「死の灰」浴びた真珠の島 マーシャル諸島
日本から南に約4000キロ。中部太平洋に浮かぶマーシャル諸島は、29のサンゴでできた環礁と4つの独立した島から構成されている国だ。
太平洋戦争後、アメリカはここマーシャル諸島のビキニ環礁とエニウェトク環礁で、1946〜58年に67回もの核実験を行った。
実験により放出された放射性降下物「死の灰」で全域を汚染された島々。今もなお、被ばくによって多くの人々がガンや甲状腺・
先天性異常などの病気で苦しんでいる。
ちょうど今から57年前の54年3月1日、ビキニ環礁で行われた水爆「ブラボー実験」は、45年8月6日に広島へ投下された原爆の
千倍の威力があったという。この時、ビキニ環礁から東に160キロで操業していた「第五福竜丸」など、近海にいた日本漁船1000隻以上が被ばく。
これを契機に、日本では核兵器禁止運動が起こった。
さらに東にあるロンゲラップ島では、“キノコ雲”が立ち上った西の空に、雷鳴がとどろき、島を衝撃波が襲った。
その後、放射能を含んだ細かい砂が降ってきたが、危険であることなど知るはずもない子どもたちは、初めて見る砂に喜び、
体にかけて遊んだ。やがて、皮膚がやけどのように水ぶくれになったり、吐き気やめまい、頭痛、倦怠感などを訴える人が続出。
原因が分からない島民はパニック状態になったという。アメリカ軍が救出に来たのは、実験から3日後のことだった。
首都マジュロから19人乗りの小さな飛行機で1時間。メジット島が見えてきた。島は南北に細長く、周囲が約9.5キロの独立した島だ。
この日、週1回の定期便が8人の乗客と冷凍された鶏肉や米などの食料を乗せて到着した。空港に集まった島民は、降ろされた荷物を
次々にリヤカーへと運んでいく。自動車は1台もない。地球に優しい島だ。
マーシャル最大のマジュロ病院のジョカネ・コレアー医師はこの島の出身。ブラボー実験の時には、“キノコ雲”を目撃した。
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http://www.asahi.com/eco/column/earth_gallery/TKY201203200171.html