>>489 ●昭和天皇が語る開戦の原因
以上緒論及び本文に於て戦争の原因とその防止の不可能なりし所以を縷々述べて来た
が、結論として概括的に私の感想を話そう。
先ず我が国の国民性に付いて思うことは付和雷同性が多いことで、これは大いに改善の要
があると考える。近頃のストライキの話を聞いてもそうであるが、共産党の者が、その反対者を
目して反動主義者とか非民主主義者とか叫ぶと、すぐこれに付和雷同する。戦前及び戦時
中のことを回顧して見ても、今の首相の吉田などのように自分の主張を固守した人もいるが、
多くは平和論及至親英米論を肝に持っておっても、これを口にすると軍部から不忠呼ばわりさ
れたり非愛国者の扱いをされるものだから、沈黙を守るか又は自分の主義を捨てて軍部の主
戦論に付和雷同して戦争論をふり廻す。
かように国民性に落ち着きのないことが、戦争防止の困難であった一つの原因であった。
(聖談拝聴録原稿(木下のメモ)B「結論」)