[東京 31日 ロイター] 米国で進む新型天然ガス、シェールガスの増産が思わぬ形で日本に恩恵をもたらしつつある。
東日本震災後の日本経済は原子力発電所の操業停止による電力不足が懸念要因だが、米国で天然ガスの自給率が高まった結果、
カタール産の液化天然ガス(LNG)が余剰となり、日本国内の電力各社は火力発電所の稼働率引き上げで停電を回避できた側面があるようだ。
財務省の通関統計によると、2011年のLNG輸入量は前年比12%増の7853万トンと過去最高を記録した。原発稼働停止を受け、
電力各社が通常なら稼働率が半分程度と低いLNG火力発電所をフル稼働させた結果だ。このため懸念されていた夏の電力不足を乗り切り、
今冬も停電を回避できつつある。
<原発事故でLNG輸入1000万トン増>
電気事業連合会が17日公表した電力10社の2011年12月の発受電電力量速報によると、電源別の発受電電力量は、
原発が前年比75.5%減の55億5109万キロワット時と大幅に減少した一方、火力は41.7%増の604億2423万キロワット時と
大幅に増えた。LNG消費量は498万1194トンと単月で過去最高となった。
資源大手の試算によると、3月の東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第一原発での事故以降のLNG輸入量は
年間ベースで約1000万トン増加した。このうち半分がカタールからの調達分とみられる。
<米ガス増産であてが外れたカタール大増産>
カタールのLNG生産能力は2008年末に3000万トンだったが、2010年12月にLNGの増産工事が完了し、
年産能力7700万トンと世界最大のLNG供給力を確保した。生産主体は米石油メジャーのエクソン・モービル(XOM.N: 株価, 企業情報, レポート)、
ロイヤル・ダッチ・シェル(RDSa.L: 株価, 企業情報, レポート)、米コノコフィリップス(COP.N: 株価, 企業情報, レポート)などで、
生産量の6─8割が日本や韓国、欧州向けの長期契約分。残りは主に米国向けにスポット(当用買い)契約需要を想定していた。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE80U00120120131 >>1 続き
しかし、米国で地中の岩盤層に含まれる新型天然ガス、シェールガスの生産が本格化し、カタール産LNGの米国向け需要が
事実上なくなった。2000万トン程度の売り先がなくなった格好で、日本の原発事故によるLNG需要急増は渡りに舟だった。
長期契約が主体の日本向けLNG価格は100万BTU(英国熱量単位)当たり16ドル前後と、欧米の同8─9ドルと比べそもそも
割高だが、国内電力各社は需要期の冬に向けスポット買いを加速、11月には18ドルと高値で買い集めた。
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の石井彰特別顧問は「米国向けが余っていたから確保できた。今日本で停電が
起きていないのはまさにシェールガスのおかげ」と指摘する。
(ロイターニュース 竹本能文:編集 山川薫)