東日本大震災の被災地の広い範囲で、津波被害のため防災行政無線が使えない状態が続いている。
管理する市町村は復旧を急いでいるが、資材不足などで難航。今後、余震などで津波が発生する恐れが
あるため、各自治体は情報伝達手段の確保を進めている。
岩手県によると、大槌町は7割、宮古市は4割弱が機能していない。大槌町では中心街などの57局中
40局が破損し、同町の平野公平総務課長は「早く復旧したいが、めどが立たない」と説明する。
約70局が使えなくなった宮古市は、無線が聞こえなくなった地域の避難所に受信機を設置したが、避難所
の外にいる人には音声が届かない状態。市は近く復旧作業を始めるが、地域の中で津波の到達しなかった
場所を選んで設置するという。
岩手県内では釜石市と山田町で約3割、大船渡市でも1割強が被害を受けた。各自治体は使える無線
を最大音量にするほか、無線を積んだ消防車両が拡声機で伝えるなどの工夫を実施。拡声機をつけた簡単
な仮施設も検討し、県総合防災室の小山雄士室長は「対応は急いでいるが、地震があれば、すぐに避難する
ことを心がけてほしい」と呼びかける。
宮城県でも大きな被害が出た。女川町では無線の基地局となる役場が流された上、町内各所で拡声機の
ついた支柱も全て破壊され、復旧作業中だ。津波の情報が出た場合は、広報車が町内を巡回し、避難所には
衛星電話で伝えるという。
名取市では、市内20局のうち7局が使用不能になった。市が設置した臨時FM局が防災無線の内容を放送し、
一部地域では津波で浸水して無人になった小学校の屋外拡声機でも流しているという。
福島県の沿岸部でも同様の状況。南相馬市は、市の広報車や消防の緊急車両を使って防災無線の情報を
流し、16日からは臨時FM局を設置して情報を伝達している。市の担当者は「車両の拡声機ではすみずみまで
音が届かず、『今の放送は何だったのか』と市に電話が相次いでいる」と話した。
http://mainichi.jp/select/today/news/20110418k0000m040077000c.html