NHKの番組改変問題をめぐる東京高裁判決を報じたNHKニュースについて、「放送と人権等権利に関する委
員会」(BRC、委員長・竹田稔弁護士)は10日午前、「公平・公正を欠き、放送倫理違反があった」との見解を発
表した。訂正放送や謝罪の必要はないとした。
市民団体「『戦争と女性への暴力』日本ネットワーク」(バウネットジャパン)が「公平性を欠く放送をした」と申し立
てていた。バウネットは01年にNHKが放映した番組「問われる戦時性暴力」に協力したが、放送直前に番組が改
変されたとしてNHKなどを相手に訴訟を起こし、上告審判決が12日にある。
問題となったのは、東京高裁の判決があった07年1月29日夜の「ニュースウオッチ9」。BRCは、放送の公平・
公正を定めた放送法やNHKの自主基準などと照らし、裁判の一方の当事者であるNHKが、相手側の見解に触れ
ることなく、自らの解釈を伝え、(番組編集への)介入が疑われた2人の政治家のコメントだけを放送した点を、違反
と認定した。
一方、「政治家が具体的な話や示唆をしたことまでは認められない」と述べた高裁判決を、NHKは「議員が具体
的に番組に介入したとは認められない」と報じた。これについてBRCは、誤りとは断定できないとする一方で「介入
がなかったと(判決は)判断していない」とするバウネット側の解釈も成り立ち得る、と指摘した。
バウネットは、NHKが「当事者の言い分」と「報道機関としての報道」を区別せずに訴訟結果をゆがめて放送した、
と主張。NHKは「原告側の見解を紹介しなかったとしても、必ずしも公平・公正を欠くものではない」と反論していた。
◆倫理向上につとめる
BRCの決定を受け、NHK広報局は「今回の決定を真摯(しんし)に受け止めて、さらに放送倫理の向上に努め、
公共放送に対する期待に応えていきます」とのコメントを出した。
◆今後の放送に期待
バウネット側は記者会見で、「主張がほぼ全面的に認められて大変うれしく思う。12日の最高裁判決も含め、N
HKの今後の放送に期待したい」とコメントした。
http://www.asahi.com/national/update/0610/TKY200806100169.html