<海さち山さち>新潟県妙高市 妙高ゆきエビ 雪解け水で安全・安心
豪雪地の新潟県妙高市。
ここで、南の海にすむバナメイエビが、世界で初めて陸上で養殖されていると聞いた。商品名「妙高ゆきエビ」を見に出掛けた。
一メートル以上の雪に覆われた平野に、体育館のような養殖場があった。経営しているのは、従業員七人の「妙高雪国水産」。
事業所長の宮越隆さん(59)は「きれいな地下水で育てた薬物なしの安全・安心なエビです」と強調した。
バナメイエビは、メキシコ湾などの海水と淡水が混ざり合う汽水域にすむ。
東南アジアや中国で養殖が普及している。同社での養殖は五年。
縦四十メートル、横十二メートルの大プール二つに、小さなプールがいくつか。水はボイラーで加温され、二八度もある。
なぜ、雪国で養殖なのか−。
宮越さんは「妙高山などの雪解け水が伏流水になり、その水を使っています」と説明する。
タイから体長五ミリほどの無病証明書付きの稚エビを一回に約六十万匹輸入する。
まず海洋深層水の小プールに入れ、伏流水をゆっくりと加えながら、塩分濃度を下げていく。
淡水に慣れたら、大きなプールに入れ、十四〜十五週で出荷する。
水がきれいな上、プールはバイオフィルターで絶えずろ過されているため、エビに臭みがなく、背わたを取る必要がないことが特徴だ。
閉鎖型の環境で、外部からのウイルスなどの侵入はなく、抗生物質などの薬剤は一切使っていない。
また、餌の工夫でうま味が増し、人工の波でエビを適度に運動させるため、身が引き締まったプリプリ感が備わる。
これらの技術は、産学官連携で「屋内型エビ生産システム」として開発。
公共事業などの仕事が減り、経営の多角化を目指していた妙高市の「岡田土建工業」が生産に手を挙げ、妙高雪国水産を設立した。
宮越さんは「最初の二回は塩分濃度を急激に下げすぎたりして、全滅だった。
単月での売り上げ目標を達成することもあり、これから販路をもっと拡大したい」と意気込む。 (草間俊介)