神奈川のひと:フィギュアスケート靴の刃を研ぎ続ける、坂田清治さん /神奈川
◇世界に知られる熟練の技−−坂田清治さん(60)
◇選手の足もとを支える「匠」
金メダルを獲得した安藤美姫選手が、リンクサイドに駆け寄ってきた。
07年3月、東京であったフィギュアスケートの世界選手権。06年のトリノ五輪、
ケガで不本意な成績だった彼女の悔しさを思うと、熱いものがこみ上げた。涙ぐみうなずくその手を握った。
「よく我慢したね」
トップ選手の足もとを匠(たくみ)の技術で支える刃の「研ぎ職人」。数年前から
安藤選手のスケート靴の刃を調整している。同選手権では浅田真央(2位)、
キム・ヨナ(3位)両選手の刃も研いだ。「気がついたら金、銀、銅を独占していました」
新潟県出身。父親が時計・貴金属店を経営していた影響で、子どものころから
精密な手作業が得意だった。もう40年以上は研いでいる。「刃を触っただけで、
100分の1ミリの違いが分かる。選手の体重や技術、天候、地域などを加味し、
微妙に刃の溝の深さを研いで変えるんです」。高い技術は口コミで広まり、国内外からひっきりなしに依頼がくる。
実は、本業はフィギュアスケートのインストラクター。「頼まれなければ研ぎたくない」と苦笑する。
少年時代、田んぼに張った氷をリンクに見立てて滑り、スケートにのめり込んだ。
中学生から東京のスケートクラブに入り、大学卒業後は品川プリンスホテルの
アイスショーなどで活躍。24年前に神奈川スケートリンクにやってきた。現在は
幼稚園児から大学生まで約30人を指導し、夜は経営するフィギュアスケート専門店で刃を研ぐ。
「使命は五輪選手を出すことです」
いまだけではない。未来のフィギュアスケート界の足もとも支える。【鈴木一生、写真も】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080130-00000047-mailo-l14