休火山の目覚めは定説より早い?
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20110311003 最新の火山研究によると、休火山は従来考えられていたよりもずっと短期間で“眠り”から目を覚ますという。
休火山の地下にはマグマ溜まりといって、溶けた岩石が粘性の高い状態で貯えられていると考えられている。
火山が“目を覚ます”のは、地球の奥深くから新しくわき上がってきた熱いマグマによって、このマグマ溜まりが十分に温められたときだ。
現在の学説では、熱がマグマ溜まり全体に行き渡って、液状になったマグマが噴出するような状態になるには数百年から千年ほどかかると見られている。
ところが流体力学に基づく最新のモデルによって、地中深くの熱いマグマが、これまで考えられていたよりもずっと簡単に、マグマ溜まりの高粘性の古いマグマと混じりあうことが示された。
「このことは、これほど短期間で火山が再活性化する理由の1つだ。マグマ系に流入した高温マグマの熱の移動は、これまで考えられていたよりずっと効率的だ」と、研究の共著者であるワシントン大学の地質学者ジョージ・バーガンツ氏は語る。
研究チームはこのモデルを実際の火山の噴火2件と比較した。
1991年のフィリピン、ピナトゥボ山の噴火と、現在も継続中の、イギリス領モンセラート島のスフリエールヒルズ火山の噴火だ。
この2つの火山のマグマの温度やマグマ溜まりの容積といった物理的特性を、温度上昇の最初の兆候から実際に噴火が起こるまでのおおよその期間と突き合わせて分析した。
ピナトゥボ山の場合、新しいモデルではマグマ溜まりが活性化するまでわずか20〜80日しかかからないという結果が得られたが、従来の理論では500年かかると予測されていた。
ただし今回のモデルは、再活性化した火山が危険な噴火を起こす可能性が高まることを示しているわけではないとバーガンツ氏は念を押す。
「今回の発見で火山への対応が変わるとは考えていない。休火山の再活性化にまつわる危険の多くは、噴火のプロセスよりも地滑りに関わるものだ」。
以下略