欧州連合(EU)の欧州委員会は25日、国際的な基準金利であるロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作問題を受け、規制強化案を発表した。
LIBORなどの指標を不正操作し、相場を操縦する行為に刑事罰を科すことを明示する。規制の強化を通じて、民間による算出ながらも経済的な影響が
大きい金融指標の公正性を高める狙いがある。
バルニエ欧州委員(域内市場担当)は同日の記者会見で、LIBORなどの不正操作は「弁解の余地がなく、制裁を科すべきだ」と強調した。欧州委は昨
年10月にインサイダー・市場操作に関する規制案を発表したが、LIBORなどが規制の対象となるかは必ずしも明確でなかった。
レディング副委員長(司法担当)は「(今回の案で)指標の不正操作を明示的にカバーした」と説明。LIBORなどの不正操作が刑事罰の対象になるかと
いう議論の余地をなくす。
EUが同規制を導入するには、加盟国の集まりである欧州理事会と欧州議会の承認が必要となる。欧州委は年内にEU内の手続きを終えたいとの考え
を明らかにした。欧州議会のボウルズ経済・金融委員長は声明で「銀行界の文化を変えなければならないのは明白だ」と強調。承認作業を早急に進める
意向をにじませた。
EU内の手続き終了後、加盟各国は「LIBORなどの不正操作も刑事罰になる」と明示する法改正などを2年以内にしなければならない。欧州委は各国が
導入すべき刑事罰の内容には言及しておらず、現段階では各国の判断に任されるもようだ。
今回の規制は、LIBORやユーロ圏の指標金利である欧州銀行間取引金利(EURIBOR)のほか、民間企業が算出する株価指数や、金や原油などの商
品指数も規制の対象となることを明確にした。
一部報道によると、米連邦検察当局は不正操作を実施した元銀行トレーダーを刑事訴追する調整を始めた。欧州では英当局が捜査をしているとされる。
欧州委はEU規模でいち早く規制強化に乗り出すことで、各国の捜査を後押しするほか、再発防止に取り組む姿勢を打ち出したい考えだ。EUの金融監督
の機能として、LIBORなどの指標の監視も強化していく方針だ。
- 日本経済新聞 -
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2506Q_V20C12A7FF2000/