櫻井よしこ氏 ネット右翼が偏狭な国粋主義に陥ることを危惧
ネット上の書き込みを見ると、「朝鮮人は半島に帰れ」といったものや、韓国人女優を
CMに起用した会社に対し、「ぶっつぶすぞ」というような排外的、過激な言葉が目立ち
ます。相手を誹謗中傷し、不満の捌け口にするような主張には事態を改善する力もあり
ませんし、未熟な言論と言わざるをえません。そのような主張を展開する前に、まず大い
に歴史を学び、事柄の全体像を見て、自身の言葉に説得力を与えるよう努力してほしい
ものです。
日本は世界でたったひとつの「日本文明」という独自の文明を持つ国です。日本文明の
特徴は排外的であることとはまったく逆で、異なる文化文明に対してとても寛容なことです。
一言で言えば、日本は基本的に完全に外に開かれてきた国です。
たしかに、江戸時代には鎖国をしました。けれども、判明している2700年近い歴史でみれば
閉ざされていたのはわずかな期間です。鎖国を旨とした江戸時代においても完全に閉ざした
わけではありません。ほとんどの時代、日本は国を広く開き、海外の新しい文化や知識、
技術、制度などを取り入れて、自分たちの生活や文化をより良いものにしてきました。
例えば聖徳太子は、仏教を受け入れました。国家が異教を受け入れるのはとても稀な
ことです。一方で聖徳太子は、ただ受け入れるだけでなく、「敬神の詔」を出して日本国
の根本は日本古来の神道の神々にあることを明確に示しました。律令制度、つまり現在
でいう官僚制度を導入して、国の統治機構を整備し、文化も宗教も取り入れ、それを日本
独自のものに進化させてきたのです。
完全に開きながらも、尚、しっかりと、日本であり続ける。日本の中心部分は驚くほど
堅固に守っていくのが、古来の日本のあり方です。従って、感情にまかせて単に「半島に
帰れ」などと叫ぶとしたら、それは「愛国」でも「保守」でもありません。偏狭な
ナショナリズムや国粋主義に陥れば、必ず国際社会で孤立し、道を誤ります。ネット右翼
と呼ばれる人たちには、決してそのような過ちを犯してほしくありません。
http://www.news-postseven.com/archives/20120810_136649.html