「現代自動車」躍進の真因は「脱トヨタ生産方式」にあり 現場にはカイゼン活動を極力させない/井上 久男
品質面でも「ソナタ」は米運輸省の衝突安全基準で最上級の5つ星を獲得した。
米調査会社JDパワーによると、米国で新車を購入して最初の90日間での100台当たりの不具合の指摘数は、
1998年にはトヨタが162件で現代が269件だったのが、06年に初めて逆転してトヨタの106件に対して現代は102件となった。
07、08年に2年連続でトヨタが逆転したが、09年は再び現代に逆転され、トヨタの101件に対して現代は97件だった。
1980年代に現代は北米に進出して品質問題を起こし、一時撤退を余儀なくされたが、それも昔の話だ。
品質が向上した本質的理由が、TPSからの「卒業」なのだ。
現代は90年代まではトヨタに追いつくことに躍起になり、「カイゼン活動」などを積極的に導入した。
しかし、00年代に入って方針転換した。
その理由は、雇用慣行や労使関係など基本条件がトヨタと違う中で同じ手法を導入しても、
現場が混乱するだけでかえって製品に不具合が生じる傾向にあったからだ。
日本の企業でもTPSを導入している企業は多いが、成果が出ている事例はあまり聞いたことがない。
日本郵政ではTPSを導入したことが現場の混乱を招き、それが原因で遅配などのトラブルが起こったとされる。
TPSを知ったかぶりの経営コンサルに多額のお金を払い、全く成果が出ていない企業もある。
現代の話に戻るが、現代の新しい生産方式の主な特徴は、作業者にカイゼン活動を極力させないことにある。
トヨタでは製造工程で品質を造り込んでいくために作業者が知恵を出し合いカイゼン活動に取り組むが、現代では指示された仕事をこなすだけでよい。
その代りカイゼン専門の担当者を置き、そこにエリート人材を起用した。
また、生産性向上のため、自動車の工場では工程数を減らしラインの長さを短くすることが常識だが、現代はこれも否定した。
逆にできるだけ工程を細分化して工程数を増やすことで仕事を単純化し、一人の作業者が複雑な仕事をしなくて済むようにした。
このやり方だと、言葉が通じにくい外国人労働者の指導もしやすい。
(抜粋)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110306-00000001-gendaibiz-bus_all