国会図書館の本、ネット有料公開探る 絶版も手軽に
国立国会図書館の蔵書をインターネット経由で有料公開する構想が浮上している。既存の出版ビジネスとの共存に課題もあるが、
利用者から使用料を徴収し、作家や出版社に分配。実現すれば、絶版本などが自宅で手軽に読めるようになる。構想の背景には、
米グーグルが世界規模で進める全文検索サービスの衝撃がある。
国会図書館は蔵書のデジタル化を進め、10年度末には同館が所蔵する国内図書の4分の1にあたる約92万冊がデジタル化される
見込みとなった。長尾真館長が、急増するデジタルデータの活用の仕組みを日本文芸家協会や日本書籍出版協会の幹部らと協議してきた。
長尾館長らの構想では、新設する非営利の第三者機関「電子出版物流通センター」(仮称)に、同館の図書データを無料で貸し出し、
センターがネット公開する。利用者は数百円程度の使用料で、本を借りるようにパソコンで本文を一定期間読める、といった利用法が検討されている。
ただ著作権が残る書籍は、ネットで公開するには作家や出版社から許諾を得る必要がある。この処理コストが壁になり、今のところ同館が
ネット公開しているのは著作権が切れた明治大正期の書籍約16万冊などに限られている。
そこで文芸家協会と書籍出版協会は、書籍のネット利用にかかわる著作権を集中管理する新団体を検討している。文芸家協会の
三田誠広副理事長は「書店で入手が難しい絶版本がネット経由で読まれるのは作家にとっても喜ばしい」と話す。
国会図書館の蔵書のネット公開が急激に拡大すると、書店などを含めた既存の出版流通ビジネスが打撃を受けかねない。当面のネット公開の
範囲は、作家と出版社との出版契約が完全に切れた絶版本などに限られる可能性もある。
構想の試案をまとめる松田政行弁護士は「日本の出版文化の配信は他国の私企業に任せるのでなく、日本が主体的に進めるべきだ」と話す。
http://www.asahi.com/digital/internet/TKY200908250201.html http://www.asahi.com/digital/internet/images/TKY200908250205.jpg