ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」 (宝島社新書)
作者: やまもといちろう,中川淳一郎,安田浩一
それにしても、この本を読んでいると「人は信じたいものを信じる」ということを痛感せずにはいられません。
安田浩一さんの章で語られている「反日タレント」キム・テヒさんの話など、バカバカしいとしか言いようがありません。
私はネット右翼によって組織された「反ロート製薬デモ」を何度か取材している。
これらデモでは、次のように記されたチラシが沿道の人々に配られていた
<キム・テヒ妄言の数々
・日本人は嫌い。日本に行くのも嫌
・日本人は猿
・日本に行くのはお金のため……>
この「妄言」とは、ネット上で流通している「キム・テヒインタビュー」の動画が元ネタとなっている。
キム・テヒが新作映画についてインタビューを受けている映像だが、日本語字幕はすべて捏造されたものだ。
たとえば映画のキスシーンについて答えているにもかかわらず、日本語字幕は「日本人は醜い猿じゃないですか」と流れる。
撮影の『苦労話をしている場面でも「日本は韓国よりも劣っている発展途上国です」といった字幕が被る。
他にも「日本は嫌い。吐き気がする」「独島は韓国領土だと(日本人に)教えないといけません」
「日本文化は全部、韓国文化のコピー」といった字幕が流されるが、話している内容はまったく関係ないものだ。
韓国語に精通した者ならばすぐに捏造だとわかる字幕を加工した動画が何者かによって動画サイトにアップされ、
キム・テヒ攻撃に使われ、こんな女優を起用したロートを許すまじ、といったとじっくに転用されているのである。
今なお全国各地で「反ロート製薬デモ」がおこなわれているが、そこで声高に叫ばれている「日本人を猿扱いしたキム・テヒ」
「日本が嫌いなキム・テヒ」といったスローガンは、いずれも出所の怪しい情報を鵜呑みにしたものなのだ。
この程度の「リテラシー」がいまのネットの状況なのです。
「ネットのおかげで、世の中の真実に気がついた!」と叫ぶ人たちが、
こんなバカバカしい「捏造動画」を「真実」だと思い込んでしまう。
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