃げなかったのかと疑
問に感じ、小さな子に「逃げる」選択肢を与えたらどうなるだろうと思ったのがきっかけです。同じように、作家という職業そのものも疑問の対
象です。物語を書くのが好きなだけなのに、「先生」と呼ばれ、日本全体を語れる万能感みたいなものが付随する。謎です。自分を含めて疑
い続けることが大事だと思っています。
◇10年後の私は…
本を出し続けていたい。男性最年少の直木賞受賞者として前例のない人生を生きるプレッシャーがあるので、転落していなければいいなと。
将来、「あのとき直木賞を取ってよかったな」と思っていたらいいですね。
■人物略歴
岐阜県出身。09年に「桐島、部活やめるってよ」で第22回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。早稲田大卒。
息の長い作家に-朝井リョウさん(23)
http://mainichi.jp/select/news/20130326dde035050014000c.html