http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2012122202000127.html 前略
味覚にも異常をきたした。ご飯やパン、パスタといった穀物系の味が分からない。肉類の味も
感じなくなった。抗がん剤は歯肉にも影響するようで、固いものが食べにくくなった。それも味覚に
影響しているようだ。食欲は減退した。体重はすぐに二キロほど減り六三キロに。大腸がんになる
前は身長一七〇センチ、体重七五キロで太めの体形だったが、ほぼ標準体重に。この体重を維持
するために、食事を取っているような感じだ。
不思議なのは、だしの利いた和食はかなりおいしさを感じることだ。味を感じる味蕾(みらい)は
複雑にできているようである。酒類では、ビールや冷たい白ワインは分からないが、赤ワインや熱
かんはいける。あと十日もすればお正月。例年通りに、熱かんでおせちを楽しみたいものだ。
不思議といえば、髪の毛が黒く、太くなった。副作用なのかどうかも分からないが、聞いてみると
「眉毛が濃くなった話は聞いたが、髪の毛の変化は初めて」。全く、私の体はどうなっているのか…。
がん患者となってから、メディアが報じる著名人のがんが気になるようになった。闘病記に目を
通したこともある。断片的な情報を基に「どんな治療を受けたのか」と想像するようになった。
感じるのは、がんの症状や抗がん剤の効き方は千差万別で、抗がん剤の扱い方は難しいということだ。
その点、私を担当する腫瘍内科医は本当に信頼できるし、そう思えることが私の精神衛生上、いい
薬になっている。
髪の毛の変化についても、呼吸器内科医から「そんな副作用があると分かれば、別の使い方が
できますね」とジョークが返ってきた。医療はその専門性の高さから、どうしても権威主義に陥りがち
である。しかし、この病院は医療スタッフと患者の関係が対等であると感じる。看護師も技術力が高く
、気が利いて親切。通院は苦にならない。