ズコーシャ(帯広市西18北1、関本裕至社長)と帯広畜産大学(長澤秀行学長)は27日、国内初の
「高速乾式メタン発酵システム」の開発に乗り出すことを発表した。
既存のメタン発酵システムは家畜ふん尿を多量の水で薄めて処理する「湿式」と呼ばれるが、新システムは
不純物の水を使わない高温発酵による「乾式」で、規模や価格が3、4割程度に抑えられ、98%以上の高濃
度バイオメタンも精製できる。10月下旬に士幌の酪農家に試験導入し、2015年度販売を目指す。
両者に産業技術総合研究所(札幌)を加えた3者で研究し、事業費はNEDO(新エネルギー・産業技術総合
開発機構)の助成で上限5000万円を予定。
既存の湿式メタン発酵施設では、原料に使われるふん尿と寝わらの混合物が半固形状のため、処理に大量
の水が必要となり、過大な施設整備、維持管理費、処理に要する労働時間が大きい。また、道内の乳牛酪農
家7500戸のうち、寝わらの使用量が多い「つなぎ飼い」(スタンチョン飼養)戸数は5940戸と77.6%を占め
ており、大多数の酪農家は湿式施設の導入がコスト的に適さず、普及の足かせになっていた。
新たなシステムは、開発する高速乾式メタン発酵槽で水分85%未満の乳牛ふん尿(半固形状)を50度で処理
し、メタン55%程度のバイオガスを精製装置に送り、不純物を除く。ろ過された98%以上の高純度バイオメタン
は配管を通して、牛舎やメタン発酵槽に温水を送るガスボイラーの他、一般家庭のガス器具などにも供給する。
発酵残さは農地で肥料として使い、化学肥料の節減と農産物の付加価値化につなげたい考え。湿式プラントの
3、4割となる販売価格(3800万円)や維持管理費(年間60万円)を計画し、5年半で投資回収できると見込む。
帯畜大で行われた記者会見で関本社長は「十勝・北海道に限らず、全国に普及できるシステム」と強調。
同大の田中一郎産学官連携コーディネーターは「酪農家の安定的発展と経済的利益の開発になる研究」とした。
同社は17年度には販売基数20基、売り上げ8億円を見込み、将来的には養鶏・養豚農家や食品工場、ゴミ処理
場へ広げ、海外への販路拡大も模索する。
http://www.tokachi.co.jp/news/201207/20120727-0013137.php