海草酒:世界初 アマモの種子を醸造し開発−−水産総合研究センター、内田基晴・主幹研究員 /広島
海草のアマモの種子を醸造し、酒を製造する技術を独立行政法人・水産総合研究センター
瀬戸内海区水産研究所(廿日市市)の内田基晴・主幹研究員(50)が水産庁の支援を受けて
開発した。海産物由来の酒は世界初といい、28日に東京である日本水産学会で発表する。
水産庁が海産物をバイオマス(生物由来資源)として活用を目指す事業の一環。内田研究員は
4年前から、高濃度アルコールを生産する前段階で、海草や海藻から酒を造る研究を進めた。
コンブ、ワカメ、アオサなどから100以上の試作品を作ったが、ほとんどはアルコール分が
0・5%程度にとどまった。
茎や葉などからではなく、種子からアルコールを抽出する方法に転換。微量ながらショ糖を含む
アマモに目を付け、豊かな漁場を造ろうと種からアマモを繁殖させている岡山県日生町漁協から、
知人を通じて種子を譲り受けた。
アマモの種子には、デンプンなどの糖質が多く含まれていることが判明。糖質の含有量は
ビール製造にも使われる小麦とほぼ同じ約83%。デンプンに糖化酵素を加えてできたブドウ糖に、
酵母を加えて発酵させるとアルコールを得られる。内田研究員は「潜在的な穀物資源」という。
乾燥させた種子に水と糖化酵素を加え、ビールの製法に則って醸造すると、6・5%のアルコール分が
得られた。日本酒醸造の方法では13%に。海産物からアルコールを抽出する実験では、
米国でコンブから3・7%を得た記録があるが、大幅に上回った。これまで醸造して酒として
完成させた事例はなかったという。
生産にはコスト面を含めた研究が必要だが、内田研究員は「新しいジャンルなので、
飲んでみたい人もいるのでは」と話している。
http://mainichi.jp/area/hiroshima/news/20120328ddlk34040486000c.html