アイドルという言葉が、原意とちょっと異なることは、知られている。
米国の音楽家に「アイドルは?」と尋ねると、シナトラとかアレサ・フランクリンとか、
大スターの名前を挙げることが多い。「偶像」と訳される通り、もともと目標となる人、
影響を受けた人といった使い方が一般的であるようだ。
1970年代、日本では、友達になれそうで、応援したくなる親しみやすい芸能人をアイドルと呼んだ。
美空ひばりの時代にはなかった言い回しである。
新しい価値を創出したという点で画期的だ。同じような例でタレントというのもある。こちらはテレビが生み出した新価値である。
アイドルの嚆矢(こうし)はキャンディーズであった。
南沙織や天地真理らが先行し、同時期に山口百恵、ピンクレディーらもいたが、キャンディーズは 軽みが突出していた。
観客が声をそろえて名前を呼んだり、手拍手したりといった“親衛隊”行動は、彼女たちが際立っていたと記憶する。
「ファンと共に作られる芸能人」。これが日本語のアイドルであろうか。その典型がキャンディーズであった。
彼女たちは、72年結成、73年デビュー。77年に「解散宣言」を行い、78年4月にファイナルコンサートを行った。人気絶頂期であった。
ミッツ・マングローブは、プロフィールには「職業・女装家」となっている。女装することで生計が立つとは考えにくい。やはりタレントであろう。
大変な歌謡曲好きで「15歳の時には、絶対に歌手になる!と孤高に妄想していた」と言う。
妄想通り、槇みちるが66年に歌った「若いってすばらしい」
(コロムビア)をCD発売した。それに先駆け、60年代から80年代までを中心に、
演歌・歌謡曲の名曲をセレクトしたアルバム「ヒメのたしなみ」(同)も2枚発表している。
「昭和の歌って、ぜいたくなの。でも、『昭和歌謡』って一つにくくられると薄っぺらくて嫌い。
歌は、もっと、人生に踏み込んだものなのよっ」と、
俄然(がぜん)、力が入る。「歌には、影や乱心が必要。その世界に踏み込むのもオツよ」
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http://mainichi.jp/enta/music/news/20110512dde012070014000c.html