満蒙開拓を語りつぐ会/生まれ変わる
飯伊出身者からの聞き書きで旧満州(中国東北部)移民史を描いてきた「満蒙開拓を語りつぐ会」が10年間の
活動を終え、生まれ変わる。年1冊ずつ刊行してきた聞き書き報告「下伊那のなかの満(まん)洲(しゅう)」10集を
28日に刊行するのを機に、新たな活動への参加者を募る。
28日は出版記念会が飯田市公民館である。筒井芳夫代表(78)が経過報告と今後の見通しを語り、新たな
活動への参加を呼びかける。新組織の形態や活動方針は、応募者同士で話し合って決める。
語りつぐ会は2002年に発足した。「この地域の人が、地域の言葉で、地元の中国帰国者から聞く」方針で、
03年に1集を刊行した。計10集に収めた聞き書き報告は81編。語り手85人には開拓団員と満蒙開拓青少年
義勇軍隊員の他、開拓花嫁や団員の逃避行に同行した旧軍小隊長もいる。
加害と被害が複雑に絡む地元で、語り手は重い心を開いてきた。聞き手はインタビューの心得やこつを学び
つつ取り組んできた。会員42人の中に「せっかくの活動をここで終わらせたくない」との声が起きた。
筒井さん自身は3集で地元豊丘村の旧村が送り出した分村移民の男性を担当した。移民団は敗戦直後に
集団自決し、男性は唯一の生き残り。「この機会がなければ、真実を知ることは出来なかった」と筒井さんは
振り返り、「農閑期に1本仕上げるのでやっとだが、新たな活動に加わって続けたい」と語る。
旧満州の体験者は高齢で記憶が薄れ、正確さへの不安もある。そこで、聞き書きの対象を帰国者当人から
2、3世に移す活動案や、聞き取りの結果を他の史料と重ね合わせてまとめる案も出ている。
10年間の活動は満州移民の関心を広めた。さらに推進させたいと、若い世代の加入に期待が集まる。
阿智村に来春開設予定の満蒙開拓平和記念館や日中友好協会、飯田市歴史研究所などテーマが重なる
団体と連携を模索する声もある。
http://mytown.asahi.com/nagano/news.php?k_id=21000001207270002