東日本大震災に伴う東京電力福島第1原子力発電所の事故を機に、原発をめぐる特定の文書が
インターネット上に拡散している。
文書のタイトルは「原発がどんなものか知ってほしい」。文書は20章から成り、いずれも原発の
危険性を誇張した内容が目立つ。事実と異なる情報も多く、《素人が造る原発》という章では
「事故の怖さを知らない全くの素人を経験不問という形で募集している」と記述。
《放射能垂れ流しの海》との章では「海に放射能を含んだ水が何十トンも流れてしまうのです。
日本列島で取れる海で、安心して食べられる魚はほとんどありません」との内容になっている。
今回の事故を受けて、明確な原発反対派だけではなく、漠然と原発を危険に思う一般の人々の間でも
急速に広まり、新たに約8000のブログで紹介された。農業関係者や育児中の母親など
特に放射能汚染に敏感な人々が多く、今もブログへの転載は増え続けている。
一方、多くの原発専門家らは文書の信頼性に疑問符をつける。《素人が造る原発》について、
電力会社の関係者は「配管をつなぐだけでも経験は必要。素人に重要機器の設置分解など任せられない。
少し考えればわかること」と指摘。《放射能垂れ流しの海》についても、各地の原発では
放水口の放射能数値が公開されており、実際に垂れ流されていれば専門家でなくても一目で分かるという。
ネット情報に詳しい京都大大学院情報学研究科の山本祐輔特定助教(社会情報学)は
「放射能に敏感で専門知識には乏しいネット利用者の場合、『原発は危ない』という表層的な情報に
飛びついてしまう。自分はその情報を知っているという優越感からブログに転載し、連鎖していく」と話す。
事故後、福島第1原発の周辺で調査を行い、冷静な対応を呼びかけている札幌医科大の
高田純教授(放射線防護学)は「今回の文書のように、いたずらに不安をあおる不正確な情報が
出回ることは原発の推進、反対のどちらにとっても迷惑な話。マスコミが政府の発表内容を
しっかりと検証した上で報道し、正しい情報・知識を国民に伝えてほしい」と話している。(抜粋
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110504/trd11050422140015-n1.htm