ソニーは、9.9型のフレキシブル有機ELパネルを開発し、米国ボストンで開催中の「SID 2012」で発表した(論文番号:74.1L)。
960×540画素品である。画素ピッチは228μmであり、精細度は111ppiとなる。厚さは110μm。
駆動素子には、酸化物半導体であるアモルファスIGZO TFTを用いた。白色の有機EL素子とRGBW4色のカラー・フィルタ(CF)を
組み合わせることで、カラー表示を実現する。有機EL素子のデバイス構造は、TFT基板とは逆側から光を取り出すトップ・エミッション。
色再現範囲は、NTSC規格比で100%以上と高い。
開発品は、ガラスの上にフィルムを接着した基板を2枚用いて作製。1枚にはTFTと有機EL素子、もう1枚にはCFを形成する。
これら2枚の基板を貼り合わせた後、ガラスを剥離することで、フレキシブル化を実現する。TFTと有機EL素子、CFは通常の
ガラス基板と同様の作製プロセスを適用できるため、「フレキシブル有機ELパネルの量産に向け現実的な選択」(ソニー)とする。
アモルファスIGZO TFTは、真空成膜とフォトリソグラフィ技術を用いる一般的なプロセスを採用した。IGZO層はスパッタ、
ゲート絶縁膜(SiOx)はPECVDで成膜した。ボトム・ゲート型のTFT構造であり、信頼性向上のため半導体層の上部に
エッチ・ストッパ層を設けている。キャリア移動度は13.4cm2/Vs、サブスレッショルド・スイングは0.2V/decであり、
「ガラス基板上に直接形成した場合とほぼ同じ」(ソニー)とする。ガラスを剥離する前後で、TFT特性に変化はなかったとした。
白色の有機EL素子は、低分子材料を蒸着技術を用いて形成した。トップ・エミッション構造を採用した理由として、
「有機ELテレビやモニター、ヘッドマウント・ディスプレイ向けなどの製品で培った技術やノウハウを生かすため」(ソニー)という。
CFは、一般的なフォトリソ技術で作製した。プロセス温度は100度以下である。
なお、開発品はオーサーズ・インタビューで披露されず、パソコンの画面上で映像を紹介していた。Late-Newsとして投稿するなど、
「パネル作製がギリギリのタイミングとなり、外部に持ち出すための信頼性評価が間に合わなかった」(ソニー)という。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0803N_Y2A600C1000000/ 依頼58