ここで有田さんの口から、気になる一言が出てきた。
「もっとも覚醒だけなら、あくびの真似をして手足を伸ばすだけでも、ある程度効果があるのですよ。ストレッチで筋肉を伸ばせばスッキリするでしょ」
確かに。でもあくびの心地よさは、普通のストレッチとは違う。では、あくびって結局何なのだろう? と、有田さんはおもむろにこんな話を始めた。
「室膀核からあくび指令を発するのはオキシトシン神経ですが、このとき同時に男性では勃起を誘導します。つまり、性行動と関連がある神経なのです」
え、性行動? またずいぶん話が飛躍したが、オキシトシンは女性の分娩時の子宮収縮を誘導するなど、生殖機能と関わりが深いホルモン。性行動と結びついていてもおかしくはない。
「そう。あくびの起源は性行動と関連がある、というのが私の推論。ほら、サケの産卵で、雄と雌が身を寄せてかーっと口を開けますね。あの姿はあくびに似ていると思いませんか」
ほー、いわれてみればそう見えなくもない。あれが進化してあくびになったのか? だからストレッチより気持ちいいの? 真相は謎だが、興味深い。
ちなみにあくびには、肺を広げて呼吸効率を高める作用もある。なるべく我慢しない方が、体にいいのは確かです。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2702Y_X21C12A1000000/?df=3