定着するマイナス金利、銀行再編の引き金となるか
ここ1カ月、ユーロの債務危機や米国の「財政の崖」と並んで、
がぜん国際金融市場の注目を集め始めたテーマが「マイナス金利」である。
金利はゼロが下限であるというのが市場の常識であったが、
実際にマイナス金利が存在し得ることが欧州で証明されたからだ。
ほんの少し前まで、マイナス金利とは1970年代にスイス中銀が
為替管理の一環として用いていた歴史上の遺物でしかなかった。
そんな異様な金利が、いま脚光を浴びている。
ドイツをはじめとする欧州主要国の国債市場でマイナス金利が定着しているのである。
例えば「1年債の利回りがマイナス0.1%」ということは、
1年後の償還金10万円を確保するために10万100円支払う、ということだ。
100円の損である。機関投資家ならば10億円投資で100万円損することになる。
とても有り得ない話のように聞こえる。 だがそれが、ドイツだけでなくオランダやスイス、
フランス、オーストリア、フィンランドそしてデンマークといった国々の短期国債で観察されている。
マイナス金利の下で皆がおカネの有効な使い道に知恵を絞るようになれば、
実体経済が意外な方向へ動き出す可能性はある。それは危険な実験かもしれないが、
金融業界にメリットが多く実体経済にデメリットを与えかねない通貨増刷の実験よりも、
金融・実体経済双方への長期的なメリットが期待され、かつ迅速な政策修正が可能な
マイナス金利の実験の方がわずかながらも合理性があると考えるのは、過激思想なのだろうか。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20120806/235362/