【モスクワ大前仁】中央アジアのキルギスのバキエフ大統領は、国内で広がった反政府運動
に持ちこたえられなくなり、権力の放棄を決意した。
バキエフ氏が05年の「チューリップ革命」で民衆デモによる政権転覆を経て就任しながらも、
次第に独裁的な手法を強め腐敗したことに対し、国民が想像以上に強い反発を突きつけた。
バキエフ氏は05年に当時のアカエフ大統領を辞任に追い込んだ「チューリップ革命」で
主導的な役割を果たして、同年の選挙で大統領に就任。
だが就任後は汚職撲滅に取り組まず、親族を重用したほか、次々と政敵を投獄した。
昨年7月の大統領選挙は大差で再選したが、国民の間では大統領派による大規模な
選挙違反が「公然の事実」とみられていた。
野党勢力や国民が、不満を爆発させたのは、大統領が3月下旬の議会演説で「国際社会は
選挙と人権を基盤とする民主主義のモデルの欠点を指摘している」との考えを表明したことが
きっかけとなった模様だ。
潘基文(バンキムン)・国連事務総長が先週末にキルギスを訪れた際、同国の人権状況を
批判したことも、反政府運動に弾みをつけた。キルギス議会でも大統領派の「輝く道」が8割
近くの議席を占めることから、バキエフ氏の権力基盤は揺るぎないものとみられていた。
だが経済危機の影響が深刻となり、電気やガスの価格が数倍にはねあがり、職を得られない
若者を中心にして、政府に対する不満が強まっていた。
今回の政変劇は国内の地域事情も要因になっているようだ。同国は南北の地域対立が激しく、
南部出身のバキエフ氏は同地域の権益代弁者とみられてきた。今回の争乱は北部の都市で
起きていることから、北部勢力が権力の掌握を目指して、反政府運動に加担した側面もありそうだ。
今後、「臨時政府首班になる」と宣言している野党指導者、オトゥンバエワ元外相を軸に
新政権作りが進むとみられるが、バキエフ大統領の辞任が確定していないうえ、
野党も一枚岩ではないことから、政権樹立の行方は混とんとしている。
http://mainichi.jp/select/world/news/20100408dde007030005000c.html