1961年、三重県名張市でブドウ酒を飲んだ女性5人が死亡した「名張毒ブドウ酒事件」の再審請求の差し戻し審で、事件で使われた毒物を特定するために、
当時と同じ方法で成分を調べる試験を再現することについて、検察側が「必要はない」との意見書を名古屋高裁に出したことがわかった。
検察側はこれまで再現試験を求めていた。弁護側も再現は必要ないとの立場で、再審を開始するかどうかの決定が早まる可能性が出てきた。
差し戻し審での鑑定を担当した鑑定人は昨年12月の尋問で、試験について、必要な器具を入手できないことなどから再現は難しいと証言。
差し戻しから1年10カ月がたっていて、新たな鑑定人を探して試験を再現すれば、審理が長期化することは避けられない状況となっている。
差し戻し審の争点は、犯行に使われた毒物が、奥西勝死刑囚(86)がブドウ酒に入れたと自白した農薬「ニッカリンT」かどうか。
捜査側の鑑定は、事件直後に「ペーパークロマトグラフ試験」により実施されたが、ニッカリンTに含まれる特定の不純物は検出されなかった。この理由について検察側は「加水分解された」と説明していた。
http://www.asahi.com/national/update/0125/NGY201201240033.html