音楽を聴いたり新聞に目を通したり、通勤電車の過ごし方は人それぞれ。
少なくとも、毎日の移動時間をできるだけ有効活用したい、というのは多くのビジネスマンに共通する思いだろう。
筆者の場合は典型的な活字中毒者で、電車に乗るときは絶対に本を持っていく。
出張や旅行の際には、最低3冊は必携。それでも「旅の途中でぜんぶ読み終えてしまったらどうしよう…」と不安を感じるほどだ。
それにしてもこの「中毒」という言葉。
ニコチンやアルコールに中毒性があるのは有名だが、“文字を読む”という行為そのものにも、そうした中毒性は認められるのだろうか?
「あると思いますよ。中毒とは依存症ともいい換えられますが、これには精神的な依存と身体的な依存の2種類があります。
たとえばアルコールやドラッグの場合は、その成分を身体が欲するもの。
これに対して、活字中毒やインターネット中毒のようなものは、精神的な心地よさに依存しているケースといえます」
そう解説するのは、池袋スカイクリニックの須田隆興先生だ。中毒は、体に悪いことであっても心身がそれを欲することで起きる。
活字を読む楽しさ、あるいはとくに目的がなくてもネットサーフィンに興じてしまう悦楽は、中毒を呼び起こすのに十分なものだという。
「その意味では、身の回りのあらゆるものに中毒を起こす可能性が秘められているといってもいいでしょうね。
最近ではネットゲームの中毒性に着目する医師の方もいます。
こうした中毒や依存症として問題視されるようになる境目は、“日常生活に支障を来すか否か”という点でしょう」
その点、活字中毒は、寝食を忘れて栄養を摂取しなくなるようなら問題だが、程度が過ぎなければ「社会人として非常に良い習慣なので大丈夫」と須田先生。
…とはいえ、やるべき仕事を後回しにして、読書やネットに時間を費やしてしまったあとの虚無感は、激しい自己嫌悪を招く。
メリハリを大切に、時間の使い方を計画的に考えたうえで、思う存分活字やネットに没入できればいうことなしだ。
(友清 哲)
http://www.excite.co.jp/News/society_clm/20120327/R25_00023225.html