米空港の全身スキャナー、被ばく量めぐり論争
全米各地の空港で乗客のセキュリティーチェックに使われている全身スキャナーをめぐり、放射線による健康被害を懸念する声が上がっている。
米国土安全保障省は乗客の被ばく量に問題はないとする監察長官報告を発表し事態の沈静化を図っているが、独立機関による調査の必要性を訴える声も出ている。
「高度画像技術」(AIT)と呼ばれるこの装置は、米運輸保安局(TSA)が2年前に設置を開始した。2009年12月25日の旅客機爆破未遂事件で、
犯人が下着の中にプラスチック製の爆発物を隠して搭乗していたことをきっかけに、金属以外の武器なども検知できるAITの導入が進んだ。
現在、全米39カ所の空港に247台が設置されている。
放射線量についての報告は、米当局と専門家団体による研究に基づき、同省監察官らがまとめた。スキャナーからの放射線量は「ごく微量」であり、
「許容範囲内にとどまる」と結論付けている。
1人の乗客が安全基準を超える量の放射線を浴びるケースを考えると、1年間に約1万7000回チェックを受ける計算となる。
これは、1日に約47回、365日間欠かさずスキャンを続けた場合に相当する。
報告はAITへの懸念を否定する一方で、運用態勢の整備や職員の研修、不慮の事故が起きた場合の通知方法などを徹底するよう勧告した。
ただ、健康被害の恐れを訴えてきた米議員らは、当局からの報告ではなく独立機関による調査が必要だと主張している。
TSAのピストール局長は昨年11月、いったん独立調査への着手を表明したものの、監察長官報告が出れば調査の必要はないとの立場に転じた経緯がある。
また全米政府職員組合(AFGE)は、今回の報告が乗客の被ばく量にのみ注目していて、AITを操作する空港職員の被ばく量については新たな情報がないと指摘する。
AITの安全性をめぐる議論が決着するのは、まだ先になりそうだ。
http://www.cnn.co.jp/images/cnn/2012/03/20/17/47/21/airport%20security-full-body-scanner-radiation.jpg http://www.cnn.co.jp/usa/30005980.html