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【ワシントン】オバマ米政権が16日、福島第1原発の半径50マイル(約80キロメートル)以内の米国民間人と軍人に対し
避難を指示したことについて、米原子力業界の推進団体は決定の「科学的な根拠」が疑わしいと述べている。
オバマ政権が決定した在日米国人の50マイル隔離指示は同日、米メディアで大々的に報じられた。
日本政府が半径12マイル(約20キロ)からの避難指示にとどめており、
原発周辺地域のリスク査定で米政府が日本政府の見解に同意していないことを示唆しているからだ。
米原子力研究所(NEI)の広報担当、スティーブ・ケリークス氏はダウ・ジョーンズ(DJ)通信とのインタビューで、
原子力発電関連業界は米政府の措置の「科学的根拠に疑問を抱いている」と語った。
バートン議員はダウ・ジョーンズに対し、「米政府がなぜそうするのか、ある程度理解できるだろうが、
NEI関係者は(50マイル避難が)必要をはるかに上回ると言っている」と語った。
NRCのヤッコ委員長は16日、米政府が日本政府以上の半径の退避を勧告したのは、
福島原発の4号機の使用済み核燃料プールをめぐる懸念も一因だと述べた。
同委員長によれば、このプールの水が蒸発してしまい、放射線が飛散し核燃料発火のリスクが増大しているという。
同委員長は3号機でも亀裂によってプールの水が漏れ出す恐れがあると述べた。
NRCの50マイル退避勧告については「憂慮する科学者同盟(UCS)」も批判しているが、別の理由からだ。
UCSは、米国内での緊急避難計画の避難範囲基準が10マイルであるのに、どうして50マイル避難を勧告できるのかと疑問を呈した。
UCSの原子力の専門家デービッド・ロックボーム氏は
「米国で半径50マイル体制を敷いていないのをどう正当化するのか」とNRCを批判し、
「われわれは長い間、緊急避難地域を拡大するよう提唱してきた」と語った。
UCSは17日、2010年に米国内の原発で14の「ニアミス(事故の危機)」があったと発表。
事前の警告に耳を貸していればこうしたことはなかったはずだとしている。
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