直接投票で国のトップを決めるという台湾の総統選は、
これが五回目だ。憲法の改正によって、一九九六年に最初の総統選がおこなわれ、
現職の李登輝総統が初めての総統選を制し、〇〇年には、民進党の陳水扁、〇四年も陳扁が再選され、
前回の〇八年に国民党が馬英九で政権を奪還した。
今回、現職の「馬有利」という下馬評が変わったのは、昨年九月からだ。
かつて国民党秘書長や台湾省長を務めた現・親民党主席の宋楚瑜(69)が突如総統選への出馬を表明。
国民党の支持層の一部が宋支持に流れ、それまで引き離されていた蔡英文と馬英九との支持率が拮抗し、
一時は逆転するという現象が生じたのである。
「(蔡英文を勝たせたい)李登輝・元総統の画策で宋楚瑜が出馬した」
「土壇場で政府の重要なポストと引きかえに宋は出馬を取りやめるに違いない」
さまざまな憶測が流れる中、総統選の行方が混沌としてくるのである。
しかし、これによって台湾全土で熾烈な選挙戦が繰り広げられることになった。
最も激しかったのは、民進党の地盤・台湾南部だ。取材に当たったジャーナリストはこう語る。
「今回の選挙は立法院とのダブル選挙でしたから、民進党の地盤である台湾南部を切り崩すべく、
票の買収が行なわれました。立法院選挙は小選挙区制。小さな選挙区ほど買収の効果は高いので、
国民党は総統選とのセットで相当なカネを投入していました。
選挙前日や当日の早朝、家の戸が開いているところは、買収歓迎という意味なんです。
南部の屏東県などでは一票の金額が千元から三千元(※日本円で約三千円から九千円)だったと聞きました」
※週刊ポスト2012年2月3日号
http://www.news-postseven.com/archives/20120123_82233.html