桃太郎、いざ世界の“鬼”退治へ/カヌー
サンケイスポーツ 6月21日(木)7時51分配信
川を流れてきた桃から誕生した「桃太郎伝説」を地でいくのが、カヌーのスプリント男子カヤック代表の松下桃太郎(24)=石川県体協。
2010年アジア大会(中国・広州)のシングルとペアで日本初の金メダルを獲得した“アジア最速の男”は、初出場となる五輪の舞台で日本伝統のヒーローの名を響かせる。
海が好きな両親は姉と妹に海にちなんだ名前をつけたが、桃の節句生まれの松下は「桃太郎」。カヌーが盛んな石川県小松市で育ち、小3で初めてパドルを握った。
筋肉が出来上がる20代後半が選手としてのピークといわれる競技。19歳で挑んだ北京五輪予選はわずか20センチ差で五輪出場を逃し、ショックは大きかった。
1年間は水から離れ、地元の老人ホームでお年寄りの話し相手や送迎車の運転手として働いたこともある。
転機は2010年1月。ポルトガル遠征で腰を痛め「それまで(練習で)10本中、5本は手を抜いていた感じだったのが、(カヌーに)乗りたくても乗れなくなったら寂しくて…」と振り返る。
心の中の「鬼」を退治して一皮むけ、10カ月後のアジア大会での金メダル2個につなげた。
マイナー競技ゆえに、五輪代表といえども取り巻く環境は厳しい。代表チームはルーマニア人コーチのオクタビアン氏(38)の指導の下、年間約300日を海外で練習する。
今年も3月末まで、ハワイ・ワイキキビーチ近くのアラワイ運河で約2カ月間の合宿を行ったが、宿舎は格安のコンドミニアムで3人の相部屋。
1日5時間の乗艇練習の合間に約3時間の筋力トレーニングをこなし、食事は食べ放題のレストランで観光客に交じってとった。現在はメキシコで高地トレーニング中。7月後半にフランスへ渡り、本番に備える。
日本男子は28年ぶりにスプリントの出場権を獲得。競技人気が高い欧州勢の壁は厚いが「混戦に入っていけたら何が起きるか分からない。
1位との差が0・5秒ない中に3、4カ国がひしめくと思う」と上位進出をにらむ。鬼ならぬ大男たちを打ち負かす決戦の場は、ロンドンの西40キロにある人工湖だ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120621-00000029-sanspo-spo