http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20120310/CK2012031002000018.html 日本国籍を取得した日本文学研究者で米コロンビア大名誉教授、ドナルド・キーンさん(89)は、
北区西ケ原に住んで三十八年になる。八日の北区役所での会見では「(住み始めるとき)ここが
自分にいい所だと直感しました。(直感は)間違いありませんでした」と街への愛着を話した。 (榎本哲也)
戸籍名は「キーン・ドナルド」。これに「鬼怒鳴門」の漢字をあてた。栃木県の鬼怒川と、
徳島県の鳴門から採った。「私は言葉の遊びが好き。日本語、面白い。同じ漢字に発音
いろいろある。『鬼怒』の『ぬ』は『ど』という発音もある」。それで『鬼怒』を『キーン・ド』、
『鳴門』を『ナルド』と読ませている。
「実は私らしくない。怒ること、少ないです。鬼かどうかはみなさんの判断に任せます」。
著作では引き続き『ドナルド・キーン』を使用する。漢字名を使うのは「人を笑わせるときです。
雅号にもなります」
北区に住んだのは、中央公論社の嶋中鵬二社長(当時)に名所の旧古河庭園へ誘われた
のがきっかけ。そこから見えたマンションに住みたいと直感した。
「嶋中さんは反対しました。友だちもいない、おいしいレストランが一つもないと」。その時は
空室がなかったが、二年後に部屋が空き、すぐ入居。「外国人の金持ちが多い所に住みたく
なかった。(国籍取得)手続きで区役所の人はあらゆることを私のためにやってくれた。
ここで良かったです」と笑顔で話した。