福島第一原発事故に伴う除染作業などの復興事業に作業員を違法に派遣したとして、労働者派遣法違反(無許可、禁止業務)に問われた
指定暴力団住吉会系暴力団組長の荒井好憲被告(40)(東根市中央)の初公判が5日、山形地裁(矢数昌雄裁判官)であった。
検察側は「違法な利益の一部を暴力団組織に上納していた」として懲役8月を求刑。
弁護側は「事件をきっかけに暴力団から脱退し、反省している」と執行猶予付きの判決を求め、即日結審した。判決は28日。
起訴状などによると、荒井被告は昨年11月〜今年1月、架空の会社で雇用した作業員7人を
厚生労働省の許可を得ずに、置賜地方の建設会社に派遣し、福島県伊達市で除草などの除染作業に従事させたとされる。
また、2011年4月〜12年3月には、作業員3人を村山地方の板金会社に派遣し、
宮城県亘理町の仮設住宅の建設現場で、同法が禁じる屋根敷設工事などの建設業務に携わらせたなどとされている。
荒井被告は罪状認否で、「間違いないです」と起訴事実を認めた。
検察側は論告などで「10年9月から今年1月まで、常習的に違法派遣を繰り返していた悪質な犯行。
作業員の報酬の3割以上を自分の取り分としており、少なくとも475万円は受け取っていた」と主張。
「暴力団排除の機運が高まる中、組員が復興事業に参入して利益を得ることがないように、予防の見地からも厳しい処罰が必要」と訴えた。
一方、弁護側は最終弁論で「労働者を派遣して被告人があっせん料を得ていたことは否定できないが、
職人不足という派遣先の需要も存在し、より高額な職場を探している派遣者もいる。事件はこういった両者の需要の上で成り立っている」と指摘した。
被告人質問で荒井被告は「世の中が厳しくなっており、何をやっても締め出されるので、
(暴力団を)続けていくのは、ちょっと無理だなと思った」と語った。
検察側から「震災の復興事業に多額の税金が投入されていることを知っているか」と問われた際には、「ええ、何となく、国の金とは」と答えた。
山形地裁は5日夕、荒井被告側からの申請を受け、保釈を認める決定をした。保釈保証金は200万円で即日納付された。
(2013年3月6日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/job/news/20130306-OYT8T00454.htm