69歳 小椋佳 最後のアルバム 生前葬コンサート
2013年2月2日 朝刊
シンガー・ソングライターの小椋佳が今年から来年にかけ、「人生最後のアルバム」「生前葬
コンサート」と、集大成の創作活動や公演の予定を組んでいる。大病を克服してきたが、「死
は突然やって来る」と達観し、「一区切り」の時を見据えている。六十九歳になったばかりの小
椋に心境を聞いた。 (藤浪繁雄)
「七十六歳で死を迎える」。ここ数年、何となく感じていることだという。死について「特段の考
えはない」というが、数々の名曲やヒット曲を手掛けた創作者としては「辞世の詩」は意識して
いるよう。まず今年は最後のオリジナルアルバムを手掛け、来秋には数日間の「生前葬コンサ
ート」も決めた。初めてソロ公演を開いた東京・渋谷のNHKホールで締めくくる。
五十七歳の時に胃がん、昨年は劇症肝炎と大病を患ったが復活を遂げた。しかし現在、「精
神的にも肉体的にもエネルギーが減退。生への意欲が落ちている」と老いと向き合う。創作面
でも「若いころは自然に歌がつくれた」が、今は違ってきている。
「生前葬」はそんな日常から思い至った。自身が手掛けた二千曲以上の楽曲から、計百曲を
日替わりで披露する意向だ。今も年間五十回ほど各地でコンサートを開いているが、主催者側
からはヒット曲への要望が高い。「それだけが愛すべき曲ではない」。生前葬では自身が選んだ
こだわりの選曲で歌う。「慢性現状不満症」「ネクラ人間」と自身の性格を語るが、「死ぬ時は明
るく」と話す。ステージ美術や構成なども含め、格別の思いを込める。
「好き勝手に歌をつくりコンサートを開いてきた。運と出会いに恵まれた」と創作人生を振り返る
が、自身の中で「ソロデビューした思いはないので、引退も何もない」という。創作の意欲は落ち
たというが、昨年春から毎日一時間、健康のために始めた「歩禅」と称する散歩を続ける中で、創
作のアイデアも浮かぶ。「生前葬の後も生き延びて、歌うかもしれない。四十九日コンサート、
一周忌コンサートなどとしようか」と笑った。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2013020202000126.html いらい192