適正な手続きを経た日本の国会議員の入国を、韓国が一方的な理由で拒否したのは問題だ。
自民党の新藤義孝衆院議員ら国会議員3人が、韓国・鬱陵島訪問のため、ソウルを訪れたが、韓国当局に入国を拒まれ、日本に帰国した。
3人は鬱陵島訪問について、日本固有の領土である竹島の資料を展示した独島博物館を見学し、韓国が竹島の領有権を主張する背景を知るため、と説明していた。
韓国側は、入国拒否の根拠として「韓国の利益や公共の安全を害する者」を拒否できるとの出入国管理法の規定を持ち出した。「良好な日韓関係に役立たない」ことも理由に挙げたという。
だが、出入国管理法の規定は本来、犯罪者などへの規制を想定したもので、今回のようなケースに適用するのは行き過ぎだろう。松本外相が韓国の申●秀駐日大使に抗議したのは、当然である。(●は、王へんに「玉」)
韓国側には、新藤氏らの訪韓に韓国世論が反発しており、市民団体の抗議デモによる混乱が生じたり、新藤氏らの身の安全が脅かされたりするのを避けたい、という事情があったようだ。
それでも、友好国としては、警備に万全を尽くし、国会議員を受け入れるのが筋だろう。仮に、日本が同じ理由で韓国の国会議員の入国を拒否したら、韓国側は容認するだろうか。
新藤氏らの訪韓の背景には、韓国側が最近、竹島の実効支配を強化しようとしていることがある。竹島のヘリポート拡張工事や、閣僚による訪問、大韓航空機による上空飛行などだ。
韓国の国会議員3人が、日本側の自制要請を無視し、ロシア当局の許可証を取得したうえ、北方領土を訪問したことも、日本側の反発を買っていた。
韓国側が、「良好な日韓関係」を本気で望んでいるのなら、まずこうした一連の行動を慎むことが求められよう。
李明博政権は2008年の発足以来、反日的だった盧武鉉前政権と比べて、はるかに日韓関係を重視してきた。北朝鮮の核や拉致の問題でも、日本と緊密に連携し、共同歩調をとっている。
竹島をめぐる領土問題が原因で日韓関係全体が冷却化するのは、双方にとって不幸なことだ。
国家の主権にかかわる領土問題の解決は簡単ではない。冷静な話し合いを通じて合意点を探るしかない。領土問題が他の問題に悪影響を与えないよう、日韓両国は知恵を絞る必要がある。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110802-OYT1T01126.htm