4月の石原慎太郎都知事による購入発言を受け、都が買収交渉を進める尖閣諸島地権者の栗原國起氏が、約40億円にのぼる負債を抱えていることが週刊文春の取材で明らかになった。
國起氏はさいたま市大宮区の大地主であり、大宮区近辺に多くの不動産を所有している。
不動産登記簿謄本によれば、三菱東京UFJ銀行は一昨年3月末、
國起氏が所有する物件に極度額24億5000万円の根抵当権を設定し、38件もの担保を取っている。一方、埼玉縣信用金庫も昨年9月に大宮区内の不動産に極度額15億円の根抵当を設定している。
しかし、埼玉信金が設定した根抵当の担保は、土地2筆(計1000平米)と平屋の建物2棟(延床面積計119平米)の4件のみ。
公示地価に照らし合わせると、2億3000万円の価値にしかならない。
「根抵当権の極度額は担保評価額の110%が一般的ですから、明らかに担保としては足りないですね。尖閣列島の所有者だから取りはぐれはないだろうという見込みで貸し込んだのではないでしょうか」(不動産鑑定士)
彼が莫大な負債を抱えるに至った理由を、弟であり一連の報道で地権者側の「スポークスマン」となっている栗原弘行氏に聞くと、次のような答えだった。
「地主は相続対策として、ある程度の負債を抱えておくのが常識ですから」
だが、ある都幹部はこの弘行氏も國起氏の負債に大きく影響していると話す。
「弘行さんはいろいろな事業に手を出して失敗し、それを國起氏が埋め合わせしたと聞いています」
一方で、本誌は都が國起氏側と売却金額上限20億円で合意に至っていることをつかんだ。
「20億という数字は『上限』というよりも暗黙の了解。世間の常識から考えてそれ以上になるべきでないというラインが20億です」(前出・都幹部)
東京都知事本局は20億円という価格について「進行中の案件につき、詳細はお答えできません」と回答した。
都が尖閣購入・活用に充てるために募っている寄付金は、現在およそ10万人から約14億円に上る。
日本全国から集めた寄付金を購入資金とする以上、石原都知事は地権者との交渉経緯、購入金額の妥当性等について、きちんと説明することが求められる。
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/1656