次スレで
にげっと
あ
4ゲット
>>1乙
投下していいのかな……?
とりあえず前スレの続き投下します
バクフーンとエルレイド。二匹は両手を組み合い、互いに力を放出する。
バクフーンは背中から炎を。
エルレイドは全身から気合いを。
力と力は拮抗し、どちらも譲らない――と思われた矢先、エルレイドが意図的に体制を崩した。
その両目が妖しく光る。
バクフーンは身の危険を察知し、敵の顎に頭突きを喰らわせた隙に後方へと飛び退く。
予想通り敵はサイコキネシスを放ってきたが、バクフーンは回避に成功した。
「ストーンエッジ」
トレーナーは依然表情一つ変えずに指示を送る。ツバサはチッと舌打ちし、バクフーンに回避を命じた。
威力の高い、岩タイプの技。
流石は元四天王と言うべきか、厄介な技を覚えさせている。
紙一重で攻撃をかわすことは出来たが、敵の動きに目を凝らすと、知らぬ間に姿が消失していた。何をしたのかは判っている。
「バクフーン、後ろに炎のパンチ!」
テレポートによる不意討ちなど、既に見切っているのだ。事前に出現ポイントを予測したツバサの的確な指示により、エルレイドは出現と同時に殴り飛ばされた。
「その技は通じないわ」
「やはりさっきのは偶然ではなかったか」
得意技が通用しないことをわざわざ確かめる為に、再びテレポートを命じたのか。
だとすれば、彼にはまだこの戦いに余裕があるということ。
『焦るな。奴とて絶対ではない』
「わかってる……」
敵は今まで出会ってきたポケモントレーナーの中でも相当な力を持っている。無論のことながらこの世界で戦った他の何者よりも、圧倒的に強い。
しかし何故か、厳しい戦いだというのに現状に楽しんでいる自分が居た。
「血は争えないね……ポケモンバトルをしている時の君は、一際輝いて見える」
「……お前はどうなのよ?」
血は争えないという台詞にムッと来たが、平静を装い、彼に問う。
「私は嫌いだ。ポケモン同士、同族である筈の存在が、何故人の命令で傷つけ合わなければならない?」
『しかしそれを望むポケモンも居る。望まないポケモンだけとは思わないことだな』
「それは人間に感化されているだけさ。言ってしまえば洗脳。戦いが好きになってしまう、戦いを好きにさせられる……ポケモンがバトルを望むというのは、状況がそうさせているに過ぎないんだよ、ホウオウ」
『貴様は……』
「私は状況から変えてみせる。望まぬ戦いからポケモンを遠ざけ、人間の手から救う……その為にはこの世界の住民には犠牲になってもらうよ」
彼には彼なりの目標があるのだということは判る。彼の行動を突き動かしているのはポケモンに対する純粋な愛情か。
しかしツバサはそれを「勝手なことを」と容赦なく切り捨てた。
「この世界の人達が何をしたって言うの? 自分の世界でやればいいじゃない」
ポケモンの居ないこの世界に全ての野生ポケモンを移住させ、人の手が届かないポケモンの楽園を創るのが彼の目的。
そんな回りくどい真似をしなくても、自分達の世界に居る全ての人間を滅ぼせば同じことだ。
無論そんなことは絶対にさせないが、それならば関係のないこの世界を巻き込まなくて済むとツバサは思う。
彼、イツキは眈々とそれに答えた。
「私の世界……いや、私と君達の世界には障害が多すぎる。レッド、ワタル、ダイゴ、シロナ、ゴールド……あの世界で計画を実行すれば、彼らを敵に回すことになるからね」
「ここには邪魔者が居ないから? 結局逃げているだけじゃない!」
はっきりと彼を否定する。その言葉には、ツバサ自身の怒りが込められていた。
イツキは腕に抱えたセレビィを撫でながら、冷徹な口調で言った。
「君にはわかるまい。私が、関係のない人々を巻き込んでも目的を果たしたい理由が……」
その言葉にツバサはわかってたまるかと返そうとしたが、彼の瞳を見た瞬間、何も言えなくなった。
悲しい目……。
絶望に染まった彼の心が、見えてしまった。
『ツバサ!』
ホウオウの声でハッと意識が現実に引き戻される。
目の前では戦闘が再開され、バクフーンが彼女の指示を待っていた。
「ストーンエッジ!」
敵から繰り出される岩石攻撃が、直撃コースを辿ってバクフーンに襲いかかる。
避けられないと踏んでツバサは「まもる」を命じたが、敵はそれすら計算に入れていた。
「――!?」
バクフーンが生み出した障壁はストーンエッジを阻んだ。
しかし敵はその障壁の内側に入り込んでいた。
――フェイントだ。
威力の低い一撃だが不意を突かれ、急所に受けてしまう。
後方へ吹っ飛ばされるバクフーンに追い討ちをかけるように、エルレイドはもう一度距離を詰めてきた。
「インファイトだ」
バランスを崩した今のバクフーンに回避は出来ないと踏んだのか、敵は格闘タイプ最強クラスの技を命令する。
確かに、回避は難しい。
だが、ツバサはバクフーンを信じた。
「火炎放射っ!」
敵の拳が今にもその身を捉えようとする刹那、バクフーンはバランスを崩しながらも行動を起こした。
背中から放出される炎はこれまでよりも凄まじく、身体中の熱気も格段に上昇している。
猛火――特性の発動だった。
「エルレイド!」
イツキが表情を変えて叫ぶ。
しかし時既に遅く、インファイトが直撃するよりも早くバクフーンの火炎放射が彼のポケモンに直撃し、エルレイドはそのまま沈黙した。
インファイトは防御を捨てた攻撃だ。至近距離からの火炎放射を避ける術はなかった。
力尽きたエルレイドを、イツキはモンスターボールに戻す。
解せない……と彼は呟いた。
「体勢を立て直すまでのスピードが、こちらの予測以上に早かった……まさか君は私を嵌めたのかい? わざとフェイントを誘い込み、わざと体勢を崩し、エルレイドがインファイトを仕掛けるタイミングを狙って……」
「そんな芸当が出来るのはレッドやチャンピオンぐらいなものよ。私はただ火炎放射を命令しただけ」
『ツバサはバクフーンを信じ、バクフーンはそれに答えた。それだけだ』
愕然と佇むイツキに普段の調子で答えるツバサとホウオウ。要するにバクフーンのファインプレーだ。
信頼に答えたバクフーンの顔は、少しやつれてはいたが得意気だった。
「ふっ、だろうね……」
続く三匹目のポケモンが入ったモンスターボールを取り出し、イツキは苦笑を漏らす。
余裕の表情に戻り、彼は口を開いた。
「あと三匹……あと三匹、私は今のエルレイドと同等のポケモンを持っている」
「!?」
「君はあと何匹、そのバクフーンと同じぐらいの強さを持ったポケモンを持っているかな?」
イツキの発言に、ツバサは目を見開く。
いかなる時も感情を表さないポーカーフェイスはポケモンバトルにとって重要なことだ。
しかし、彼女は見せてしまった。内に抱えた動揺を。
「やはりそうか。君の最強のポケモンはそのバクフーンで、他はそれ以下の強さでしかない。つまり、そのバクフーンさえ倒してしまえば……」
ニヤリと唇をつり上げ、彼女の手持ち事情を見透かしたイツキは勝ち誇った笑みを浮かべる。
「私のポケモンに対抗出来るポケモンは、一匹も居なくなるということになる」
図星だ。
対抗出来るポケモンが居なくなるどころか、ツバサの残る手持ちポケモンは体力を消耗したこのバクフーンと、基本的に移動要員のヨルノズクだけだ。
さらに彼は、ツバサにとって絶望的な発言を言い放つ。
「そして今から私が繰り出すポケモンは、私が持つ最強のポケモンだ。この私の切り札を引き摺り出したことを、誇りに思うがいい!」
モンスターボールを放り投げ、切り札――ネイティオを繰り出す。
セレビィと同じ浅緑色の体毛に、白い翼が見える。トーテムポールのような顔つきは、まさにポーカーフェイスを極めたものだった。
ツバサとバクフーンは身構える。
見た目は大して強くなさそうだが、隠し持った高い戦闘能力はとてつもないものであることは、既にホウオウから聞かせられていた。
彼の手持ちポケモンの数まではホウオウも覚えていなかったが、その切り札はとても印象深く記憶に残っていたようだ。
「さあ、始めよう」
一瞬。
開幕を告げるイツキの台詞の後、一瞬でバクフーンは吹き飛ばされた。
「速い……! なんてサイコキネシス……」
地を転がりながら体勢を整え、バクフーンは表情変わらぬ敵を睨む。
思いの外ダメージは少なかったが、それはイツキが意図したことだった。
「今のはサイコキネシスではないよ。……念力だ」
つまり、彼は手加減した。
今の一撃でバクフーンを瀕死に持ち込めたものを、あえてそうしなかったのだ。
「傷薬を使いなよ。エルレイド相手で消耗した今のバクフーンとでは、とても良い勝負は出来ない」
「舐めるな!」
バクフーンは地を蹴り、浅緑色の敵に接近する。敵は翼を持ちながら、未だその場に佇んでいた。
「火炎放射っ!」
特性の猛火によって力を増した火炎放射が敵に襲いかかる。が、敵は造作もなくそれを避けてみせた。
「テレポートを攻撃に生かせられないなら、回避だけに生かせばいい。今のは良い攻撃だったけど、当たらなければ意味はないね」
「くっ……」
相手を見下すだけの力はある。
頭に来るが、彼の総合的な実力は自分より遥かに上だ。
言う通り手持ちの「回復の薬」でバクフーンの体力を回復させるのが得策なのかもしれないが、プライドが邪魔し、彼女はそれを拒否した。
「困るんだよ。ある程度良い戦いをしないと空間が歪まない。ポケモン同士が拮抗した力でぶつかり合わないと、空間の神を呼び寄せる餌にならないんだから……」
ネイティオの放つサイコキネシスが、バクフーンの足元のフィールドに大穴を空ける。
彼がわざと外しているようだった。
「流石にネイティオでは力の差がありすぎたかな? まあいいか。これだけ次元空間を歪める激しい戦いが出来たんだ」
敵の圧倒的な力の前に、バクフーンは身動き出来ない。ツバサもまた、その状況を眺めることしか出来なかった。
完全に計算違いだ。
噂に聞いたイツキのネイティオが、ここまで強かったとは……。
「決めさせてもらうよ。ツバサさん?」
ネイティオは白い翼をバッと振り上げ、全身からサイコキネシスを放出する。
具現化した念力は、まるで雷のような攻撃だった。
なすすべもなく直撃を受けたバクフーンは宙に舞い、地に落ちた頃には既に意識を失っていた。
「さて、他のポケモンに私のネイティオを倒すことは出来るかな?」
動かなくなったバクフーンからそのトレーナーに目を移し、イツキは問いかける。
ツバサは奥歯を噛みしめる。
『ツバサ』
「……ごめんホウオウ……」
胸元に下げた金色のモンスターボールに手をかけ、彼女は同じ色の瞳で彼を睨んだ。
「出来るわ」
何か覚悟を決めたような強い顔だった。
その様子にイツキは頬を引き締める。
「まさか……いや、そんなことをすれば、この世界は愚か君の世界や名も知らぬ世界まで、全ての次元を歪めることになるよ?」
「…………………」
「たとえ上手くいったとしても、この世界の崩壊は防げない。わかっている筈だ。だから今までそれを解放しなかった」
イツキの口数が増え、口が早くなる。まるで今から彼女が起こそうとする行動に怯え、焦っているようだった。
「……次元の神に期待するわ」
「待て! 神が必ずしも歪んだ空間を修復するとは……」
「……任せたわ、ホウオウ」
「くっ! ネイティオ、彼女を撃て!」
額に冷たい汗を流しながら、イツキはツバサの行動――ホウオウの召喚を阻止すべくネイティオに彼女への直接攻撃を命じる。
ホウオウだけが唯一自分を倒しかねない不安材料なのだろう。
しかしボールを放つ前にトレーナーの息の根を止めれば、それを防ぐことが出来る。
彼の判断は的確かつ迅速だと思う。
ネイティオの攻撃速度を考えれば、このタイミングではボールを放つことが出来ない。
(助けて……)
今まで考えもしなかった、思い浮かびもしなかった言葉が、無意識に心に浮かび上がる。
その時同時に過ったのは、世界で一番嫌いな――父親の姿だった。
……そうだったんだ……
やっぱり私はまだ、お父さんのことが……
死を覚悟など出来はしない。
こんな所で、ましてはこんな奴なんかに殺されたくない。
覚悟は出来なかったが、何故か恐怖を感じなかった。
そして、彼女が死ぬこともなかった。
何故ならばサイコキネシスを放とうとしたネイティオが、突如現れた灰色のポケモンに突き飛ばされ、攻撃出来なかったからだ。
そのポケモンのトレーナーと思わしき人物は、今ツバサの目の前に居る。
(お父さん……?)
頼もしく大きな背中。
しがみついてばかりだったあの頃の思い出が、ふと頭に蘇る。
父がこの場に居る筈がない。
しかし、目の前に居る彼――野比のび太の背中は、どうしても重なって見えてしまった。
「あの鳥ポケモンの群集を突破してくるとは中々どうして……素人の割に出来るじゃない」
眼鏡の奥の両目は、真っ直ぐ敵を見据えている。その顔はポーカーフェイスとはほど遠く、怒りに満ちていた。
「許さない……」
拳を握り、のび太が吐く。
「お前は、僕が倒してやる!」
ポケモンの素人は威勢良く、四天王打倒を宣言する。常のツバサなら何を馬鹿なと突っ込むところだが、何故だか本当に期待してしまった。
すぐにそんな自分に気づき、彼女は首を横に振る。
「どいて。アイツはお前の手に追える相手じゃない。アイツは私が……」
彼がイツキを倒せる筈がない。期待を殺し、ツバサは再び前に出ようとする。
だが、彼はそれを制止した。
「僕がなんとかアイツを食い止めるから、ツバサちゃんはその間にポケモンを回復させて」
「えっ?」
コイツ、さっきアイツを倒すって言わなかった?
表現が「食い止める」に変わり、ずいぶん現実的なことを言うとツバサは半ば感心した。
のび太は軽く笑んで、
「君が殺されそうになってるの見て、ちょっと頭に血が昇って……言い間違えちゃったんだ」
「……あっそ」
まあ、「お前は僕が食い止めてやる!」なんて言っても格好がつかない。言い間違えたのは正解だったと思う。
しかし、違った。
彼が本来言う筈だった台詞は、そんなものではなかった。
のび太はネイティオを突き飛ばしたポケモン、ドンファンを連れて敵の前に詰め寄る。
そして、仕切り直した。
「お前は……僕「たち」が倒す!」
その台詞が聞こえた瞬間、ツバサは胸の内に何かが弾けるような感覚を感じた。
僕たち――つまり、一人ではないということ。
一人では……ない。
『ツバサ……』
「嬉しい……嬉しいよホウオウ。仲間が居て、一緒に戦う仲間が出来て……」
『……そうか』
旅をして得たものが、そこにある。
だから旅をして良かったと思う。
旅の為に家族を捨てた父を許すことは出来ない。
だが、父が惚れた旅というものを、ツバサは許した。
フィールドでは既にのび太とイツキの戦いが始まっている。
元気の欠片と回復の薬で、早くバクフーンを回復させないと、ね……。
一人ではなければ、何でも出来る気がした。
投下終了
少し唐突な展開だったかも……
次回はのび太&ツバサvsイツキ
<<1へ
前のスレの行方は
七色の翼氏乙、ネイティオついに出したか
というかいつの間にドンファンに…?修行でか?
あっちがまだ297レス開いてるよ?
>>20 下にKBってのが見えるだろ?
これ容量表してるんだが、前スレはもうパンパンに近くて1000行かなくてももうすぐ書き込めなくなるんだよ
10月保守
投下します
敵の数は大分減らせたと思う。
何よりギャラドスの圧倒的なパワーは多対一でも絶大な威力を発揮し、鳥ポケモン達を蹂躙してくれた。
おかげで包囲網が薄くなり、のび太をツバサの元へ行かせることが出来た。
本当なら自分が行きたかったところだが、イツキには既に手の内を見せている為、行ったところで瞬殺は確定だ。
のび太の実力は出木杉も測りかねてはいるが、おそらくイツキには及ばないだろう。
だが、彼はまだ一度もイツキと戦っていない。
自分もジャイアンも、現状の実力ではイツキに敵わないのは明白だ。
誰が行っても敵わないなら、まだ手の内を見せていないのび太を挑ませた方が得策だと出木杉は判断した。
「ここは僕達二人で十分。だから君は先にツバサちゃんのところへ、か……」
のび太の為にギャラドスで道を開けた時のことを、出木杉は振り返る。
上手く格好はつけただろう。のび太が異性なら確実に惚れた筈だ。うん。
しかしその言葉はまやかしである。これだけの群集を相手するにはジャイアンとの二人だけでは心許ない。
(全く……こんなゴリラとじゃなくて、静香ちゃんと一緒に戦いたかったな)
脳内で軽口を罵く秀才出木杉。
これも窮地に陥った時も冷静さを失わないようにする、一つの手だ。
「あーくそっ! 鳥相手だからあのゴリラのジュプトルも全然役に立たない!」
「なんだとてめぇ!」
「……って、のび太君が言ってたよ」
「あの野郎……! 後でギタギタにしてやる」
頭にしまっておく筈の悪態が声に出てしまい、ジャイアンの心に怒りの炎を灯してしまった。
しかしすぐにのび太に責任転嫁する辺り、出木杉の秀才ぶりが伺える。
(まあ、怒りは力に変わるものだ。武を元気付けるとは流石僕、天才天才アンド天才)
ポジティブシンキングというものも、こういった状況では割と役に立つ。
しかし現実は厳しく、彼ら二人とそのポケモン達は今、地上に追い込まれ、数十匹もの鳥ポケモン達に囲まれていた。
「タケコプターの電池も切れちまったし、俺のジュプトルじゃ確かに相性が悪い。役に立たねぇわけじゃねぇけどな!」
「空気砲も壊されてしまった。ポケモンの体力は傷薬があるからまだ良いとして、無理をさせたせいで技ポイントが厳しい。
五匹くらいならガーディで倒せると思うけど……」
「よし、じゃあジュプトルとギャラドスとガーディに倒せるだけ倒した後は、俺達が素手で戦おう」
「……ああもう」
一旦静香の居る空き地に戻るという手もあるが、鳥達はこの場から逃がしてくれそうにない。
気は進まないが、ここは背水の陣。ジャイアンの言う通りにした方がいいのかもしれない。
「ギャラドス、暴れる!」
「ジュプトル、電光石火!」
「ガーディも出て! 火炎車だ!」
幸い、イツキの指示なのかここに居る鳥ポケモン達はツバサやのび太には興味がないようだ。
思う存分戦える。
「プラスに考えよう。これだけのポケモンを倒せば、僕達のポケモンは一気にレベルアップだ」
「よっしゃあああっっ!」
青と緑、赤のポケモンが共闘し、敵を薙いでいく。
この戦いはポケモンはもちろん、彼ら自身にも確実に多大な経験値を積ませていた。
――修行中にはなかった実戦の緊張感に、野比のび太は支配されている。
下手をすれば自らの命すら失いかねない戦いは、今まで経験がないわけではない。
彼は過去に魔物やロボット、殺し屋などと戦い、少なからず命のやり取りをしてきた。
若干十一の年齢でそこまでの経験をしてきた人物など彼以外には、この日本には居ないだろう。
しかし過去に経験があるとはいえ、決してそれに慣れているわけではなかった。
今とてイツキを前にして、彼は冷や汗をかいている。
怖いのだ。
怖くない筈がない。敵の力はゲームの登場人物としてよく知っている。知っているだけでなく、ツバサのバクフーンが倒された瞬間をその目で見ていたのだ。
ポケモンの世界でレッドに鍛えてもらい、自分でも驚くほど強くなった。
しかし、一対一の戦いで勝てると思うほど、のび太は自惚れてはいなかった。
「ドンファン、岩石封じ!」
一対一ではなく、二対一に持ち込む。
プライドの高いツバサは快く思わないだろうが、それが最も勝率の高い方法なのだ。
『一対一と二対一とでは全く違う。相手としては、見た目以上に厳しい戦闘なんだ』
脳裏に師レッドの言葉が過る。
ポケモントレーナーは言わばポケモンの頭脳だ。
本能だけで動く、戦い方が一本調子な野生のポケモンなら多数でかかってきてもそう苦にはならない。
しかし、二人のトレーナーによって別々の指示を受けたポケモン達が同時に動いてくると、対処は非常に困難になる。
師からはそう教わっており、のび太はそれこそが格上のトレーナー(イツキ)を倒す手段であると考えていた。
修行によってゴマゾウから進化したドンファンは、相手の素早さを減少させる追加効果を持つ岩タイプの技を仕掛けるが、敵は造作もなくこれを回避する。
すると、一度たりとも目を離さなかったにも関わらず、気づけばネイティオの姿はドンファンの背後にあった。
「そいつはテレポートで近づいたり、攻撃を避けたりする! 目だけに頼らないで、勘を働かせるのよ」
ツバサによるアドバイスが耳に入る。だが、視覚に頼らず勘で動きを追うなど無茶苦茶な理論にもほどがある。
勘でテレポートの出現ポイントを当てるような芸当が出来るのは、天性の才能を持つ者か、或いは長年のバトルで経験を積んできた達人ぐらいだ。
そのどちらでもないのび太は、ただ敵のネイティオのトリッキーな動きに翻弄されるだけだった。
「サイコキネシス」
テレポートを使って背後に出現したネイティオは、その圧倒的な火力を武器にけしかけてくる。
ドンファンの重い重量をものともせず、サイコキネシスはその身を簡単に吹き飛ばしてみせた。
「速くて……強い!」
こちらが反応するよりも速く繰り出される攻撃のスピードに、一撃で大ダメージを与えるパワー。
吹き飛ばされ、地面に叩きつけられたドンファンは、四本の脚を震わせながらなんとか立ち上がる。
ゲーム表示にすれば、ヒットポイント限界ギリギリで持ちこたえているところだろう。
「特性、頑丈か……もしかして、がむしゃらを覚えていたりするのかい?」
「ドンファン、じたばただ!」
イツキの問いを無視し、のび太は迅速に指示を送る。
じたばたは残り体力が少なければ少ないほど威力の上がる技だ。特性「頑丈」効果で瀕死寸前で持ちこたえている現状では、持てる最高の威力を発揮出来る。
確かに威力は凄まじく、ネイティオが立っていた頑丈なフィールドを一撃で窪ませるほどであった。
しかし、当たらなければダメージはゼロ。渾身の一撃を嘲笑うように、敵は空からドンファンを見下ろしていた。
「がむしゃらで来てもそれで来ても、避けてしまえば何の意味も成さない。私のネイティオに空を飛ばせたことは、賞賛に価するがね」
「………………」
テレポートの使用を抜きにしても、あのネイティオは速い。
ネイティオは一瞬の動作によって、ドンファンの攻撃から上空へと逃れたのだ。
「空を飛ぶ攻撃だ」
余裕綽々の微笑みを浮かべながら、イツキはとどめの攻撃を命じる。と、ネイティオは加速もつけずにドンファンに向かって急降下してきた。
「……強い」
まもるの指示を送る隙すらなかった。
彗星の如く繰り出された超スピードの一撃は避けようもなく、ドンファンの身体を容赦なく貫いた。
そしてドンファンは力なく横向きに倒れ、動かなくなる。何のダメージも与えられず、戦いに敗れたのだ。
これはドンファンが弱いと言うよりも、ネイティオが規格外に強すぎると言った方が正しい。この結果は必然にして当然だった。
「大人気ないと罵ってくれて構わないよ。相手が誰であろうと、私のネイティオは負けない」
ネイティオがゆっくりと着地する傍らで、イツキは非情とは言えるが冷酷とは言えない顔でのび太を見下ろす。
彼の視線を気にしながら、のび太は労りの言葉と共にドンファンを回収する。
(想像より強い……ここまで通用しないなんて……)
もしポケモン世界に行く前の彼であれば、この時逆上するか動揺するかのどちらかだっただろう。
しかし、今は非常に落ち着いていた。これも間違いなく、修行の成果である。
『自分よりも強い相手が現れた場合、その時は素直にその力を認めた方がいい。
絶対に負けると思う必要はないが、絶対に勝つと意気込んで、気持ちだけで挑むのはオススメ出来ない。勝てる確率はあまりに低いし、何よりポケモンの信頼を失うからな』
師は言っていた。
だからいかなる時も冷静さを忘れるな、と。
勝ちたいと思う気持ちは大切だが、気持ちだけで勝てるほどポケモンバトルは単純ではない。心を落ち着かせ、不測の事態にも動じない冷静さが最も必要だと彼は言っていた。
それは言葉より簡単ではなく、師自身がその極みに到達するまでは五年以上も時間が掛かったらしい。
天才肌の彼ですらそれほど手間取ったのだ。ポケモンを始めて一ヶ月も経っていないのび太では、到底及ぶ筈がない。
元々冷静な性格ではないのび太は時折挙動不審になったり、小さなことで動揺したりする。
しかし、彼はここ一番の時には実力以上のものを発揮する変わり者だ。
今彼は、一時的ではあるが師の言う「極み」に半歩足を踏み入れていた。
「よし」
自分のポケモンが倒されたというのに、のび太は笑っていた。
予想に反した彼の反応に、イツキは不思議そうな顔をする。
「おかしな子だね。手も足も出なかったというのに、どうして笑っていられるのかな?」
「お前をやっつける準備が出来たからさ」
「ほう……」
チラッと、のび太は横目を走らせる。
金色の眼をした華奢な少女の姿が、いつの間にか彼の隣にあった。
そして彼女の傍らでは、ネイティオに倒された筈の炎ポケモンが、傷一つない姿で佇んでいた。
「待たせたわね」
ドンファンがネイティオと戦っている隙に、フィールド外にてツバサが瀕死状態からバクフーンを完全治癒したのだ。
もう少し時間を稼ぎたかったところだが、二匹目のポケモンを出すまでにはなんとか間に合った。
のび太はモンスターボールを取り出し、バクフーンと並列させるようにポケモンを繰り出した。
「バクフーンと、ピカチュウか……」
ツバサのバクフーン、のび太のピカチュウと、共に彼らにとっては最初に手に入れたポケモンだ。
バクフーンを見たイツキは意外そうな顔でツバサに問うた。
「私が言った時は回復を嫌がっていたのに、心変わりかな?」
「まあそんなところよ」
ともかくこれで二対一という有利な状況を作ることに成功した。
気のせいか、ツバサの横顔が活き活きしているように見える。
「のび太、私のバクフーンが撹乱するから、お前は隙を狙って電気技を」
「わかった」
視線を敵のネイティオに戻し、のび太は心の中で深呼吸をする。
敵がネイティオの他にもう一匹ポケモンを出してくる可能性は高い。故に、彼はネイティオだけでなく、トレーナーであるイツキからも目を離さなかった。
ネイティオだけで十分とでも言うのか、ピカチュウとバクフーンを前にしてもイツキは数を合わせようとしなかった。
両腕にはセレビィが抱き抱えられているが、戦闘要員としては彼の方も数えていないだろう。
(なめられたものね……)
あのネイティオは確かに物凄い強さだ。見立てのレベルは四十後半から五十と見る。
しかし、ネイティオは耐久能力に優れているわけではなく、攻撃が当たりさえすれば勝機はある筈だ。
隙を突いて、効果抜群の一撃を叩き込む。
「バクフーン、スピードスター!」
隙は待っても生まれない。必中の技を仕掛け、ツバサは牽制をかける。
しかし、
「その程度の技……」
ネイティオが一睨みしただけで、バクフーンのスピードスターは到達前に消滅する。後ろで隙を窺っていたピカチュウも、これでは攻撃しようにもなかった。
「なら!」
アイコンタクトを取り、ツバサは口に出すまでもなくバクフーンに指示を出す。
その場所からバクフーンの姿が消える。超速の攻撃、電光石火を使ったのだ。
ネイティオは翼を羽ばたかせ、宙に逃れようとするが、バクフーンのスピードが勝り攻撃は命中する。
僅かに体勢を崩したように、ツバサには見えた。
「ピカチュウ、10万ボルト!」
間髪入れずのび太が指示する。エスパータイプだが飛行タイプでもあるネイティオには、その攻撃はダメージ二倍だ。
直撃すれば大ダメージになりえないが、しかしテレポートによって回避される。
だが、ツバサはその動きを計算していた。
「そこよ!」
ツバサは持ち前の第六感で予測した出現ポイントを指差し、火炎放射を命じる。
やはり正しく、予測した場所にネイティオは現れた。
しかし、そこに居たのはのび太のピカチュウだった。
「ば、馬鹿! 避けなさいっ!」
ネイティオはバクフーンからピカチュウを挟んだ位置に現れたのだ。イツキの指示なのかネイティオ独自の判断なのか、賢しい真似をする。
のび太のピカチュウは驚きながらも紙一重でかわしてみせるが、ネイティオにもかわされてしまった。
くっ、とイツキが苦笑する。
「おやおや、相方に優しくないね」
「のび太! 攻撃する時以外もピカチュウの動きを止めさせないで!」
「う、うん。ピカチュウ、高速移動でネイティオの周りを走って!」
隙を窺う為とはいえ、その場に留まっているとテレポートの為の良い障害物になってしまう。素早く相方に指示を出し、バクフーンへの指示も忘れない。
イツキの戯れ言に構っている暇はない。
「バクフーンを右から回り込ませる。ピカチュウは左から、挟み撃ちにするわよ」
「うん……ピカチュウ!」
彼女の耳打ちにのび太は快く頷く。戦いにおいては全幅の信頼を置いているのだろう。
作戦はツバサが提示し、のび太はそれに合わせる。訓練されていないマッチバトルだが、形にはなっていた。
作戦を提示するツバサの責任は重大だ。
「バクフーン、スピードスターよ!」
「懲りないね」
バクフーンが放つ高速の星弾を、再びネイティオが念力で相殺する。
攻撃を命中させられるほどの隙は生まれないが、バクフーンが駆け出せるぐらいの隙は生まれる。
バクフーンは四足歩行で走り、猛スピードで右側から回り込んでいく。
「やはり速いね、君のバクフーン。だけど……」
左側へ背面飛行することで間合いを維持し、ネイティオは次にバクフーンから放たれるであろう攻撃に備える。
しかしその方向には、バクフーン以上のスピードで迫ってくるポケモンが居た。
「なるほど。左右からの挟み撃ちってわけだね」
左右に逃げ場はない。前後の移動ならいくらでも対処出来るし、テレポートしようものなら瞬時にツバサが出現ポイントを予測し、バクフーンの火炎放射が襲いかかる。
高速移動を詰んだピカチュウのスピードからして、今度はその身を盾にすることは出来ない。
動き回らないトレーナーを盾に使ってテレポートしてきたとしても、その程度のことは予測すれば問題ない。のび太もバクフーンの攻撃にまんまと当たるほどマヌケではない……筈だ。
つまり、ネイティオに逃げ場はないのだ。
ツバサはのび太にアイコンタクトを取る。そして二人は同時に命令する。
「火炎放射!」
「10万ボルト!」
ネイティオを追い詰めた二匹は互いに得意技を放ち、作戦通り挟み撃ちにする。
左右前後に逃げ場はなく、ならば空へとネイティオは急いで上昇する。
それこそがツバサの狙いだった。
「行きなさい、ヨルノズク!」
空に逃げられたら攻撃オプションはほとんどない。しかし、同じく翼を持つこのポケモンは別だ。
ネイティオの軌道を読んだツバサに、空中へと投擲されるモンスターボール。
その中から茶色の鳥ポケモンが飛び出し、ネイティオの向かう方向に先回りする。
「ヨルノズク、突進!」
三匹目の登場は流石に予測出来なかったのか、突如目の前に現れた鳥ポケモンによって、ネイティオは諸に攻撃を受ける。
鈍い音を響かせた後、一時的に飛行不能になった無表情の鳥ポケモンは重力に従って墜落していく。
その先に待っていたのは、バクフーンの火炎放射とピカチュウの10万ボルトだった。
次の瞬間――
電気と炎の混じった爆発が巻き起こる。
ヨルノズクの突進は確実にダメージを与えた。
それによって、ネイティオは完全に体勢を崩した。
あれではテレポートも、まもるも使えなかった筈だ。
爆煙が晴れるまで気を抜くつもりはないが、ツバサは攻撃の直撃とネイティオの戦闘不能を確信していた。
のび太に至っては微かに笑みすら浮かべている。ポーカーフェイスが大事だと教わっているだろうに、やはり性格なのか、喜びを隠し切れていなかった。
これまで冷静に冷静のフリを重ねていた彼だ。強敵を倒したことで糸が緩んでしまうのも仕方ないのかもしれない。
「……マヌケな顔になってる」
「こういう顔なのっ!」
「……ピカチュウに命令している時はかっこよ……もっと引き締まっていたわ」
「うん、気をつける」
「……なに言いかけてるのよ私……」
「ん?」
「目の前に集中する!」
認めたくはないが、ポケモンバトルに集中している時の彼はとても良い顔をしていた。
頼りになる、とかそういうわけじゃない。まだまだ挙動が怪しいし、改善すべき点は沢山ある。
なのにどうして、格好良いなどと思ってしまったのだろうか?
常時マヌケ面のコイツが。
『雑念があるぞ』
「――! そ、そんなわけない。今はアイツを倒すことしか考えていない。考えちゃいけないんだから」
『…………そうだな』
時が時なら何か言いたかったのだろうか、数拍の沈黙の後、ホウオウは彼女の言葉を肯定した。
10万ボルトと火炎放射の正面衝突は、凄まじいエネルギーを発生させた。いかにレベルの高いポケモンでも、今の二発に挟まれればひとたまりもないだろう。
風に煽られ、爆煙が晴れていく。
ツバサ達二人にとって、それはネイティオの瀕死の確認だった。油断大敵と言うが、あれだけの攻撃を受けて尚も戦闘可能とは考えにくい。
事実、直撃を受ければ瀕死は免れなかった。
直撃を受ければ。
「あっ……」
爆煙が晴れた場所にあるもの。それを見て、まず最初にのび太が声を上げる。ツバサも驚愕を隠せなかった。
――ネイティオは無事だった。
ネイティオのその身を包み込むように、浅緑色の妖精が傍に寄って巨大な球状の障壁を張っていたのだ。
「今のは良い狙いだった」
つい先ほどまでそのポケモンを両腕に抱えていた筈の男が口を開く。
「三匹目のポケモンは、少し予想外だった。私も驚いたよ。三匹掛かりとはいえ、まさかネイティオを追い詰めるとは……」
二割の感心と一割の驚きと、七割の余裕が見えるその顔。
四天王のオーラというものが、そこにあった。
「そしてあの火炎放射と10万ボルトの威力……セレビィが間に入ってまもるを使わなければ、ネイティオはやられていたよ」
ツバサがヨルノズクを加勢させたように、イツキもセレビィを加勢させていたのだ。
間一髪というタイミングだった。
セレビィを向かわせるタイミングが後一歩遅れていたら危なかった、と彼は続ける。
「君達は強い。二人が同時にかかって来ると、流石に脅威だ」
透き通るようだった声色がそこで濁る。
口元は笑っているが、目は笑っていなかった。寧ろ、怒りすら見える。
「おかげで少し思い出してしまったよ。ポケモンバトルの楽しさというものを……」
微かに声が震えているのをツバサは感じた。恐らくのび太も同じことを感じているだろう。彼の表情は恐怖を堪えようと引きつっていた。
「二度と思い出したくなかった……虐待を指示して楽しむような、あの高揚感は……」
イツキが両の手を握りしめ、肩を震わせる。静かなその迫力に、ツバサは圧された。
「負けるわけにはいかない……絶対に負けるものか俗物共っ! 貴様らに受けたポケモンの屈辱、倍にして返してやる! 抵抗したければするがいい!」
彼最強のポケモン、ネイティオに傷を付けられたことが原因だろう。この瞬間、激昂と共にイツキのポーカーフェイスは崩れ去った。
それこそが彼の地なのかもしれない。本性を引き摺り出せたのだから、先の攻撃は無駄ではなかったと思う。
変わらず、ツバサは冷静に対峙する。
「お前がどうしてそこまで自分の計画に拘っているのかなんていうのはどうでもいい。でも、ポケモン愛護もそこまで行くと迷惑よ」
「人が神を信仰するのと同じさ。ポケモンに支えられて生きてきた人間達は、ポケモンを愛でる義務がある! だが、君達はポケモンに何をしてきた!?」
「ポケモンを大切にしないから人間が憎い。だから人間を恨むっていうのは勝手だよ。それに、ここはポケモンに関係ない世界だ! なんで巻き込むんだよ!」
「確かにこの世界には関係のない問題だ。君達には何の恨みもない。だがポケモンを救う為……犠牲になってもらう!」
憎悪を込めた声で言い放ち、それと呼応するようにネイティオが動き出す。セレビィはイツキの元に戻り、彼の身ごとネイティオを守った時と同じ球状の障壁でその身を覆った。
まるでこれから繰り出す大技から、巻き添えを避けるように。
「ゆけ、未来予知!」
恐ろしい威力を持ったエネルギー波がどこからともなく現れ、フィールドに居るネイティオ以外のポケモンに襲いかかる。
それも一射だけでなく、二射、三射四射と立て続けに、絶え間なく雨のように降り注いできた。
フィールドに着弾する度に大爆発が起こり、足元が激震する。
まるで流星群だ。サイコキネシスすら上回る超威力の攻撃は視界すら妨げ、自分のポケモンがどうなったかすら判らなかった。
「くっ……一体どれだけの攻撃を未来に予知したっていうの!?」
今まで積極的に攻撃を仕掛けてこなかったのは、全てこの時の為?
降り注ぐエネルギー波の雨はトレーナーの居る場所すら巻き込んで爆音を轟かせる。
揺れに堪えきれなかったツバサは思わず倒れそうになるが、後ろに回った黄色いTシャツの少年がそれを支える。
「の、のび太……!」
「何なのこれ……」
『奴は痺れを切らした。空間の神を待つ前に我々を滅ぼす気だ』
「そんな……うわっ!?」
エネルギー波を浴び続けたフィールドに巨大な穴が空き、そこからひびが広がっては地割れのように崩れてく。
二人の足元にも亀裂が走り、この屋上全てが崩壊するのも時間の問題だった。
「ツバサちゃん、どうしよう……」
未来予知攻撃は依然勢いを休めることなく続いていく。助けを乞うような彼の目に、ツバサは強い口調で言った。
「私の傍から離れないで!」
黄色いTシャツの裾をギュッと握りながら、のび太の顔に顔を近づけて言った言葉だ。
その言葉にのび太は顔を赤らめるが、何を勘違いしているのか。
ゴールドボールに居るホウオウの力が及ぶ範囲なら、この未来予知の雨を直接浴びずに済む。ボールの内側から、ホウオウが彼女らを覆う障壁を展開しているからだ。
だからそう言ったのだと気づいた時、のび太はどこか残念そうな顔をしていた。
だがその顔はすぐに強張る。
足場の崩壊と共に、バトルフィールドは屋上ごと原型を失った――。
投下終了。そろそろイツキ編大詰め
次回はネイティオとの決着
乙、出木杉の謎のウザさwwww
イツキはまだポケモンたくさん持ってるはずだがもう大詰め来るか
お願いします
すでにAAで前スレ埋まってるみたいだな
ずっと昔にこのスレで見たねあのAA
投下します
――静かだった。
静寂の夜、辺りに舞う多量の砂ぼこりの臭いが、少年の鼻孔を刺激する。
「う……ううっ……」
喉から絞り出したうめき声。ゆっくりと目蓋を開くと、のび太は視界の内に見覚えのない光景を見た。
――ここは……どこ?
少しばかり気を失っていたのか、記憶は曖昧だ。数秒間の沈黙を経て、彼は現状況を把握する。
――そうだ。ネイティオの未来予知で……
まるで流星群のように降り注ぐエネルギー波の雨、嵐とも言うべきか。
それが手当たり次第フィールドを破壊し、さらにはのび太達の足場まで崩した。
やがて屋上そのものが崩壊して――という瞬間までは、記憶にある。
辺りを見回せば、瓦礫の数々。
しかし頑丈に作られていたのか、ビル全体が崩壊することはなかった。
崩れたのは彼らが居た屋上だけで、ここは屋上より下のフロア。無論屋根はなく、直に夜闇の空が見上げられた。
そして何より……
「ツバサちゃん!?」
自分の身に覆い被さっている、小さな少女の身体。白いワンピースは砂ぼこりに汚れ、肌身離さず被っていた帽子には穴が空いている。
「そんな……僕を庇って……!」
両目は閉じたまま、しかしその手は彼のTシャツを掴んでいた。
彼を自分の傍から離さないように、守ってくれたのだ。
「ごめん……僕が足を引っ張って……」
俯きながら一言ずつ謝り、のび太は自身への怒りを覚える。
何がツバサちゃんを手伝うだ。
結局、何も出来なかったじゃないか……!
彼女を手伝うばかりか自分のせいで怪我させてしまったという罪の意識が、彼の心中に渦巻いた。
その時。
「……バカ……」
「……えっ?」
のび太の腕に抱えられた少女が目を開け、ゆっくりと身体を起こす。
驚いた表情は一瞬で歓喜のそれに変わる。
「自惚れるんじゃないわよ。お前のせいでどうにかなるほど、私は……」
のび太のTシャツから手を離し、自分の脚で立ち上がろうとするツバサ。
しかしその途中、電気に痺れたような苦悶の表情を浮かべ、再びのび太の身体に身を預けた。
「だ、大丈夫!?」
「……ホウオウ、治療をお願い」
『……うむ』
握りしめた金色のモンスターボールから優しい光が広がっていき、彼女の身体を包み込む。苦悶の表情が徐々に楽になっていく様子が見て取れた。しかし、相変わらず明るさはない。
のび太の元から退き、今度こそ身体を起こす。それに続いてのび太も立ち上がった。
「バクフーンとヨルノズクはどうなったの?」
『どちらともここから離れた位置に居る。バクフーンはまだ動けるようだが、ヨルノズクは……』
「……後で拾ってあげないとね」
「僕のピカチュウは?」
『気配は感じる。しかし、同じくここから離れた位置に居るようだ』
「そう……」
バクフーンやヨルノズクやピカチュウと、それぞれ離ればなれになってしまった。ツバサは状況を重く見ているようだ。
「のび太は今、ポケモン持ってる?」
「一匹だけだけど」
懐から取り出したモンスターボールを見せ、のび太は問いに答える。
今の彼女には戦えるポケモンは居ない。彼が持つ一匹のポケモンだけが、現存の戦力だった。
今イツキに襲撃されたら一貫の終わりだ。そういったネガティブな思考が二人の頭に共通して浮かび上がる。
そんな時ほど思いは現実になるものだ。
巨大なバリアボールを纏った妖精と共に、赤紫色の髪の青年が宙から降りてきた。
「よく生きていたね。ホウオウの力かな?」
「イ、イツキ……!」
「くっ……」
妖精の力で浮遊していた彼は、バリアボールの消失と同時に瓦礫の上に降り立つ。無論、その傍にはネイティオの姿があった。
「ネイティオの未来予知のお味はどうかな? 今回はフルコースだよ」
「ええ、とっても美味しかったわ。目眩がするほど……」
「ふふっ、いい加減、自分の愚かさに気づいたみたいだね。私に挑んだその時から、君は間違っていたんだ」
リアルな死の恐怖を感じているからなのだろうか、心臓の鼓動が早い。
敵がここまで圧倒的な火力を有していたとは予想外だった。
「これだけ暴れれば空間の神も私達の存在に気づいただろう。
だから君達にもう用はない。さようならだ」
冷酷無比な眼差しで、彼はこちらを見据えてくる。隣に居るツバサは金色のモンスターボールに手をかざしながら、彼の瞳を睨んでいる。
のび太は意を決し、その手に持つモンスターボールを放り投げた。
「いけ、リザードっ!」
悪あがきぐらいはしてみせる。
オーキド・リーフから貰ったヒトカゲは、レッドとの過酷な修行によって高速進化を果たしていた。
レベルは三十前後。期間を考えれば物凄い急成長であるが、あのネイティオとは天と地ほどの差があるだろう。
「勝てるわけないわ!」
「……それでもやるさ!」
勝ち目はないに等しい。そんなことは判っている。
ツバサの言葉はもっともだが、のび太はあえてそれを振り切った。
彼は思い出していた。
青い親友に頼りきり、堕落していた自らの生活。
すぐに諦めてしまう根性のなさ。
そして、ポケモンの世界でレッドと出会ったことを。
彼は修行の時、いつも言っていた。
『もちろん戦うだけがポケモントレーナーじゃないが、戦わないこともポケモントレーナーとは言えない』
技術でも何でもないこと。しかしポケモントレーナーにとって最も大切なことを、彼に教わった。
『負けてもいい。傷ついたポケモンは、決してお前を責めはしない』
だから絶対に――
『逃げるなよ、野比のび太』
目の前の戦いから逃げるなと。
己の勇気を信じろと――。
骨川スネ夫は見てしまった。
見てしまってはいけないものを、はっきり見てしまった。
いや、見ただけではない。視覚だけでなく、聴覚、嗅覚、全てがその空間を知覚していた。
何故、こんな場所に迷い込んでしまったのだろう?
僕はただ、ビルを離れた後はジャイアン達と合流しようとしただけだ。
なのに一体……そしてここはどこなんだ?
「僕は何を見ているんだ……?」
そこはまるで夢の世界のように幻想的で、非現実めいた世界だった。
彼だけでなく、彼を乗せたゴルバットも同じく困惑している。
困惑だけでは済まない。スネ夫もゴルバットも、不可思議なこの世界に対し、はっきりと恐怖を感じている。
「ゴ、ゴルバット。僕を離さないでよ!」
空は本来の世界のように闇に包まれている。が、それは「空」として認識していいのか判らない。
最も似ているのは、宇宙空間だ。
しかし、この世界が非現実的だと思わせる部分は、決してそれだけではなかった。
世界は壊れていた。
大地が存在せず、地面の片割れがスネ夫の頭の上や足の下、至るところに浮かんでいる。
草も木も海も確かに存在していたが、木の上に海があったり、地面の下に山があったりと、次元の法則が完全に乱れていた。
まるで宇宙空間に地球の残骸が散らばっているかのような光景は、異様を通り越している。
何よりこのざらざらした空気が気持ち悪い。
「どうやったら帰れるん……だっ!?」
その時、空気が揺れた。
空気だけでなく、ここにある全てのものが、激しく震動する。次元そのものが震えているのだ。
さらに、突如スネ夫の頭蓋内で脳が暴れ出すような激しい痛みが走った。
「うっ、ううう……! あ、頭が……痛いっ……!」
両手で頭を抱え、スネ夫はうずくまる。
彼を乗せているゴルバットも彼ほどではないが、頭痛を感じているようだ。
「あああああああああっっっ!」
何なんだ、この痛みは。
何なんだ、この恐怖は。
怖い……怖いよ……。
助けて……誰か助けて……!
――うっすらと目を開いた先に、彼は見た。
全身に紅い光を纏った白い竜と。
この世のものとは思えない禍々しい闇を纏った、白銀の竜の姿を。
それを見た瞬間、頭痛からか、もしくは恐怖からか、スネ夫はゴルバット共々意識を失ってしまった。
後に目が覚めた時は元の世界に戻っていたが、この世界で見たものは全て忘れていた。
その世界に迷い込んだという事実すら、彼の記憶には存在しなかったと言う――。
触れることすら叶わず、赤い小竜はネイティオの念力によって吹き飛ばされてしまう。
のび太は大量の汗を流しながらも集中力を途切れさせず、ツバサはそんな彼の戦いを祈るように見守っていた。
ただ一人、イツキだけが笑っている。
「大人しくしていれば、すぐに楽にさせてあげるのに……人間は強情で困る」
力加減しているらしく、ネイティオはリザードに対し、サイコキネシスを一切使っていない。
より良い方法でのび太の心をへし折ろうとするイツキの意図に思える。
だが、彼もリザードの目も勝利を信じた輝きを失ってはいなかった。
「リザード、火炎放……」
「遅い」
リザードが口を開けた瞬間、ネイティオがテレポートで背後に回り、その首筋に翼を叩きつける。
衝撃でうつ伏せに倒れるリザードだが、拳を握り、再び立ち上がろうとする。
しかし、ネイティオとイツキはそれすら許さなかった。
腰を上げたリザードに念力を浴びせ、今度は瓦礫の山へと吹き飛ばす。リザードの低い悲鳴が上がる度にのび太の顔が青ざめ、ツバサが見ていられないと顔を背ける。
「どこの世界でもポケモンポケモンと……」
イツキの魂が乗り移ったかのようだった。自らも特殊な超能力者であるイツキは、その精神をエスパーポケモンとリンクさせることが出来る。
本当の意味で本気になった時、彼が用いる彼にしか出来ない戦術だ。
ネイティオは歩いて瓦礫の山に近寄ると、サイコキネシスを使ってそれらを薙ぎ払う。
手荒い清掃を受けたことで山に埋もれていたリザードが姿を現すが、身体は倒れたまま動けず、ネイティオを睨んでいるだけだった。
「まだ戦う気か。ポケモンの為に楽園を創ろうというのに、何故抗う……」
イツキが足を動かし、ネイティオの傍に歩み寄る。その目で直にリザードの姿を見下ろす為だろうか。
「リザードっ!」
堪らず、のび太は駆け出した。
ぐったりした我がポケモンの元に寄ると、その身体を抱え込むように手を添えた。
「ごめん……! 無理させてごめんよ、リザード……!」
赤い身体は恐ろしいほど傷だらけだった。それを間近で見た時、のび太は呪う。
こうなることが判っていたのに戦わせた、愚かな自分を。
「君達ポケモントレーナーはいつもそうだ。自らが充じる為にポケモンを戦わせ、そのくせ傷つく痛みを知ろうともしない。
だから勝手だと言うのだよ、少年」
背後から冷たい声が突き刺さる。
イツキという男が何故ポケモンの楽園を創ろうと考えたのか、そして彼の心情が、今なら判る気がする。
だが認めない。認められない。
それはポケモンと共に生きること、戦うこと、わかり合うことを否定することになるから。
「明くる日も人間から逃げ続けなければならないポケモンの苦しみと恐怖を、君は考えたことがあるかい? 君もそうだ、ヒビキ・ツバサ」
両腕に抱いたセレビィを撫でながら言うイツキの顔は、悲痛に満ちていた。のび太は何も言えず、口をつぐむ。
「トレーナーのレベル上げの糧とされた野生ポケモン達の気持ちがわかるか? それでも必死に自由を求め生き続けている者の思いがどんなに強いか、君達には理解出来るのか?」
「わからないわよ、そんなの!」
「そうだ、わかる筈がない。君達は、特に君はポケモンに対する本当の愛を学ばぬまま成長し、ポケモンを手にしたのだから!」
「だから何だって言うのよ! 私はポケモンを傷つけたくて傷つけてきたわけじゃない!」
ポケモンと共存する世界で生きてきたツバサは、彼の言葉に対して強く反応していた。
しかしイツキは冷徹に返す。
「傷つけたくて傷つけたのではないとしても、結果としてポケモンは傷ついている。過程ではないんだ。罪のないポケモンが傷つけられなければ成り立たない世界を、私は認めない」
憂いを帯びた目で、今度はのび太の方に向いた。
リザードを抱きしめながら、彼はきつく睨み付ける。
「少年。私は何も、この世界の人間を滅ぼしたいわけではない」
「えっ……」
イツキの口から吐かれた予想外の言葉に、のび太は思わず間の抜けた声を漏らす。
この世界をポケモンの楽園に変えることが彼の目的だ。それはこの世界から全ての人間を滅ぼすことになるのではないのか。
「確かに結果としてそうなる確率は高い。しかし、それはあくまでここの人間達がポケモンと共存出来なかった場合だ」
「…………………」
「野生ポケモンの中には人を憎む者も居る。しかし、大概は温厚で、自ら危害を与える者はそう居ないだろう」
他者を説得するような丁寧な口調でイツキは続ける。のび太は無言で聞き入っていた。
「だから人類が滅ぶかどうかは君達に関わっている。君達から歩み寄れば共存出来るかもしれないし、血を流すことなく理想的な楽園を創り出せるかもしれない。
人間が野心の塊である以上、極めて低い確率だけどね」
既にポケモンと人間の誤った関係が定着してしまった彼らの世界では、本当の意味での共存は不可能だ。
だが、元々ポケモンが存在していなかった世界なら、人とポケモンで共存出来るかもしれない。完全にゼロから始まる以上、融通はいくらでも効くのだ。
だから……とイツキは言う。
「要するに君達次第さ。共存しようとする努力がなければ、ここの人間達は野生ポケモンによって滅ぼされ、そしてポケモンだけの楽園が誕生する。つまり私は、君達に全てのポケモンを託したいんだよ」
「託す?」
「私の世界の人間はもう無理だ。共存する気など誰にもなく、ポケモンに一方的な従順関係を強制するだけだ」
「自分達の世界じゃポケモンを幸せに出来ないから、僕達に任せようって言うんですか……?」
「そうなるね。まあ、既にポケモントレーナーになってしまった君は、もう彼女と同類ということで生かしておけないけど」
抱えたリザードの上体をゆっくりと下ろし、のび太は立ち上がる。
顔を上げ、そして今までよりも強い眼力でイツキを睨んだ。
「……あっちでコトネさんから色々聞いた時、人間とポケモンって、そんなに上手くやれていないんだなって思った。
ポケモンを苦しめる馬鹿な人がたくさん居るって知って、頭に来た。だけど、そんな人だけじゃないんだ……」
彼の言いたいことは判る。彼の本当の思いも。彼がただの悪党ではないということも、言葉を聞いて理解した。
だから今度は自分に言わせてほしい。
「お前なんかよりもずっとずっと立派な人が、たくさん居た!」
少なくとも真剣に考えている者が居た。
どうすればポケモンと理想的な共存が出来るのか、どう教育すれば正しいポケモントレーナーを生み出せるのか、彼らは本気で考え、「自分達の世界」で実行しようとしていた。
少なくとも、彼のように他の世界へ逃げようとする者は居なかった。
皆、信じていたのだ。自分達なら自分達の世界を楽園に出来ると。
だから立派だ。
こんな奴よりも、遥かに!
「出ていけ!」
尋常ならざる気迫を纏い、のび太は一歩踏み出す。エスパーであるが故に敏感に感じたのか、イツキは無意識でありながらも怯えるように一歩後退した。
「出ていけ! ここは……僕達の世界だ!」
勇気無き疫病神をのび太は拒絶した。
のび太の気迫に圧されたイツキはさらにもう一歩後退するが、彼に戦えるポケモンは居ないことに気づき、表情に余裕が戻る。
「出ていくのは君の方だ。私が創造する楽園に、君は危険すぎる。ポケモンの為に消えろ、少年!」
「――!?」
のび太の身体に電撃が走るような激痛が走る。
ネイティオの攻撃、念力を生身で受けてしまったのだ。
「のび太っ!」
ツバサの悲鳴が耳に入る。
そうか、とのび太は悟る。
(……死ぬ……の……?)
念力を受けた肉体は宙に投げ出され、足場は遠い。
ネイティオの念力が彼の身体をビルの頂上から外へと吹き飛ばしていったのだ。
高度は約五十メートルにも及ぶ。そんな場所から地面に落ちれば、まず命はない。
しかしそんな状況でも、気分は晴れやかだった。
イツキに言いたいことを言った後で、すっきりしたのかもしれない。
(……でも……まだ、死にたくないよ……!)
まだやりたいことが山ほど残っている。
ドラえもんと会いたい。
いつものようにママの手料理を食べたい。
友達と遊びたい。
静香ちゃんと結婚したい。
ツバサちゃんとツバサちゃんのパパを、仲直りさせたい……。
そんな単純な思いが、生への執着を持たせ続けた。
だからのび太は手を伸ばす。
落下しながら、満月にすがるように――
そしてその手を、山吹色の手が掴んだ。
「リザー……ドン?」
『のび太を助けたい!』
たったそれだけの思いが傷だらけのリザードを動かし、ビルの上から飛び下ろさせた。
のび太は手を伸ばし、助けを待っている。
リザードも懸命に手を伸ばすが、少しも届かない。
空が飛べれば……と、この短い時間の中、何度も自分の姿を悔やんだ。
その時、リザードの頭に声が響いた。
『……お前に……翼を……』
ノイズの混じったような不透明な声だったが、リザードにははっきり聞こえた。
そして幻覚か、一瞬だけ巨大な白い竜が現れたような……。
『……びたを……すく……』
のび太を救ってくれ。消えゆく白い竜は去り際に、リザードはそう言い残したものと解釈した。
言われなくてもそのつもりだ。
だから翼が欲しい。俺に、翼を――
巨大化した我が身に二枚の翼が宿っていると気づいたのは、そう念じた次の瞬間だった。
「馬鹿なっ!?」
視線の先にあるモノを見て、イツキが目を見開く。その声その顔には、はっきりと激しい動揺の色が浮かんでいた。
ツバサも驚愕を隠せなかった。
のび太を追ってリザードがビルから飛び降りたところまでは目に映っていたが、次の瞬間、白い光が煌めき、そして――
眼鏡の少年を乗せて、山吹色のドラゴンが現れた。
二枚の翼は身体よりも大きく、その身体もリザードの時よりも一回りも二回りも巨大化している。
一本だった角は二本に増え、消えることを知らない尻尾の炎は真っ赤に燃え続ける。
今ここに火炎ポケモン、リザードンが生まれたのだ。
主を助ける為、リザードから進化して。
「ポケモンが……人間を助けただと? この期に及んで、何故人間を信じていられる!?」
尤も、イツキは進化したという結果よりも、その過程に動揺しているようだった。
自分が傷つく命令をしたにも関わらず主を慕い、己の命を省みず、さらにはレベルより早く進化を果たした。
ただ彼を救いたい一心で。
『ポケモンを愛する人間と人間を愛するポケモンは、我々の時代では少しずつ増え続けている。
それは緩やかな速度かもしれぬが、お前の示す真の共存も、確実に近づいてはいるのだ』
「ならこのセレビィは何だ!? 人から追い回され、虐待を受けた! そのネイティオもエルレイドもルージュラも、人から捨てられ、裏切られたポケモン達だ!」
『善人も居れば貴様の言うような人間も居る。それが世界というものだ。故に、我々はわかり合う為、努力せねばならん』
「ホウオウ……」
イツキだけでなくツバサやのび太の脳にも響くホウオウのテレパシーには、鋼のような断固たる意志が宿っていた。
何十年も空を飛び回り、世界を見続けてきたホウオウだからこそ、説得力のある言葉が言えるのかもしれない。
「……お前は自分の世界から逃げて、その努力をしなかった。努力をこの世界の人に押し付けようとしたのね」
「黙れ……黙れ黙れ黙れっ!」
ポケモンのことを信頼し、親身になり、ポケモンもそんな彼を求める。
野比のび太とそのポケモンが、ポケモントレーナーとポケモンのあるべき姿を体現してくれた。
そんな温かなものを目にしてしまったが為に、イツキは動揺している。
最初から人間とポケモンの共存など出来る筈がないと考えていた彼だから、希望を持つことを恐れているのだろう。
「イツキ! 僕はお前を許さない!」
ツバサの傍らにのび太が降り立ち、リザードンが前に出る。それに気づいたイツキがネイティオを手元に呼び寄せる。
「……進化したとはいえ、ネイティオの相手ではない。ネイティオ、サイコキネ……何っ!?」
即座に攻撃の指示を送ろうとするイツキ。
しかし目の前のネイティオの異変に気づいた時、彼は愕然とする。
突如飛来してきた炎の渦に自由を奪われ、身動きが出来なかったのだ。
「よくやったわ、バクフーン!」
彼は既に未来予知で倒したものと思っていたのだろう。思わぬ方向からの攻撃に、ネイティオは対処出来なかった。
深い傷を負いながらも行動を可能とするバクフーンは、ツバサの前、リザードンの隣に移動する。
ツバサはのび太と顔を見合わせ、同時に頷く。
今が、最大の好機だ。
「火炎……」
「放射ぁっ!」
猛火の恩恵を受けた二発の火炎放射が同方向から同時に放たれ、互いの「赤」が混じり合う。
二発の火炎放射が同調し、一発の巨大な炎柱となった。
それはまさにダブル火炎放射。
威力はこれまで放ったどんな技よりも強大で、炎の渦に自由を奪われたネイティオに、それを避けられる道理はなかった。
灼熱の中、イツキ最強のポケモンはあえなく沈黙した。
――それと、同時。
ネイティオの沈黙と合わせるように、直径二十メートルもの巨大な歪みが空間に発生した。
投下終了
早ければ次回で今回の章が完結するかもしれません
59 :
名無しさん、君に決めた!:2011/10/13(木) 16:45:27.11 ID:8HhOnGDu0
乙!
乙!進化の展開が熱い
イツキはこれでようやく手持ちが減ってきたな
それでは投下します
量が多いので二回に分けます
異変はすぐに感知された。
通常の次元の歪みの十倍以上にもなるそれは、今のび太達が立っているビルの斜め上方向に出現した。
色は黒く、中心から渦を巻く様はブラックホールに似ている。
「ようやく現れるか……!」
イツキの唇が歓喜に歪む。この瞬間を待ち焦がれていたと言わんばかりに、彼は今まで見せたどの笑みよりも深く笑んでみせた。
「まさか……」
『遅かったか……!』
ツバサの顔とホウオウの声音は、彼のそれとは全く対照的であった。
何百という苦虫を同時に噛み潰したような、悔しげな表情。いかに能天気な性格ののび太と言えども、彼女らの様子から事態を読み取ることは簡単だった。
『空間の神が……現れる……!』
ホウオウの言葉が彼に確信を持たせる。
――間に合わなかったのか?
「くそっ、リザードン! パルキアが出てくる前に、アイツを止めるんだ!」
いや、今ならまだ間に合う。あの穴から空間の神が姿を現す前に彼を無力化させれば、彼の計画は停止する。焦りの指示が山吹色のドラゴンへと向かった。
しかし。
「ナッシー、ヤドラン。二人を足止めしてくれ」
二個のモンスターボールを同時に放ち、繰り出されたポケモンがリザードンとバクフーンに立ちはだかる。
満身創痍なのび太達と違い、イツキはまだ余力を十分に残していたのだ。
「よく見ておくがいい。この私が、全次元空間を支配する力を手に入れる瞬間を」
彼はそう吐き捨て、踵を返す。
そして巨大な次元の歪みの前へと一歩ずつ移動を始めた。
「待て! うわっ!?」
追いかけようとするのび太達の道を、敵からの攻撃が無情に阻む。
タマゴ爆弾――足止めを命じられたナッシーの技だった。
今ここで、絶望へのカウントダウンが開始する――。
空間を司る神を捕らえ、その力を使ってこの世界を新たなポケモン世界へと作り替える。
現存のポケモン世界から全ての野生ポケモンを移住させることも、神の力を持ってすれば造作もないだろう。
――やっとこの時が来た。
イツキは沸き上がる高揚を抑えきれなかった。一歩ずつ足を動かすに連れて、これまでの記憶が蘇ってくる。
彼が居た元の世界では、人間同士によるポケモンを巡る争いが、絶えず至るところで発生していた。
ポケモンを金儲けの為に悪用するポケモンマフィア、ロケット団。
ポケモンの力で地球環境そのものを支配しようとしたアクア団、マグマ団。
時間と空間を我が物にし、新たな宇宙を創造しようと企んだギンガ団。
人からモンスターボールを取り上げ、ポケモンの解放を呼び掛けていたイッシュのプラズマ団……彼らがどんな結末を辿ったのかは知らないが、あのゲーチスという男、それとは別のことを考えていたに違いない。
大方、自分以外の人間からポケモンを取り上げた後で自分だけがポケモンを使い、無抵抗な世界を征服しようとでも言うのだろう。
一度だけ見たことがあるが、あの男からは野心しか感じられなかった。
……もはや向こうの世界には、そんな人間しか居ない。
ポケモン、ポケモン、ポケモン……ポケモンポケモンポケモンポケモン……。
貴様らにはそれしかないのか!?と問いたい。
そのくせポケモンを大切にするわけでもなく、無理矢理戦わせ、傷つけている。手遅れなのだ、彼らはもう。
ポケモンバトルの強さを追い求め、戦うポケモンの強さにも過剰なこだわりを持ち始めた。
個体値厳選、タマゴの大量孵化。不良個体と判断され、捨てられるポケモン達は数知れず、二十年以上経ったツバサの世代でも未だ解決されていないと来ている。
イツキには堪えられなかった。
心ない人間達によって罪なき野生ポケモン達が苦しめられている現実が。
だから無謀とも言えるこんな計画まで押し進めたのだ。
この世界、ポケモン不在の世界に来れたのは神のいたずらか、奇跡のようなものだった。
人間から虐待を受けたセレビィと共に、平和を求めて時間を遡行しようとしたあの時。
時を渡る途中、時空の狭間にて突如としてとてつもない爆発が起こった。
セレビィとイツキはその爆発に巻き込まれ、「平和な時代へ行く」という当初の目的は失敗に終わった。
しかし怪我の巧妙か、気がつけば彼らはこの世界に居た。ポケモンの一匹も存在しない、この世界に。
そしてひょんなことから、この世界がポケモンの世界と隣接していることを知った。
丁度イツキ達が飛ばされた場所に、少し大きめな次元の歪みが広がっていたのだ。
セレビィに頼んで中を調べてもらうと、どうやらそこはポケモンの世界で、しかしイツキの居た世界から相当未来の世界であることが判った。
野生ポケモンが次元の歪みを通じてこの世界に入れることも、そのポケモン達の存在がさらに多くの次元の歪みを生み出すことも、彼は理解した。
ならば、と彼は思いついたのだ。
今回の計画を。
「野生ポケモンを本当の意味で解放する為には、こうするしかなかった。私の罪は許されるものではない。
だが、どうか許してほしい。この世界に住む罪なき人々よ……」
『マスター……』
空間の神が居るであろう歪みを前に、イツキは両手を合わせ瞳を閉じ、祈りを捧げる。セレビィがそんな彼の横顔を、憐れむような顔で覗き込んでいた。
「セレビィ、もうすぐだよ。もうすぐで私達の楽園が生まれる……」
『そしたら前までのように一緒に生きましょう。マスターがウバメの森に遊びに来てくれた、あの頃のように……』
「今度こそ君を幸せにする。愛しているよ、セレビィ」
優しく柔らかな声で掛け合い、ふっと笑んで瞳を開ける。
イツキはビルの最も高く、なおかつ目標のソレを最も近くで見上げられる端部に佇んだ。
もちろん、その手には空間の神を捕らえる為のマスターボールが握られている。
規格外の大きさの穴の中から感じる凄まじいプレッシャー。それが計画を考案した時から待ち焦がれていた伝説のポケモンのものであることを、イツキは確信していた。
うるさい二人のポケモントレーナーはナッシーとヤドランに任せておけば十分足止め出来る。
誰にも邪魔はさせない。
後はあの中からその白い姿が現れる時を待つだけだ。
待つ……だけ……?
……それで良かった筈だ。
なのに何故、白き竜は姿を現さない?
次の瞬間、彼の思惑通り、次元の歪みの中から「何か」が現れた。ポケモンのような何かが。
「……な、なんだ?」
それは思い描いた姿とは全く別のものだった。
一言で言えば、影。
実体がなく、暗黒以外の色もなかった。
言うまでもなく、それは空間の神、パルキアの姿ではない。
イツキもセレビィも驚愕を露に、見開いた目はしばらく閉じれなかった。
「影」が現した身体の部位は首と思わしきそれだけ。ただそれだけしか見えていないにも関わらず、イツキは尋常ではない威圧感を感じていた。
ただの迫力から来る威圧感ではない。
『っ!?』
「――っ!? あ゛あああああああああああっっっ!」
憎悪や無念、憤怒や妬み、嫉みに悲しみ……人が持ちうるありとあらゆる負の感情が込められたような、不可思議にして強力すぎるプレッシャー。
それが、イツキとセレビィの脳を破裂させんばかりに突き刺さってきた。
――何故?
何故パルキアではなく、この影が現れた?
何故、こんな絶望全てを吐き出したようなプレッシャーを発することが出来る?
苛まれる頭痛の中で、イツキは困惑した。完璧だった筈の計画に、最後の最後において狂いが生じたのだ。これが落ち着いていられるわけがない。
「――! 痛みが……?」
『と、止まった……?』
浴び続ければ精神崩壊の危機にあったかもしれないそのプレッシャーは、不意に放出を止める。
するとこちらに首を突き出した体勢の「影」が、後ろに居る何かに引っ張られるかのように、穴の奥へと消えていった。
“ビシャァァァァーーーーーン!!”
「影」が消える間際に放ったその鳴き声は、まるで全生命の破滅を願う魔神の叫びのようだった。
二度と聞きたくはない。
その後、「影」が現れた次元の歪みは少しずつ収縮し、やがて消えていった。
『……あれは一体……?』
「わからない……だが、あれは空間の神ではなかった……」
セレビィの問いには、博学多才なイツキの知識を持ってしても答えることが出来ない。
見当はついている。しかし――
「なんということだ……ようやくここまで来たというのに、計画が破損するなど……!」
何故だ!?
空間の神に関する知識が浅かったなどということはあり得ない。ここに来て失敗する筈がないのだ。今の気持ちを、怒りと表現するべきか。
マスターボールを握る右手の力を強め、ガタガタと肩を震わせる。
「こんな……こんなことが……!」
これが運命なのか?
空間の神を操るなど、所詮はちっぽけな人間の夢想に過ぎなかったのか?
ならば一体、これまで私は何の為に……
「終わりよ、イツキ」
絶望の淵に立たされた彼の耳に、終焉を告げる何者かの声が響く。
振り返るとそこには見慣れた噴火ポケモンと、ここまで彼に立ちふさがってきた強敵、ツバサの姿があった。
「終わりだと? 終わり……なのか……?」
ナッシーとヤドランによる足止めをかわし、ここまでやって来たのか。眼鏡の少年の姿がないところを見ると、二匹は一時的に彼一人が食い止めているのだろう。
その連係には、正直なところ感服している。二人がかりとはいえ、ここまで自分が追い詰められるとは思ってもみなかった。
「……ヤドランとナッシーは彼の相手に忙しく、今の私にはセレビィ以外のポケモンは居ない。
……そうだね、君の言う通りだ」
だが、イツキはどうでも良くなっていた。
目と鼻の先にあると思っていた計画の完遂は、あの影のポケモンの仕業なのか、わけも判らず失敗に終わった。
何故かビル周辺に生まれた筈の次元の歪みも、今は元の安定した空間に戻っている。
――全て無駄に終わったのだ。
「私の負けだ。さあ、殺すがいい。この脱け殻に、とどめを刺してみろ」
「殺しはしないわよ。気絶させて、私達の世界に連れていく。……バクフーン!」
単なるポケモンバトルならば、イツキは寧ろ彼女ら二人を圧倒していた。しかし、計画が完全に途絶えた時点で既に、敗北を喫したも同然だった。
惨めなものだ。目の前に立つ少女はこんな自分を哀れに思っていることだろう。
しかし彼女はこれまでイツキがそうであったように、彼に情けを掛けることはなかった。
彼女の命を受け、バクフーンが攻撃の体勢に入る――その時だった。
彼の両腕から、一匹の妖精が飛び出す。
「セレビィ!?」
思いがけない友の行動に、イツキは思わず声を上げる。
そんな彼に妖精は、天使のような笑顔を振り向かせた。
『マスターはこんな私に、いつも優しかった。……私を愛してくれた人間は、マスターだけだったんです』
「セレビィ、何をする気だっ?」
『……貴方だけでいいから……ずっと、幸せに生きてください』
セレビィは視線を目の前の「敵」に戻し、火炎放射を避けながら全速力で接近していく。
イツキには判らなかった。秀でた戦闘能力のない彼が、これから何をするのか。
ある程度予測出来ているのだが、彼は絶対に考えたくなかった。
最愛の友が、己の身を犠牲にしてまで勝利を得ようとしていることを。
『歌います。イツキ様の幸せの歌を……お前達にとっての、滅びの歌を!』
「なっ!?」
バクフーンの体に密着し、セレビィは歌った。
自分を含め、聴いたポケモン全ての意識を強制的に奪う、この歌を。
それはイツキとツバサの間にしか流れない細く小さな歌声だったが、「滅びの歌」の名に相応しくないほどよく透き通った美声であった。
あまりの美しさに、敵味方のトレーナーがポケモンへの指示を忘れてしまうほどだ。
『イツキ様』
「セレビィ……」
バクフーンを逃がさぬようしがみつきながら、セレビィは再び振り向いてきた。先と同じ、天使のような笑みを見せて。
『大好き』
そして次の瞬間、炎の拳を受けた妖精の肢体が、宙を舞った――。
出木杉の情報によれば、このセレビィというポケモンは種族値こそ高いがレベルが低く、大した戦闘能力はない筈だった。
現にイツキから手持ちポケモンとしての扱いは受けておらず、非戦闘要員であることはこの目で見て判った。
戦いの間に割り込んでネイティオの身を庇うようなこともしていたが、それでも大した驚異にはならないと判断していた。
だからこそ、バクフーンの火炎放射を無駄のない動きでかわされた時は驚き、隙を見せてしまったものだ。
そして滅びの歌。もしその技を使えると知っていたら、今まで放置していなかっただろう。
バクフーンの炎のパンチが決まり、これ以上厄介な真似をする前に倒すことは出来た。
しかし時既に遅く、歌の効果によってバクフーンはその場より意識を失ってしまう。
今度こそツバサは、戦うポケモンを失ったのだ。
(のび太に無理をさせたのに、私がこれじゃ……)
後一歩だった。
バクフーンが彼を気絶させるだけで、今回の事件は解決する筈だったのに。
彼女は己の無力さを呪う。
そして、それだけでは終わらなかった。
「っっ!?」
後方から突如一条の光線が飛来し、爆発と共に彼女の身体を吹き飛ばしたのだ。
(……ソーラー……ビーム……!)
宙に投げ出された体勢のまま、彼女は光線の正体を確認する。
思った通り、今の一撃は後方でのび太が相手していた筈の、イツキのナッシーによるものであった。
「がはっ……!」
墜落した彼女は窓ガラスの破片や瓦礫の散乱した床に身を打ち付け、肺から息を絞り出す。
額や腕に追った切り傷からおびただしく出血し、打ち付けた身体のあちこちからは骨の軋む音が聞こえた。
ゴールドボールに居るホウオウが障壁を張ってくれなければ、命はなかったかもしれない。
『ツバサ! 大丈夫か!? ツバサっ!』
彼女の身を案じるホウオウがかつて見せたことのない焦りを込めて呼び掛けてくる。重傷を負った彼女には、それに応えることも出来なかった。
「うううぅっ……! ぐっ!」
歯を食い縛り、両手を強く握りしめる。
草タイプ最高峰の技を、ほぼ直撃に近い形で受けたのだ。それは、彼女の人生の中で初めて感じる激痛であった。
(痛いっ……! 痛いよ、ホウオウ……!)
『待っていろ! 今治療する!』
金色のモンスターボールから癒しの光が放たれ、うつ伏せに倒れた彼女の身体を包み込む。
あらゆる現代医学を超越したその治療法によって激痛は徐々に和らいでいくが、身体は動く筈もなく、しばらく立ち上がることも出来そうにない。
イツキはこちらが完治するまで律儀に待ってくれる男ではないだろう。
うつ伏せの体勢のままツバサは顔だけを横方へ向け、浅緑色の妖精を抱き抱える一人の青年の姿を睨んだ。
イツキの手つきは優しかった。
マスターボールを懐に戻した後で、彼は抱き抱えたセレビィの頭を何度も撫でる。
見た目には大した外傷はなく、瀕死状態だというのにまるで眠り姫のような綺麗な顔をしていた。
彼はその顔に、その顔だけに聞こえる声で語りかける。
「君達の幸せを無視して私だけが幸せになるなど、私には考えられない……
……私は、諦めないよ。もう一度計画をやり直そう。たとえそれが何度失敗したとしても、必ず……楽園を創ってあげるから」
セレビィの行動で、イツキの目に希望が宿った。いや、強い責任感という表現の方が正しいかもしれない。
自分をこんなにも大切に思ってくれる友達を、どうして見捨てられることが出来るだろうか。
彼らを幸せに出来ない私に、幸せになる権利はない。
「一緒に生きよう。エルもルーもヤドもシーもネイも、みんな一緒に、幸せを掴もう……」
計画が失敗したのなら、またゼロからやり直せばいい。面倒をかけて済まないと思う。だが、約束する。
楽園が生まれたあかつきには、みんなで永遠の幸せを謳歌すると。
「……だからね」
顔を上げ、イツキは血塗れの姿でうつ伏せている一人の少女を見やる。
今の自分はさぞ恐ろしい顔をしていることだろう。この怒りは、もはや鎮まることを知らない。
イツキは喉から絞り出すような声で、叫ぶ。
「貴様だけは、ここで死ねっっ!」
「――ッ!」
ナッシーのソーラービームを受けて、痛いだろう。苦しいだろう。
だが、貴様らポケモントレーナーに受けたセレビィ達の苦しみは、そんな程度では済まない。
私が貴様を――なぶり殺してやる!
「ナッシー! ウッドハン――」
ナッシーに「ウッドハンマー」を命じようとするイツキは、この時、一つミスを犯していた。
怒りに感情を支配されているが故に、彼は周囲の状況把握を怠っていたのだ。
後方から接近してくる眼鏡の少年と一匹の電気ネズミの存在を、彼は失念していた。
「ピカチュウ! 10万ボルトっ!」
その声にハッと目を見開いた刹那、イツキの全身を金色のスパークが包み込んだ。
「ぐううううううっっ!?」
全ての皮膚という皮膚が一斉に爆ぜたような電撃が彼を痛めつける。
朦朧とする意識の中、彼は電撃を放つ黄色いポケモンと、そのトレーナーの姿を確認した。
まさかあの少年が――
私のヤドランを倒したとは……!
「う、うううっっ! ナッシー……!」
ヤシの木のような成りをした自慢のポケモンが、タマゴ爆弾を投下し、少年のポケモン、ピカチュウの身体を吹き飛ばす。
それによって電撃から解放されたイツキは、意識こそ紙一重でつないでいるものの息絶え絶えだった。
己の浅はかさ、見込みの甘さを悔いる。
トレーナーが不在とはいえ、あの少年にヤドランを倒せるような力があったとは完全に想定外だった。
「ツバサちゃんは……やらせない……!」
少年の方も息が上がっており、ヤドランと激しい攻防を繰り広げてきたことがその様子から伺える。
見たところリザードンは既に戦闘不能らしく、今の彼にナッシーを倒す力はまずないと考えていい。
だが、油断はならない。
「きっ……き……貴様あああああっっ!」
彼も彼女も、楽園創造の為にここで消えてもらう。
イツキの思考を読み取ったナッシーは、攻撃の標的を少女から眼鏡の少年に変える。
「やめてっ!」
少女の悲痛な叫びを無視し、躊躇なく放たれたサイコキネシスが手始めにピカチュウの意識を奪う。
そして当然、次の矛先は丸腰の彼に当てられる。
「……っ!」
少年は動けない。
ピカチュウを沈黙させたその攻撃はあまりに速く強力で、彼には反応すら出来なかった。
その上ナッシーの三つの顔に睨まれれば、畏縮して立ち竦んでしまうのも当然と言える。
「死ねぇぇぇっっ!!」
所詮人間など、ポケモンの前ではゴミ同然なのだ。この技は、奴にそれを教える一撃だ。
ナッシーから放たれた「リーフストーム」が、守りを失った少年に向かって一直線に突き進んでいく。
まずは一人目。
イツキは高らかに笑った。
だが……
歓喜は一瞬で恐怖に変わる。
ソーラービームを凌駕する草タイプの大技が、今目の前に迫っている。
念力のように優しくはない。
当たれば有無も言わさず人間を即死させる威力が、その技に込められていた。
これまでの戦いで精神、体力共に疲弊しきっている今の彼に、それを回避する余力は残されていない。
仮に万全だったとしても、回避出来るスピードではなかった。
(みんな、ごめん……)
覚悟を決め、のび太は襲い来る緑の竜巻と向かい合う。
だが、そんな覚悟を少女は許さなかった。
「ダメええええっっっ!!」
血に汚れた彼女は傷だらけの身体に鞭を打ち、彼とリーフストームの間に向かって飛び込んでくる。
「ツバサちゃん!?」
のび太がそんな彼女の姿を認めた次の瞬間、緑の竜巻は二人の姿を巻き込み――
しかし現れた虹色の光によって、あえなく霧散した。
「なんだ……? 何が起きた!?」
目の前で起きた現象に慄然とし、イツキは震える瞳でその場所を見張る。
リーフストームはナッシー最強の技だ。単純な威力ならば、ネイティオの未来予知をも上回る。
それが少年と彼を庇おうとした少女の姿を巻き込んだかと思えば、一瞬でかき消されてしまった。
原因は判っている。
リーフストームの直撃と同時に二人の姿を包み込んだ、あの光だ。
闇夜に煌めく太陽のような光……
「まさか!?」
虹色の光。その出現に、イツキはこの状況における「最悪」を脳裏に浮かべる。
そして即座に、彼はナッシーに指示を送った。
「構うな! 撃ち続けろ!」
焦りの色を含んだ彼の指示に不思議がりながらも、ナッシーは忠実に従い、エナジーボールを乱射する。
しかし、その全てが二人を包む虹色の光によって遮断され、無に帰る。
「……!?」
そして、変化は起きた。
光が物凄い速度で昇天し、黒い闇に一本の虹の柱が立ち上る。
それはイツキにとってある種の自然災害であった。どうしようもなく、避けることは不可能。ただ震えながら、過ぎ去るのを待つのみ。
虹の柱の中心に浮かぶ巨大な鳥ポケモンの姿を認めた時、彼はその瞳から希望を失った。
「……ホウ……オウ……」
それは、小さな太陽だった。
苛烈な威圧感を放ち、一匹の鳥ポケモンは七色の翼を羽ばたかせながら、ちっぽけな人間の姿を見下ろしている。
古来からジョウト地方に伝わる伝説のポケモン、ホウオウの顕現だった。
絶えることのない無限の光を放ち続けているその姿は、神と呼んでも差し支えない。
いかなる強者も恐れずにはいられない。そんな存在だった。
『愚かなる計画師よ』
彼の声が脳に響いた瞬間、彼は竦み上がり、全身が凍てつくような感覚に駆られる。
それでも背を向けようとしないだけ、イツキという男は大物と言えた。
「馬鹿な……君が顕現すれば、この世界の次元が……」
『ツバサが貴様に殺められるよりは遥かに良い。そうだろう? イツキ』
「あ……ああ……」
ホウオウはイツキの立つこのビルに向かってゆっくりと降下し、それによる翼の煽りを受けた周囲の瓦礫などは、始めから存在していなかったかのように蒸発し、跡形もなく消滅する。
だが、背中に乗せた少年と少女の身は無事だった。
そして、五メートルも離れていない距離に居るイツキもまた、今はまだ無事であった。
怯えながらも抱き抱えたセレビィを離さない辺り、彼のポケモンに対する愛情の強さが見受けられる。
しかし、ホウオウはそれを見ても尚、大した感傷を抱こうとはしなかった。
『あの男と約束したのでな。奴の代役として、この娘のことを守り続けると』
「く、来るな……!」
質は異なるが影のポケモンにも劣らない強烈なプレッシャーを放ちつつ、虹色のポケモンが着々と迫ってくる。
イツキのポケモン、ナッシーは動けなかった。たとえ大好きな主人の命令を受けたとしても、攻撃することは出来なかっただろう。
その理由は、主人が身動き出来ない理由と同じく「恐怖」にあった。
ああ、どうして……
どうして、こんなことになったんだろう?
『我が聖なる炎を……受けよ!』
「――!?」
翼を彼の目の前で抑揚させる。
ホウオウにとっては、その程度の動作に過ぎなかった。
たったそれだけの動作で発生した紅蓮の業火はビル一帯を周辺の土地ごとまとめて覆い尽くし、無論、頂上に居る青年も――
「わかり合いたかったんだ……」
炎に飲まれる間際、青年は小さな声で呟いていた。
「一日でも、一時間でも早く……」
浅緑色の妖精を強く抱きしめながら。
「全ての生き物が幸せになれる世界が欲しかったんだ……」
二つの瞳に大粒の雫を宿し。
「そして、私は……」
その後の言葉を言えずして。
青年の姿は、炎に消えた――。
投下終了。今夜から明日あたりにエピローグを投下します
投下します
ジリジリと照りつける太陽の下、真夏を謳歌するセミの鳴き声が、開いた窓から響いてくる。
○×小学校の夏休みが開けて早三日。海にでも出かけてきたのだろうか、日焼けしたクラスメイトの姿がちらほら目に映った。
「……以上で、僕達グループの発表は終わります」
クラスの優等生、出木杉英才が、裏山の自然をテーマにした研究内容を発表し終える。
同級生からの喝采の拍手や担任教師の満足そうな顔が、その内容の濃さを表している。
彼と研究を共にしたグループには、のび太や静香、ジャイアン、スネ夫と個性豊かなメンバーが揃っていた。
彼ら五人が発表を終えると、教卓の前からそれぞれの席に戻り、着席する。そして、次の発表者が前に現れた。
彼もまた面白い研究テーマを掲げたようだが、野比のび太の頭にその発表の内容は全く頭に入っていなかった。
上の空で、窓の外の景色を眺めている。
(……なんか、別の世界に来たみたいだなぁ)
のび太の頭を支配していたのは夏休みの思い出だった。そんな彼を見て、教師はよく「夏休み気分が抜けていない」と言うが、彼の上の空はそれとはまた違った。
夏休みに体験した出来事が、あまりに壮絶だったのだ。
本物のポケットモンスターと出会ったり、異世界に行ってそこの住人達と話をしたり、……命を賭けて戦ったり。
あまりに非現実的すぎる出来事を体験してきたことで、彼には何気ない現実が余計に退屈に感じた。
それは、親友達も同じ様子だった。
ジャイアンは椅子に座りながら足をばたつかせたり、シャドーボクシングをしたりと落ち着かない。
出木杉は黒板の問題をしっかりとノートに取っていながら、教師に答案を問われた際に「わかりません」と返し、一同の度肝を抜いた。
静香は執拗に窓の外を眺めており、のび太ほどではないにしろ何回か教師に注意されている。
スネ夫に関しては登校初日から特に元気がなく、国語の授業で音読を促された時もお経を読み上げるような低い声を出していた。
……皆、心ここにあらずという状態だ。
しばらく日にちが経てばいずれ夏休み前までの状態に戻るだろう。しかし、今はショックを隠せていなかった。
ツバサが何も告げずに居なくなったことに。
ホウオウの顕現という掟やぶりの方法を取ることによって、イツキとの戦いに勝利することが出来た。
同時に夜が明け、朝日が昇り始めた時のことだ。
ボールに戻ったホウオウから、のび太と彼女は深刻な話を聞かされた。
『我の力でイツキを葬ることが出来たが、その影響でこの世界の次元が酷く歪んでしまった。幸い、この世界そのものが崩壊することは避けられたようだが……』
話によると想定されていた最悪の結果だけは免れたようだが、それでもホウオウの顕現が次元空間に与えた影響は計り知れないらしい。
その場所に物理的な影響は見られなかったが、この世界の至るところに大量の次元の歪みが発生してしまったと言う。
それらを通じて、今後彼女らの世界から今まで以上に多くの野生ポケモン達が迷い込んでくるだろうと、ホウオウは語った。
イツキを倒したところで、大々的な問題が山積みなのだ。
「……一つ、頼みがあるわ」
「えっ?」
あの時、彼女は珍しく自分から頼みごとをしてきた。
逆さにした鞄から数十個ものモンスターボールを落とし、のび太の足元に転がす。
「私はこれから、ホウオウの力で世界中に生じてしまった次元の歪みを、補修しに行く。
その間、お前には……お前達には、この町に迷い込んできた野生ポケモン達の保護を頼みたいの」
「保護?」
『今の貴様らは、野生ポケモン達と戦える力を十分に備えている。故に野生ポケモンが人々に危害を及ぼす前に、また、人々が野生ポケモンに危害を及ぼす前に、彼らを保護してもらいたいのだ』
独裁スイッチの効果によって、今回の件が公になることは防がれた。
しかし、それはほんの一時しのぎに過ぎない。
ホウオウの顕現によって生じた大量の次元の歪みからいずれ迷い込んでくるであろう野生ポケモン達の存在が、この世界の人々の間に認知されるのはもはや時間の問題である。
世界中が大騒ぎになるのは確定事項なのだ。
ならば出来るだけ騒ぎを食い止めるようにという、ホウオウと彼女からの協力の申し出だった。
もちろん、のび太は二つ返事でそれを受け入れた。だが、一つ気になることがあった。
「……ツバサちゃんが世界中に出来た次元の歪みを補修するって、それってやっぱり……また一人で旅回るってこと?」
「――よ、余計なお世話よ! 当然私の世界に居る誰かに協力してもらうわ。だから大丈夫、お前は気にしなくていい」
「……そっか……」
突き放すような言葉を受け、今の僕でも彼女には着いて行けないのかと肩を落とす。
彼女はそんな彼の様子に何故かイラついた態度を取り、柳眉を逆立てて怒鳴った。
「ああ、もうなんでそんな嘘に騙されるのよっ!」
「えっ、嘘って?」
「わからないの!? 私はお前と……もういい!」
「よ、よくないよ。何なのさいきなり」
よく意味を理解出来ないその言葉に詰め寄るのび太を無視し、彼女は廃ビル跡地の地面にうつ伏せている傷だらけのヨルノズクに元気の欠片を刺す。
ホウオウの聖なる炎は対象と決めた者以外の命を焼くことはない。イツキと共に炎に巻き込まれたものの、ヨルノズクとバクフーン、ピカチュウだけは無事に生き残ることが出来た。
元気を取り戻したヨルノズクが顔を上げ、それを見た彼女の顔が緩む。
彼女がヨルノズクの頭を優しく撫で、またヨルノズクの方は彼女から寄越したその行動にしばし意外そうな顔をしながらも幸せそうに微笑んでいた。
イツキと対峙して、今まで以上にポケモンを大切にしなければならないという意識が彼女に芽生えたのかもしれない。
「……今すぐ行っちゃうの?」
一際綺麗に見えた彼女の横顔に見とれながらも、のび太は重い口を開けて問うた。
彼女はそれに対し、素っ気なく返す。
「ええ。お前がくれた妙な薬のせいで眠気は全然ないし、怪我や身体の疲労はホウオウが癒してくれた」
『睡眠を取るに越したことはないがな』
「今思ったけど、ホウオウってホント万能だね」
『ふっ、当然だ』
力が強いだけでなく、究極のドクターとしての役目も担える。その上隔てなく会話出来る相手と来れば、のび太に入り込む余地はないのかもしれない。
コトネさん、ごめんなさい。
友達にはなれたと思うけど、一緒には居られないみたいです。
でも、ホウオウが着いているからこの子は大丈夫だと思うよ。
……多分。
「旅してて、困った時はいつでも呼んで。力になるから」
「私よりも、町を守る力になりなさい」
「はは、ツバサちゃんには敵わないや」
そうだ。迷い込んでくる野生ポケモンが増えるなら、今よりもっと多くの野生ポケモン達がこの練馬区に住み着くことになる。
壮大な言い方をすれば、彼女はこの町の平和をのび太達に託したのだ。
町の今後のことを自分達に任せておいて大丈夫だと判断してくれたのはとても誇らしいし、嬉しい。
だが、寂しくもある。
「また会えるかな?」
「気が向いたらね」
相変わらずの冷たい言い回しであるが、全くむかっ腹が立たないのはそれが彼女の本心でないことがわかっているからだ。
だからのび太は笑っていられた。
「じゃあね、ツバサちゃん。出木杉君達によろしく言っておくよ」
「ええ。あと……ドラモンが帰ってきたら、そっちもよろしくお願い」
「うん、わかった。ドラえもんだよ」
彼女はヨルノズクの背中に乗り込み、指示一つでいつでも空高く飛び上がれる体勢になる。
「それと……」
チラッと彼の方へ振り向き、去り際に、面と向かって彼女は言った。
「ありがとね、のび太」
照れくさそうに、にわかに頬を赤く染めながら放った感謝の言葉だった。
どういたしましての返事も待たずして、彼女を乗せたヨルノズクは薄暗い朝の空を飛んでいく。
のび太は右手を振りながら、それを見送った――。
……あれからどうしているかな?
窓の外の空を眺める度に、のび太はあの時のことを考えるようになっていた。
学校の授業中、のび太が彼女との別れを回想していた頃と同時刻。
徐行という速度で上空を走る、一匹の茶色の鳥ポケモンの上で、少女もまた同じ時を振り返っていた。
「のび太……」
無意識に口から漏れたのは共にイツキに挑んだ眼鏡の少年の名前。
その声に彼女の心情を悟ったのか、胸元に下げた金色のモンスターボールからホウオウが気の効いた発言を寄越す。
『本当に良かったのか? あの時お前が何を言ったとしても、我は快く認めたつもりだが』
「……これは元々私達の責任。アイツは関わるべきじゃないし、何よりアイツにはたくさんの友達が居る。家族だって居るんだから」
『だから連れて行くわけにはいかない、か…… 他の誰かに協力してもらう故に助けはいらないなどという下手な嘘までついて』
「あれはアイツが嘘だと気づかないのが悪い。頭が悪いにもほどがあるわ」
『やはり、共に行きたかったのだな?』
「……ええ」
世界各地に発生した全ての次元の歪みを補修する旅。
歪みがさらに増えたことによって、もしかするとこの旅は終わりのないものになるかもしれない。
ホウオウが言うには今はまだ次元が崩壊するほどではないようだが、事態が悪化する可能性は否めない。
そうなった時は、彼らに協力を頼もう。
のび太と、その友達に。
(出木杉、ジャイアン、静香、あとあの変な髪型の奴も、頑張ってるかな……)
出木杉達に別れを告げなかったのは悪かったかもしれない。だが、今の今まで彼女はそれで正解だと思っている。
別れを告げに会いに行くと、そうすることで別れが辛く感じてしまう。
出木杉、静香、ジャイアン、スネ夫。もっと話しかければ、良い友達になれただろうか。
……きっと、彼らならなってくれたと思う。
そんな人が良い彼らだからこそ、ツバサは何も告げずに別れることを選んだのだ。友達になっても、いつかは会えなくなることが判っているから。
自分と彼らとでは住む世界が違うのだから。
『引き返すか?』
「いいの。私の目的は、全ての次元の歪みを補修することだから……」
『それは本心か?』
「ううん。自分の気持ちに嘘をつくのは、これで最後にする」
本心ではまだ彼らと同じ時を過ごしたいと思う自分が居る。しかし、彼女はあくまで目的を優先した。この仕事は自分にしか出来ないのだから、甘えてなどいられない。
覚悟を一身に背負った少女を乗せ、ヨルノズクは飛んでいく。
地平線を越え、カモメ舞う青空に出た時、彼女は胸元のボールに声をかけた。
「ホウオウ」
『なんだ?』
「私、親父のこと、まだ好きだよ」
『……そうか……』
「自分の親だもの。嫌いになんかなれない」
数秒間の沈黙が彼女らの間に流れる。心なしか、ボールの中のホウオウが笑っているような気がした。
そして今度は、ホウオウの方から話を振ってきた。
『ツバサは、旅は好きか?』
「ええ、好きよ。アイツらに会えたんだから」
旅をしなければ、のび太達とは出会えなかった。だが、それだけではない。
彼女は旅をすることで旅を好きになったわけではなく、本当はそれ以前からずっと――
「……この旅が終わって元の世界に帰ったら、ポケモンジムに挑戦しようかな。……お父さんのように……」
イツキと戦い、死の恐怖を感じたことで、自分を見つめ直す機会が得られた。自分の気持ちが本当はどこを向いていたのか、ようやく判った気がした。
この旅が終わった後のことを考えると、自然に頬が緩んだ。今度は自分の世界を旅して、出来れば父と再会したい。
そんな希望を胸に今を生きようと、彼女は決心した。
一年後、全世界に未曾有の戦乱を引き起こすことになる「災厄」の存在を知らずに――。
投下終了。
これで、のび太と七色の翼の物語は終わりになります。
伏線を回収するどころか広げる展開になった最終回でしたが、要望があれば、この後の完結編を書きたいと思います。
要望がなければ、今作で不足していた描写を補う「番外編」や、支援としてドラポケ短編小説などを書こうかなと思っています。
それと、宣伝になりますが避難所の作品の方もよろしくお願いします。
……アダムス氏まだかなー。
これだけ話を広げて続けないなんてそうは問屋が卸さない!!
続き待ってる
避難所のリンク教えて
「陰」のこともあるしまだまだ続きを読みたい!
しかしイツキ…悲しい。スネ夫と和やかに飯食ってたシーン好きだったよ…
後になってみれば、セレビィが滅びの歌さえ歌わなければ殺される展開にはならなかったんだよなぁ…セレビィもイツキを思ってのことだったんだろうけど…
乙。私も続き希望派です
しかし、最後まで名前覚えてもらえなかった二人が…まあ、らしいっちゃらしいですけどねw
俺からも続編をたのむよ
皆さんお久しぶりです。アダムスです。
このところ体調を崩してしまってしばらく投下出来ない状況が続きました。
ようやく復活しました。皆さんも体調管理には気を付けてください。
のび太と七色の翼氏乙です。七色の翼氏は避難所にも投下していたんですね。
二作品を同時に投下するのは並大抵のことではありません。
普通の人には無理です。私には絶対不可能のことを七色の翼氏は可能にしていたのには
驚いています。素晴らしいです。きっと卓越した頭脳を持っているのですね。
それでは投下します。復活したカミツレを追い詰める頭脳を持つ者……
頭脳戦です。
3
町はずれに小さな病院があった。しかし医療設備は十二分に整っている。
しかもとても清潔さを保った質の良い病院だ。
カミツレは病院のベッドで目が覚めた。
(なぜ!? 私は死んだはず……)
カミツレは目覚めると困惑した表情をして驚いていた。
私は確かにサカキに殺されたはず……なのに奇跡だ。
この奇跡に喜びを隠せない。そんな時、病室のドアを開ける音が聞こえる。
ドアが開くと二人の女が現れた。その女にカミツレは見覚えがあった。
直接会ったわけじゃないが、各地方の有名トレーナーが乗っている本に写真が載っていた。
長い髪で華奢な体型のミカンと老けた見た目のイブキ。
まずしゃべりだしたのはミカン
「目が覚めた!? 今どんな気分!?
私はミカン、隣にいるのがイブキよ。あなたはイッシュ地方のカミツレね。
私達が看病してあげたのよ。意外に早く目が覚めたじゃない。
あなたはギリギリ禁止エリアの外で倒れていたから助けられたの。
何であなたはポケモンバトルに負けたのに生きてるの?
あなたはポケモンバトルをしたということはこのゲームに乗っているの?」
ミカンは興味津津でカミツレに質問攻めをした。
カミツレはいきなり核心に迫られて動揺した。
なぜなら自分はポケモンバトルをした。それを見破られた。
つまりミカンはカミツレがこのゲームに乗っていることを疑っているのだ。
(いきなり核心に迫られたわね。ここは得意の嘘で切り抜けるわ)
ベッドから起き上がり、カミツレが必死で考えた嘘は
「実は私、ポケモンバトルをしないと殴りとばすぞと強迫されたの……。
それにこのゲームはポケモンバトルを仕掛けられたら応じないと死ぬルールがあるじゃない。
それで私……私は……わーん!」
カミツレは嘘泣きを始めた。我ながら名演技と心の中でほくそ笑む。だが、
「そう、そんなことがあったの。同情しちゃうかも。
でも、あなたがこのゲームに乗っている可能性が少しあるのは確かだわ。
そうね、あなたがこのゲームに乗っている可能性は三パーセントね」
ミカンは疑うような姿勢を見せた。カミツレは心の中で舌打ちをした。
嘘泣きが通じないとは意外と賢い子ねと思った。
(三パーセントだって? 疑っているのは確かじゃない)
ミカンが自分を疑っているのは確かだ。どうすればいい。
「これ以上、問い詰めのはやめなさいミカン!
この人は大丈夫よ。私が保証する」
イブキがミカンを叱った。思わぬ助け船にカミツレは安堵する。
賢きものいればまた馬鹿もいるってことだ。
「そうね。とりあえず疑うのは後にするわ。何か飲む?
スポーツドリンクなら持ってるけど」
そう言ってカミツレにスポーツドリンクを手渡した。
「ありがとう。助かるわ」
カミツレは手渡されたスポーツドリンクをごくごくと飲み始めた。
「じゃあ私は病院の外で見張りをしているから。
カミツレ、その子は鋼タイプのポケモンについて話すと
何時間も語りつくすから気を付けた方が良いわよ」
イブキはそう言うと病室を出て行った。
すると途端にミカンは鋼タイプのポケモンについて話し出した。
「鋼タイプってとても素晴らしいと思わない!
特に素晴らしいのはやっぱり何といってもハガネールよね。
あの美しさ、あの頑強そうなフォルム。カミツレもそう思わない?
ハガネールって進化前のイワークの時は鋼タイプじゃないのに
進化すると鋼タイプになることはジムリーダーのカミツレも当然知っているわよね。
なんであの岩の身体から鋼になるのか不思議だと思わない?
ほとんどの人の意見はメタルコートの賜物と言うけど私はそうは思わない。
私は今までの見方と違う視点から鋼タイプのポケモンを見てみたいの
あ! そうそう、他に興味深い鋼タイプのポケモンがいるの。
ルカリオってもちろん知っているわね。
シンオウ地方でとても貴重な鋼タイプのポケモンなんだけど
なんと格闘タイプという相反するタイプが付いているの。
とっても不思議、そうでしょ?」
ミカンは目を輝かせながら延々と語った。
「ええ……そう……ね」
カミツレは困惑する。それからミカンの話は実に三時間にも及んだ。
(とても変わった子ね。というより、
考えるとジムリーダーや四天王は変わり者の巣窟よね)
カミツレはしみじみ思った。
「イッシュ地方にはキリキザンという鋼タイプに悪タイプが付いたポケモンがいて……」
「やっぱり! また鋼タイプのポケモンについて語ってたわね」
怒りながらイブキがまた戻ってきた。
「ごめんなさい。喋りすぎた様ね」
ミカンは反省の態度を取った。
さすがのカミツレもミカンの話に疲れをみせていたので
イブキに感謝した。
(ミカンの話し長すぎ……正直疲れたわ。
イブキが戻ってくれて助かった。まず現状を把握しないと)
今の自分のエモンガは戦闘不能……これが一番重要だ。
ポケモンがいないと優勝出来ないからだ。
どうすればいいか、思案するうちに良い方法を考えた。
適当な話しをして隙を見てイブキとミカンの腰に付いている
ポケモンが入ったモンスターボールを奪う。
(大丈夫だわ。私なら必ず出来る。私は百メートル走十一秒台の俊足……。
逃げ切れるわ! まずは適当な会話から初めて)
「イブキ、ミカン。『新プラズマ団』て知ってるわよね?」
カミツレが選択した話題は元の世界で話題になっている組織のことについてだった。
実はカミツレはこの組織の考えに賛同している熱心な信者だった。
「ええ、もちろん知っているわ」
「プラズマ団は崩壊したけど、新たにNが立ち上げた組織ね。
無能な人間からポケモンを解放し、
選ばれた人間のみポケモンを所有するという考えを持った組織。
イブキとミカンが言った。
「実は私、Nの考えに賛同しているN信者なの。
よく聞いて。この世の中、人間は必ずしも平等ではない。
有能な人間、無能な人間それぞれ。無能な人間は社会にとって害悪でしかない。
そんな人間に使われるポケモンが可哀そうだわ。事実、本来強いはずのポケモンが、
無能な人間に使われることによって本来持っている力を出せずにいる。
実に嘆かわしいことだわ。無能な人間はポケモントレーナーになる資格はない!」
カミツレはイブキとミカンに言い放った。しかし
「いいえ、Nはただのクレイジーな凶悪な大量殺人者よ。
だって、新プラズマ団によってポケモンを奪われ殺された人たちが大勢いるのを
あなたも知っているはず……あなたの発言でようやく分かったわ。
あなたは欲に目がくらんでこのゲームに乗った愚かな人間……」
ミカンは反論し、カミツレがこのゲームに乗っていることを見抜いた。
(バレたか……やっぱりミカンは変人だが非常に賢い。
一流の大学を出た私より賢いわね。下手するとサカキと同じくらい頭が良いかも
でも、策略では私も負けないわ。ミカンは私がこのゲームに乗っていると分かっても
大丈夫。ミカンは私が百メートル十一秒台で走れることを知らない。
隙を見てポケモンを必ず奪う!)
「世論は今ではN側に傾いている。もうNが正義……」
と言った瞬間、カミツレは鮮やかな手さばきでイブキとミカンのポケモンを奪った。
正に一瞬の手口だった。
「ああ! 私たちのポケモンがッ!」
「ッ!」
イブキは慌てふためいた。
「フフフッ、まんまと引っ掛かったわね。この私から取り返せるかしら?」
カミツレはモンスターボールを腰に付けて悦に浸り逃げ出そうとドアを開けた。
「イブキ、慌てないで! カミツレが逃げても足の速いあなたなら追えるはずよ!
それにカミツレは恐らく百七十五センチ以上はある長身で力も強そうに見えるけど
所詮は足の長さで稼いだ体格だから力の強いあなたなら十分取り押さえられる!」
ミカンは早口でイブキに指示を出した。カミツレは自分の足によほど自身があるのか
余裕見せ、ドアを開けたまま、ミカンの話しを聞いた。
(何て分析力……だけど私が百メートル十一秒で走れることをミカンは知らない。
私の勝ちは決まりだわ。後は逃げ出すだけ……)
カミツレはその場から超スピードで逃げ出した。
イブキも追ってきたが、高速で走れるカミツレはイブキよりはるか前を走っている。
楽勝で逃げ切れるとカミツレが思った矢先――
「待っていたぞ、カミツレ!」
謎の巨大な大男が病院の玄関前で待ち構えていた。
二メートル級はあろうかという巨人。しかもハンサムな顔立ち。
そして黄色い髪が特徴的だった。カミツレはこの人物を知っている。
超有名人のシンオウ地方タワータイクーンのクロツグだ。
(この大男があの有名なクロツグ!? 身長高過ぎーっ!
しかも超イケメンじゃない。私のタイプ。
いや、今はそんなこと考えている余裕はないわ!
恐らくミカンの仲間……私が逃げるのを待ち伏せていたのか?
まずいわね)
カミツレは突如現れたクロツグに進路を阻まれ、立ち往生した。
そうこうしている内にイブキに追いつかれ、それに続きミカンもやってきた。
完全に挟まれ、ピンチに陥るカミツレ……。
「完全に終わったわね。ミカン」
「ええ、全て終わりました。後はカミツレを取り押さえるだけです。
その前にカミツレと話しがしたいので取り押さえるのは待ってください」
急にミカンの口調が冷淡に変わった。ミカンがさらに言葉を続ける。
「カミツレ、今までの私の態度、口調は全て演技でした。
もちろんイブキにも演技をしてもらいました。しかし、鋼タイプへの愛着は変わりません。
鋼タイプについて語ろうと思えば何時間でも語れる自信はあります。
私がなぜ、あなたがこのゲームに乗っていると疑いを持ち初めたのは
倒れたカミツレの上に置かれたこの紙切れが始まりです」
そう言ってミカンは一枚の紙切れを取り出した。
「それは何なの!?」
カミツレの動揺は深まる。
「この紙切れには『カミツレは間違いなくこのゲームに乗っている』と
書かれていました。この筆跡を調べたところ
ロケット団ボスのサカキのものであることが分かりました。
実は私はサカキに以前、ロケット団に入らないかと誘われたことがあります。
もちろん断りましたが……その後もサカキと連絡を取っていました。
サカキは非常に頭の良い人です。しかも用意周到。
万が一のことを考えてこの紙切れを残したのだと思います。
まあそれ以前にポケモンバトルに負けた……。
つまり、ポケモンバトルをしたということはこのゲームに乗っている可能性が高いので
疑うのに変わりはありませんでした。でも、この紙切れは大きな証拠です。
なぜ、このゲームに乗っているかもしれないあなたを私たちが助けたのかは
助けることによってあなたが改心してくれることを願ってでした。
しかし、あなたは無情にも助けた恩をあだで返してくれました。
とても残念です。正直がっかりしました」
ミカンはカミツレが改心出来なかったのをどこか落胆したような表情で話した。
「カミツレ、あなたがこのゲームに乗っていると確信したのは
『N信者』だとあなたが暴露したことです。
恐らく適当な会話で切り抜けることが目的なのでしょうが、選択した会話が間違いでした。
N信者というのは過激派として知られています。新プラズマ団は
勝手に無能だと判断したトレーナーを殺害してポケモンを奪うという凶悪な組織です。
そんな組織の信者になるような人物は悪者に違いありません。
暴露したのはあなたの致命的なミスでした。墓穴を掘ったと言っても過言はありません。
カミツレ、私達はあなたがこのゲームに乗っているという確たる証拠を突きつけている。
イブキ、クロツグ、カミツレを取り押さえてください」
ミカンは話し終えるとイブキとクロツグにカミツレを取り押さえるよう指示を下した。
「カミツレ、大人しくしなさい!」
イブキがカミツレを取り押さえようとした。しかし
「来るなー! 私はこんな所で終わりたくない!」
カミツレはイブキの腕を振り払って近くの壁に背を掛けた。
「はあ……はあ……ちくしょう!」
カミツレは精神不安定に陥った。
「クロツグ、カミツレを取り押さえてください。
男のあなたなら取り押さえるのは容易なはず……」
しかし、クロツグはミカンの指示に動かなかった。
「……悪い、俺はカミツレの味方をしたくなった」
クロツグはそう言った瞬間、ミカンに殴りかかった。
二メートルから繰り出される拳は華奢なミカンの身体を打ち壊した。
「……馬鹿な……クロツグが裏切るなんて想定外……」
ガクッ!
そのままミカンの身体は動かなくなった。
次にクロツグが標的にしたのはイブキだ。イブキは身構えたが
「お前も死ね!」
クロツグが言うと凄まじい蹴りをイブキに浴びせた。
そのままイブキはその場に崩れ落ちた。しかしクロツグは容赦しない。
強烈なパンチを数発、イブキの身体に与える。
ドサッ!
イブキもクロツグの猛攻に耐えられず絶命した。
その後クロツグはカミツレに向き直り、
「カミツレ、俺と組もう。互いに悪人……。
互いに信頼出来ないがな。言っておくが、俺は運営側の人間……。
このゲームに仕組まれたトレーナー。
だからお前がなぜ生き返ったのかを知っている。
実は俺たちの心臓に埋め込まれた特殊なナノカプセルには一つだけ毒性が弱いものがある。
たまたまお前が幸運だっただけだ。自分が特別だとうぬぼれるなよ」
「ありがとう。助けてくれてうれしいわ。
いいわ、あなたと組んであげる」
カミツレはクロツグの助けによって難を逃れた。
(クロツグのお陰で助かったわ。クロツグを利用するだけ利用して
最後の最後に寝首をかいてやるわ。同じようなことをクロツグも考えているはず……。
関係ないわ、最後に生き残るのは私よ)
カミツレはクロツグを利用することを考えた。何といってもタワータイクーンは
めちゃくちゃ強い。利用するに限る。カミツレとクロツグは病院から去っていった。
――残り十八名――
投下終了です。
次回予告
バトルロワイアルも中盤戦を過ぎ、ついに激突する天才の出木杉とリラ……
大切な仲間を守るため、出木杉は悲壮な覚悟で臨む。
壮絶なバトルの末、生き残るのは果たして!?
「リラ、君にハンデをやろう。僕はポケモンを使わずに素手で君を倒す!」
リラにハンデをやると言い自分に絶対の自信を持つ出木杉……しかしそれが裏目に出て
見どころ満載!
乙。ミカンは凄かったけど人選ミスだな。クロツグは最初から裏切る気だったと思うし
てか次回予告の出木杉バカ過ぎんだろww
のび太以外の書いてある場所知らない?!
教えてよー
111 :
実況 ◆XujyRJA3mw :2011/10/19(水) 21:44:18.08 ID:37QzGtgn0
500人に聞いた!好きな女性トレーナーは?
1フウロ
2カミツレ
3エリカ
4シロナ
5アカネ
6ミカン
7カトレア
8ナタネ
9スズナ
10ナツメ
11アスナ
12カスミ
13イブキ
14アイリス
15コゴミ
16シキミ
17スモモ
18カリン
19マイ
20カンナ・モミ
これファンサイトであった実際の結果
>>111 フウロが1位とはいえ、巨乳かどうかは割と関係なさそうな結果が出たな
アダムス氏乙! 自分は暇な時間が多いだけですよ
七色の翼ですが、こちらが思っていた以上に続きの希望があったことに感動しました。今はプロットを整理している段階なので一話まではもうしばらく時間がかかりますが、続編の連載を決定します!
今回はプロローグだけ、投下します
満開に咲いた桜の花。薄ピンク色の花弁に、白く冷たい何かが降りかかってくる。
それは、雪だった。
本来、咲き乱れる桜の花は春の始まりを告げるものだ。しかし、その姿を演出する舞台は、何故か真っ白な雪景色だった。
異常気象。訪れた筈の春は、過去に例を見ない異常な低気温であった。
少女はその原因を知っている。
それが世界以上の規模における、次元の枠を越えた問題であることも。
「やあ、待たせたね」
日曜日の○×小学校は教師も含め、通う者全員の定休日となっている。
本来無人である筈のその場所の屋上で、少女は同じく一人の少年と対峙していた。
約一年ぶりに、少女は彼の顔を見た。
いかなる時も柔らかな表情を崩さず、初めて手にしたポケモンをたった数日で進化させた文字通りの天才。
だがその少年の姿が少年のものではないことを、少女と、七色の翼を持つポケモンは見抜いていた。
『貴様は……何者だ?』
過剰とも言える警戒心を込めた声で、七色の翼が訊ねる。
少年は端整な顔に微笑を浮かべながら、こともなげに返す。
「何者って、僕は出木杉英才だよ。何言ってるんだいホウオウ?」
「白々しいわね。お前は出木杉じゃない」
「ツバサちゃんまで酷いなぁ。僕は間違いなく出木杉英才だよ。……正確にはこの「肉体は」だがな……」
飄々と応える中で、彼の表情に闇が射していく。微笑は徐々に冷笑に変わっていき、そして暗黒の闇を纏ったような醜悪な表情になる。
『やはり貴様が出木杉英才を……』
「私の存在を一目で見破るとは流石だな、ホウオウ」
『あの日から我は、たった一時でも貴様のプレッシャーを忘れたことはない』
白雪が降り積もる屋上はほぼ無風で、ざわめきもなく静かだった。
それはまるで、嵐の前の静けさのように。
「私も貴様のことは覚えている。……いや、もはや忘れようもない。あれは二度と忘れることが出来ない戦いだった」
「……親父と戦ったのね」
「ああ、貴様の父ゴールドには世話になった。たった今、その礼をさせてもらうとしよう」
『それは我々の台詞だな』
そうだろう、とホウオウが言う。
少女が今まで付き合ってきて初めて感じた、彼の明確な「殺意」であった。
『霊竜!』
人類滅亡まで、時間はない。
――ドラえもん のび太と銀色の亡霊――
投下終了
今回もドラえもん、レギュラー落ちの危機。
後々オリジナルの人物設定を投下したいと思います。
乙。ドラえもんェ…
しかしまたプロローグからスケールでかいな!
出木杉に何が起こるというのか
のび太と七色の翼氏乙です。さすがです。
素晴らしいとしか言えません。七色の翼氏は私の憧れです。
それでは投下いたします。
4
日差しが強い白昼にのび太とレンブは比較的大きな公園で身体を休めていた。
このゲームは本当に神経が擦り減らされる。なのでまず身体を休めていた。
公園の白いベンチに休んでいた。だが、このベンチの下に二体の死体が横たわっていた。
のび太とレンブはこの死体がカツラとマチスのようだと気付く。
哀れな死体の埋葬を先ほど二人は終えた。レンブ手を合わせて成仏を願う。
「哀れな仏よ……成仏せよ」
熱心にレンブが祈るのを冷めた目でのび太は目ていた。
(レンブは自分達も死の危険があることを分かっているのだろうか?
呑気に祈っている場合じゃないのに……もしやレンブは演技をしているのか?
仮にレンブがこのゲームに乗っているのとしよう。このゲームに乗ったのなら
俺に対してまずこのゲームに乗っていないことを必ずアピールするはず……。
だから大げさに死体の成仏を祈って自分が乗っていないことを俺に見せる必要がある。
そう考えるとつじつまが合う。
しかし、レンブはカミツレに殺されかけていた俺を助けた)
のび太のレンブに対する疑念は深まる。
だが、レンブは危険を顧みずに自らを助けた恩人だ。
このゲームに乗っているなら自分を助ける意味はない。むしろ余計な行為だ。
だからレンブはこのゲームに乗っていないのか?
のび太はぐるぐると頭をフル回転させて思考を巡らせた。
その時だった――何ものかがのび太の背後に忍び寄る。
身の危険をのび太は感じる。思わず背筋が凍りつくのを感じたが
「誰だ? 俺の背後に立つのは……」
冷静に背後にいる者に問いかけた。
「やっほー! よく気づいたね、のび太ちゃん!」
一瞬でテレポートをしているかのごとく、
背後にいた者はのび太の正面に立った。
「君は!?」
「何者!?」
ひたすら祈っていたレンブも気づいたようだ。
のび太はポケモンをプレイしたから分かる。あれはタワータイクーンのリラ。
「僕はタワータイクーンのリラ!」
やはりリラだった。
上を見るとエスパータイプのポケモンのフーディンが空中に浮いていた。
(敵なのか?
いや、こんな幼い子がこのゲームに乗っているとは思いたくはないが……)
のび太は動揺した。リラには得体のしれない不気味さが漂っている。
「わざわざ背後に立ったということは貴様はこのゲームに乗っている!
小娘が! 祈りの邪魔をしおって、我が拳で打ち砕いてやる!」
レンブはなぜか勝手にリラがこのゲームに乗っていると判断して逆上している。
「レンブさん! ちょっとその考えは短絡過ぎる。
こんな幼い子がこのゲームに乗っているはずがない。
疑心暗鬼に陥るのも大概にして!」
のび太はレンブをなだめた。レンブという男は意外と胆が小さいのではと思った。
「さすが四天王のレンブ……察しが良いね。
野性的な感というかなんというか。そうだよ。
僕はこのゲームに乗っている。三人も殺したよ」
リラは満面の笑みで答えた。のび太は戦慄を覚えた。
(このゲームに乗っているのか? そんなはずはない。
こんな小さな子が……絶対嘘だ)
リラが嘘をついているのに懸けた。しかしレンブはさらに逆上し、
リラに殴りかかった。巨体から繰り出された拳がリラを襲った。
リラはその場に倒れたが、すぐに平然と起き上がった。
まるで何事もなかったかのように……。
「何だと!? なぜ利かん!」
レンブは驚き戸惑っている。
「僕に攻撃しても無駄だよ。フーディンのテレポートによって
攻撃が当たる瞬間に別の場所に移動し、また元の場所に立ったのさ。
倒れる演技をしてね。のび太ちゃん、レンブ、僕は確かに三人も人を殺した。
でも、僕は悪くない。殺し合いをさせるこのゲームが悪いんだぜ」
リラは平然と述べた。だが、のび太はリラが嘘をついていると信じて疑わなかった。
「のび太ちゃん、まだ僕がこのゲームに乗ってないと思ってるの?
僕がこんな可愛い見た目だからって先入観を持っちゃダメだぜ」
リラが言うと、空中漂うフーディンの目があやしく光る。すると
凄まじい超能力がレンブに向けて発せられた。
レンブの身体は宙を舞い、そして爆発した。
レンブは凄まじい爆発音と共に哀れにも砕け散って塵となる。
その光景を見たのび太は心底から震えあがり、驚愕した。
「レ……レンブが跡形もなく消え去った。
さっきまで元気だったのに……リラ、君は悪魔だ。
君の殺したトレーナーの中にまさかジャイアンもいるんじゃ」
そう言うと途端にリラは表情を変えた。
やはりこいつがジャイアンを殺したのだ。疑念が確信へと変わる。
「名前は知らないけど、確か背が高くて太ったおじさんを殺したよ」
リラは平然と言い放つ。特徴からいって間違いなくジャイアンだ。
(こいつがジャイアンを……許さない)
ジャイアンを殺したリラが憎い。でもこのゲームには乗りたくない。
どうすればいい?のび太は激しい葛藤に苛まれた。
「俺はお前を許さない。
いくらガキだからと言って人殺しは絶対に許せないことだ。
それにジャイアンは親友だ。昔は確かにジャイアンにいじめられていた。
それでジャイアンに復讐するためにボクシングを始めたんだ。
だが、その気持ちが次第に消えていき、純粋にボクシングが好きになった。
ボクシングで強くなるとジャイアンにも認められた。
今の自分があるのはある意味ジャイアンのおかげでもあった」
それをこの小さな悪魔はジャイアンを無情にも殺した。
ジャイアンは大相撲の世界に入って悲願の大関昇進という夢を果たしたというのに……。
「あのさ、今の話を聞くとのび太ちゃんはジャイアンにいじめられていたんだ。
君は今でも復讐心を引きずっていたんじゃない
むしろ感謝してほしいな。君の代わりにそのジャイアンに復讐を果たしたんだよ?
きっとジャイアンはのび太ちゃんを認めたんじゃなく、
ボクシングを始めた君を恐れて手を出せなかったんじゃないかな」
リラはのび太の話を簡単に論破した。確かにその考えは筋が通る。
ジャイアンは僕がボクシングを始めたと言った瞬間に態度を豹変させた。
「確かにその通りだ。ジャイアンは俺に陰湿な苛めをした。
今でも
いじめられた記憶がフラッシュバックする。
君の言葉で目が覚めたよ。ジャイアンは殺されても仕方がない極悪人だって。
ジャイアンの野郎は元いじめっ子のくせに大相撲の世界で成功したのは許せない。
大関昇進を賭けた場所でジャイアンは十四勝一敗という好成績を残した。
平幕相手に星を取りこぼして九勝六敗とか不甲斐ない成績で昇進が見送られればよかったんだ。
それを何が大関だよ! いじめをしたクズのくせに!」
怒りが心の奥底から湧きあがってきた。ジャイアンはいじめををするクズだと
改めて思ったその時だった。
「それは違うよ、のび太君」
懐かしい声がして後ろを振り向いたら何と出木杉が立っていた。
「出木杉!」
「あの教室でのび太ちゃんを庇った美青年だね。突然現れてどうしたの?」
リラも出木杉の登場に驚きを隠せないようだった。
「たまたま通りすがっただけさ。リラがレンブを殺した所から大体の話は聞いたよ。
のび太君、武君は僕に小さい時君をいじめたことをとても後悔していると漏らしていたよ。
リラの言葉に惑わされるなよ。親友の僕の言葉を信じるんだ。
さあ君は下がっていな。ジャイアンの仇は僕が取る!
君にはこのゲームに乗ってほしくない。汚れを背負うのは僕の仕事だ」
出木杉は優しくのび太に言った。正直ここで出木杉の登場は予期せぬことだった。
リラは間違いなく強い。出木杉と同じ完璧超人の類いだ。
だけど出木杉がいれば何とかなる気する。出木杉は天才を通り越して全能の超人なんだ。
幼い時から出木杉は非凡な才能を発揮していた。
しかも成長と共に出木杉の天才のきらめきは増していった。
ある時、のび太の父親が不祥事を起こして会社を首になってお金に困っている時、
出木杉は大量に金を稼いでくれたこともあった。さらに出木杉は高校時代、バスケ部に所属しており、
ポジションはPFで活躍。そして無名の高校で全国制覇に貢献した経歴も持っている。
当然、最優秀選手賞MVPにも選ばれていた。
出木杉は何でもできる完璧超人なんだ。しかしリラも底知れないものを持っている。
(リラは恐らく口に出さなくてもポケモンに命令出来る。
それはフーディンに命令しなくてもレンブを殺害したことから明らかだ)
出木杉に伝えなければ
「出木杉!
リラは直接口に出さなくてもポケモンに命令出来る特殊な能力を持っている!
気を付けるんだ! 僕も一緒に戦うよ!」
「リラの能力は僕も把握している。何の問題もない。
人に出来ることは僕にも出来る。リラは僕一人で倒す。
君は優しすぎる……君は僕とリラの戦いを安全な所で見物でもするんだね」
出木杉はまたも優しく述べた。
「わかった。俺は足でまといっていうことだね」
のび太は出木杉に背を向けてその場から避難した。
出木杉はのび太が安全な所に避難したのを見届けると
おもむろに口を開いた。その表情は自信に満ち満ちている。
相手がいくら天才的な能力を持っていようが気おくれすることはない。
それが出木杉英才……。
「僕は出木杉英才。君にハンデをやろう。
僕はポケモンを一切使わない。素手で戦う」
出木杉はとんでもないことを言い出した。
その言葉にリラは目を丸くした。
「ははは! 何を冗談を!? 人間が素手でポケモンに敵うとでも?
君は頭よさそうに見えるけど馬鹿? 無謀すぎる」
リラは高笑いした。
「僕に不可能はない。僕の身体能力を甘く見ないことだ。
かかってこい!」
リラを挑発する。その挑発にリラはいらっとした表情を見せた。
「君の言っていることがどんなに無謀なのかを思い知らせてやるよ。
この天才の僕に舐めた口を叩いたのは万死に値する!」
そう言うとリラのフーディンがスプーンを振りかざして念じてきた。
しかし何も起こらなかった。
「なぜだ! 僕は口に出さずにフーディンにエスパータイプの極大技
サイコキネシスを命じた。なのになぜ何も起こらない!」
リラはサイコキネシスを失敗したことに動揺する。
「思った通り。サイコキネシスの使い過ぎだ。君はこれまでに四人も殺した。
恐らく君は極大技であるサイコキネシスを乱用していたのだろう。
それに君がレンブを殺すところを僕も見たが、明らかに超能力の使いすぎ……。
もう君のフーディンはサイコキネシスを使うことはできない」
出木杉が説明した。リラは激しく動じる。
「クソ! そこまで計算して君は馬鹿ではないのか!?」
リラはいら立ちを隠せない。
「こちらから攻めさせてもらうよ」
言うと出木杉は飛びかかってフーディンに手刀を浴びせた。
出木杉の手刀が炸裂する。フーディンは呻き声を上げた。
「馬鹿な! 人間がポケモンにダメージを与えるなんて信じられない!
何をした! 何のトリックを使った?」
フーディンがダメージを受けているのを見てリラは驚愕する。
「別にトリックではないよ。僕は普通に攻撃しただけさ。
話しに聞くとフーディンの肉体的強度は人間よりはるかに脆弱と聞く。
ましてやこれまでの戦いで超能力を酷使しすぎたフーディンなど恐れるに足らない。
はっきり言う。今のフーディンは並みの人間より脆い。ちょっと鍛えた人間にすら負ける。
それに僕はベンチプレス140キロを上げられる。鍛え上げられた人間さ」
冷静に分析した。出木杉はフーディンが超能力を酷使していたのを見抜いていたのだ。
(計算通り! リラ、僕の勝ちだ。
フーディンが超能力の使いすぎだということは分かっていた。
それに気付けなかったことが君の敗因。僕は格闘技に精通している)
心の中で出木杉は勝ちを確信した。勝った。もはや僕の勝ちは揺るぎない。
出木杉はほくそ笑んだ。そして二発目の手刀を浴びせかけたその時だった。
フーディンの目があやしく光る。何だ?強がりか?出木杉がそう思った瞬間――。
虹色の光線が出木杉の右肩を貫いた。
(しまった! サイケ光線か?
極大技が使えなくてもサイケ光線ぐらいなら使えるということか……)
右肩からおびただしい量の血が流れる。
「ぐあああーっ! ちくしょう! よくもやってくれたな!」
出木杉は声を荒げた。さっきまでの冷静な態度とは打って変わって
逆上する。
「フハハハ! 調子に乗ってハンデをやると言ったのが裏目に出たようだね。
サイコキネシスが使えなくとも君を倒せるぐらいの超能力は残していたさ。
形成逆転のようだね」
出木杉と変わってリラは勝ち誇った表情をする。
「面白いものを見せてやるよ」
リラが口ずさむとフーディンが右手に持っているスプーンの形状がみるみる内に
刃物に変わってゆく――スプーンが鋭く尖った。
「何だと!? スプーンが刃物に精錬されてゆくだと?
それをどうする気だ」
左手で出血する右肩を抑えながら出木杉は驚きの表情をする。
「こうするんだよ!」
リラがそう叫ぶとフーディンは刃物と化したほうのスプーンを投げた。
そのスプーンは超スピードで出木杉に向かっていき、
出木杉の右目を貫いた。
「ああああああーっ! 目がーっ! 目がァー! 僕の目がぁぁー! 大事な目がァーッ!
み……見えない……右目が何も見えない……」
出木杉は右目を失って悲痛な叫びを上げた。
(右目が失明した……ちくしょう……。
こんなことなら最初からポケモンを使えば良かった。
僕が調子に乗ってハンデをやるなんて言わなければ失明することなんてなかったんだ)
出木杉は後悔の念に苛まれた。最初からポケモンを使っていれば。
そう思うと悲しくなる。
「僕は生まれながらに才能に溢れ、何もかも上手くいっていた。
運動神経抜群、頭脳明晰、僕は自分が特別な人間だと思っていた。
全国共通模試一位。東大をトップ合格。
新入生代表の挨拶……そして首席で卒業……正に超エリートだった。
その僕の右目を……いや、僕が悪かった。自業自得だ。
ハンデをやるなんて言わなければこんなことにはならなかった。
ようやく僕に何が足らないのか分かったよ。僕は自分に自信がありすぎるんだ。
それで油断して右目を失った。まったく高い授業料だよ。
でもようやく気付けた。もう油断も慢心もしない。
生き残っている大事な仲間……のび太君、スネ夫君。
この二人は僕が守る! そして君に殺された武君の仇を取る!
リラ、改めて君にポケモンバトルを挑むよ! ゆけっ、ガブリアス!」
出木杉は何かを悟ったように動揺が消え、いつもの表情が戻った。
ボールを投げてドラゴンポケモンのガブリアスを繰り出す。
勇ましい声と共にガブリアスが姿を現した。
「最初からそうしていれば良かったのに馬鹿な奴!」
リラは出木杉を馬鹿な奴と吐き捨てた。
「リラ、君の言うとおり、僕は実は馬鹿なのかもしれない。
まあいいか。僕とリラ、どちらがポケモントレーナーとして上か勝負だ!」
「僕が上に決まっているさ。僕と君には決定的な違いがある。
僕は以心伝心という、
直接口に出さなくても心で思っただけでポケモンに命令出来る特殊能力がある。
この能力がある限り、僕は史上最強のトレーナーなんだ」
リラは高らかに自らの能力を自慢した。
「史上最強のトレーナーとは大きく出たね。
じゃあ君を倒せば僕が最強のトレーナーになるんだね」
「僕に勝つなんて無理だけどね。さあ勝負を始めよう。
僕から攻めさせてもらう!」
こうして出木杉とリラの互いの生き残りを賭けたポケモンバトルが始まった。
一陣の風が吹く――それがバトルの始まりを告げる。
リラのフーディンは公園に生えている木の中の一本を超能力で引き抜いた。
そしてその木が宙に浮かび、出木杉のガブリアスに向かって投げつけた。
「これでもくらえ!」
一本の巨木がガブリアスを襲う。しかしガブリアスは余裕でひらりと避けた。
身軽で素早さが高いのがウリだ。
「避けた!? いや、そんなことより、
君はガブリアスに避けろと命じていなかったのになぜ避けられたんだ!?
まさか君も……僕と同じ能力を?」
リラが驚きの声を上げた。
「言ったはずだ。人に出来ることは僕にも出来るってね。
まあ初めて使ったけどかなり便利な能力だね。
どうだい? 自慢の能力を人に使われた気分は?」
不敵な笑みを見せて答える出木杉……。
「僕しか出来なかった能力を……他の者が出来ただと?
この能力を使えるのは僕しかいないと思っていた。
僕は小さい頃から、この能力を見せびらかして優越感に浸ってきた。
僕にしか出来ないから僕だけが特別だと思ってきた。
こんな屈辱は初めてだ。まあいい、このバトルで君を消せば
この能力が使えるのはまた僕一人になる。また元通り僕の天下だ」
リラは屈辱感を露わにして言った。
なるほど自分と同じ能力が使える自分を脅威と感じているようだ。
出木杉は思った。なんてプライドの高い奴だと……。
「今度はこっちの番だ」
出木杉は心の中で、ガブリアスにドラゴンクロ―を命じた。
ガブリアスは主人の意を汲み取り、鋭い爪を突き立てて、
フーディン目がけて放った。フーディンの身体をドラゴンクロ―で引き裂こうとするが、
フーディンの姿が突如として消えた。
(これは!? テレポートか。
なるほど、テレポートにはこんな使い方があるとはね。
この小娘は特殊能力だけに頼った戦い方だけではないようだ)
出木杉はテレポートを戦闘に使ったリラの機転に思わず感心する。
しかしそれもつかの間、フーディンはテレポートで一瞬にしてガブリアスの背後に回る。
そして虹色の光線をフーディンが放った。
間一髪、ガブリアスは持ち前の素早さを生かして避けた。
以後互いに譲らず一進一退の攻防が二時間にも及んだ。
ガブリアスが攻撃してもフーディンはテレポートで簡単にかわしてしまい。
また、その逆でガブリアスもその高い素早さでいとも簡単にフーディンの攻撃を避けてしまう。
(これではキリがない。いや、待てよ。
フーディンのテレポートで避けるのにも超能力を使う必要がある。
必ず超能力が切れる時がくるはず……。
だが、ガブリアスの体力も限界が近付いているのも確か。
フーディンの超能力が切れるのが先か、ガブリアスの体力が切れるのが先か……)
出木杉は頭の中で考えを巡らせていた。
そしてついにこの勝負の終わりがやってきた。
フーディンのテレポートに切れが無くなってきた。
「リラ、どうしたフーディンのテレポートが鈍くなってきたぞ」
「それはお互い様だよ」
リラは出木杉の精神的な揺さぶりにも負けずに言い返したが、
明らかにフーディンのテレポートが鈍くなっているのは目に見えていた。
ついに終わりの時がやってきた。ガブリアスのドラゴンクロ―が
フーディンの身体を引き裂いた。鮮血が吹き出てフーディンの悲鳴がこだまする。
それは断末魔の声に聞こえた。
フーディンは最後の最後で超能力が切れてテレポートすることが出来なかった。
「リラ、僕の勝ちだ」
フーディンが倒れるのを見届けて高々と勝利宣言した。
「嘘! この僕が……負けた?」
リラは呆然と立ち尽くす。まるで負けたのが信じられないようだ。
「リラ、君の負けだ。耐久力のないフーディンは一発の攻撃が命取りになる。
まあ、君のフーディンが万全の状態なら僕が負けていたかもしれない。
間違いなく強敵だった。前に戦ったダイゴよりも数段上……」
「そうか、ダイゴさんを倒したのは君だったのか、
道理で強いわけだ。く、苦しい……僕は死ぬの?」
リラは突然、苦しみだしてその場に倒れた。
「ああ、死ぬ。君はこれまでに四人も殺してきたのだから当然の報いだ。
だが、安心して。このゲームで死んだトレーナーを生き返らせる方法が一つだけある。
きっと生き返らして見せる」
「ほ……本当に? も……もし生き返ったらまたポケモンバトルしてく……れ」
ガクッ!
リラは出木杉の言葉を聞いて安心したのか安らかに息を引き取った。
壮絶なバトルが終わると辺りは静寂に包まれた。
すると避難して遠くから見ていたのび太が駆け足で出木杉の元に戻ってきた。
「おーい、出木杉! リラに勝ったんだね。やっぱり君は天才だな」
のび太は出木杉を祝福した。その目は興奮に満ちている。
――残り十六名――
投下終了です。
次回予告
新世界の神を自称するNはどうしてもサカキと結着をつけたいと思い
サカキ達の前に姿を現す決意をする。そして相対する両者の行方は?
「あははははー! 僕はタロウではない。タロウと言う名前は偽名!
僕は新プラズマ団ボス……N! そして新世界の神だ!」
「おかしくない! 僕は神なんだ! いいか、この世の中には腐ったトレーナーが多すぎる。
ろくにポケモンを使いこなせない癖に強いポケモンを所有するトレーナー。
そいつらからはポケモンをとりあげなければならない。
無能なトレーナーに使われることによって本来の力を発揮だせずにいる。
そんなポケモンが数多くいる。誰かが救わなければならない。
僕は思った……僕がやるしかない……いや、僕にしかできない!」
Nは自分の考えを否定されて怒る。果たして結末は!?
乙だが、のび太の情緒不安定ひどくね?あとやたらと説明口調過ぎるから直すといいかも
出木杉マジで右目失う理由がくだらなすぎるだろwwwwwwww
乙。
キモさは昔から変わんねぇな
>>138 キモいですか?私の小説があなたの気持を不快にさせていたのでしたら謝ります。
不快な小説を投下するわけにはいきませんので本当に申し訳ありませんが止めます。
メモ帳に完結まで書きためていたんですが残念です。
私は必死に努力し続けていましたが報われないものですね。
でも、まだ私はまだ諦めていません。
修行して文章力を上げてまたいつか新作を引っ提げてドラポケに戻ってきます。
その時はコテも変えているので私がアダムスだと分からないでしょう。
>>136と
>>137 不快な小説を読んでくれて本当にありがとうございます。
誠に申し訳ありませんがこの作品は終了となります。
作品を途中で投げ出すなど私は最低な人間です。
でも、必ず戻ってきます。
もっと小説を読んでいろんな小説サイトを回って修行してきます。
戻ってきた時にこの作品よりはるかに面白い小説を提供することを約束します。
いや、キモいのは挨拶とか周りを褒めすぎとか長文で、作品ではないんじゃね
こいつやばい
煽りなんてスルーして続き書けばいいのに
たった一言つつかれただけで顔真っ赤にして逃走とか、正直2chやんない方がいいよ
こういう消防丸出しのアホが沸くからポケ板のSSスレは長続きしないんだよなぁ
というか、なんで投げ出すんだ
そんなんじゃ文章力高くなって戻ってきても、試しに誰かが煽ればまたこうなるじゃないか
つーかこいつってかなり前から2chで暴れてた糞コテだろ
酉でググったら、わんさか色々出てくる
>>139 別に話し書くの止めようが何しようが好きにしたらいいけど、
>私は必死に努力し続けていましたが報われないものですね。
この一文だけ撤回しろ。実際に必死に努力してる人に失礼過ぎる。
お前はちゃんと努力したか?
ラノべや携帯小説じゃないちゃんとした小説沢山読んだ?
小説の書き方の本やサイトを見て勉強した?
お前の言うように必死に努力したのなら
>>120-135みたいな稚拙な文章にならないはずだ。
ようするにお前は『可哀相な自分』を演出したいだけ
周りの奴らが同情して『やめないで!』とか『続けてくれ!』とか言ってくれるのを期待してんだろ?
見え見えなんだよカスが
もう二度と戻って来なくていいから
後、自分の思い通りの流れにならなかったからって荒らし活動するの止めろよ
こういう奴はほぼ100%荒らしになって粘着して来るから
半分同意。たしかに下手過ぎる。避難所の頃の文章かどうかも疑問な頃よりは良いがとても小説にはなってない
だが、実際これで荒らしが生まれたら
>>145にも非があるな。言い方ってもんがあるわ
多分同じく正義感たっぷりの言葉吐いてるつもりで「俺が悪いわけないだろ」とか思ってるんだろうけど
まあ上手くなって戻ってこようとしてるんだし戻ってくるなとは俺も言わない
けど七色の翼(銀色の亡霊)の続き気になるし楽しみにしてるからマジで荒らし行為は勘弁
小説の勉強するのもいいけど、その前に2chの事も学んでおいた方がいいかもね。
個人サイトの掲示板と違ってここは色んな意味で特殊だから。
とりあえず自己語り、馴れ合いはかなりの率で嫌う人が多いとだけ言っておこうか。
それよりそろそろこの話止めようぜ。
アダムス氏乙、ここでやめてしまうのは残念。
俺からアドバイスと言うと偉そうですが、まず登場キャラの口調を何とかすべきと思いました。
アダムス氏独自の設定はとても奇抜で面白いのですが、それをキャラ自身の口で語らせるのはどうも違和感があるというか……
「いちいち語るのが好きなキャラだな」、「武士みたいな口調の奴だな」と思いながら読むと、それはそれで面白いのですが、やはり全員が説明口調だと違和感があります。
作品内に自分の作った設定を組み込んでいくのは難しいし、俺もそこら辺全く上手く出来ませんが、何でもかんでも台詞にせず、なるべく地の文を使ってみてはどうでしょうか――と、今手元にあるラノベ入門書に載っています。
俺も小説歴四年ぐらいですが、大して上達はしていません。しかし、書くのが楽しいから書いているのであって、自分の努力を相手に誉めてほしいから書いているわけではありません。
書きたいから書く。仕事じゃないんだし、それでいいのではないかと思います。
それでも誰からも認めてもらえるぐらい上手くなりたいなら、挫けずに積極的にアドバイスを貰う必要があるのではないでしょうか。
酷評に納得出来なかったり、悔しい思いもするかもしれませんが、耐えて逃げずに受け入れるべきではないかと。それが「努力」なのではないかと臭いことを言ってみたり。
そう言う俺も努力してませんが。
自分の作品って、案外美化してしまいがちなんですよね。実は俺も過去に書いた文章を読者視点で読むと死にたくなったりする。
それと、前の方も言っていましたが俺のこと誉めすぎです。もちろん嬉しいですが、過剰に誉められるのはなんか怖かったし、実際俺の作品は大したことないです。改行も下手だし
長文失礼。
修行の為にスレを去るのは構いませんし、別に止めません。お互い精進していきましょう。
あと、第一話投下します
「春が来た」という童謡がある。
春が来た、春が来た、どこに来た。
山に来た、里に来た、野にも来た。
花が咲く、花が咲く、どこに咲く。
山に咲く、里に咲く、野にも咲く。
その歌詞の通り、東京都練馬区にも春が訪れていた。
咲いたのは満開の桜の花。それこそが出木杉英才の考える、最も春らしい春であった。
一本の桜の木の下で、彼は自分自身に春が訪れることを祈っていた。
《三月二十五日、正午。練馬駅裏にある桜の木の下でお待ちしています》
春休み中一日だけあった登校日、彼は隙を見て一人の少女に手紙を手渡した。その少女は彼の初恋にして最愛の人。
秀才の名を欲しいままにする彼が、唯一思い通りに出来ないのが彼女への想いだった。
だから今こそ、その想いに決着をつける。
彼女はいい子だ。手紙を読んでくれたなら、指定したこの場所に間違いなく来てくれる筈である。
落ち着けよ、僕は出木杉英才だ。
この日の為に家の中で何度も発声練習をしてきた。
インターネットを用いて心に響く告白の仕方などを調べに調べ尽くし、動画サイトにある「世界三大恥ずかしい告白シーン」を見て、勇気と度胸を身につけてきた。
だから大丈夫。絶対に大丈夫だ。
この一年、ひたすら好感度を上げる為に頑張ってきたじゃないか。報われない努力なんてこの世にはない。そうさ、必ず!
顔を上げ、出木杉は決意に満ちた目を前に向ける。その視界にはただ一人、彼女だけが映っていた。
「静香ちゃん、こっち」
「お待たせ」
指定した時間通り、彼女はこの場所へやって来た。出木杉が知る限り現時刻のここは人通りが最も少なく、良好なシチュエーションである。
茶味のかかった黒い髪を二つに束ねた彼女。初めて会った時から好きだった彼女には、今身に纏っているピンク色のワンピースがとてもよく似合う。
ごくり、と出木杉は息を呑む。
いつもと変わらない彼女の姿を見て、自分が今からやらかそうとしていることの重大さを、改めて認識した。
だがもう後には退けない。退く気もない。
来月から彼らは進級し、六年生になる。来年になれば卒業であり、私立の中学校に行くことが決まっている出木杉は、今後どうしても彼女と会う時間が取れなくなってしまう。
だからこそ、伝えるのだ。
彼女の心があの眼鏡男に傾く前に。
「あの、出木杉さん……」
「静香ちゃん。僕は今、どうしても君に伝えたいことがあるんだ」
「えっ?」
自分が何故呼ばれたのかわかっていない様子の彼女に、出木杉ははっきりと理由を述べる。彼の真剣な眼差しに気圧されたのか、彼女――源静香は話の主導権をあっさりと渡してくれた。
深く深呼吸し、破裂せんばかりの心臓の鼓動を緩める。
――行くぞ、出木杉英才。
「初めて会った時から、ずっと君のことが好きでした。今も、これからも、よろしくお願いします!」
この場を通りがかった数人の者には聞こえていたかもしれないが、それがどうした。
思いの丈を込め、彼は盛大に自分の想いを告白した。
静香はある程度予想していたようだが頬を赤らめ、そして――
「私も、出木杉さんのことは好きだけど……」
「本当!? じゃあ……」
「ごめんなさい……友達のままじゃ駄目かしら?」
「えっ」
たった今、出木杉の中で何かが砕かれた。脆く儚いものが、造作もなく。
友達のまま……
友達のまま……
友達のままじゃ駄目なんだよ、静香ちゃん。
僕は君のことがそっちの意味で好きなんじゃない。
「ごめんなさい……! 私、ずっと好きだった人が居るの。泣き虫で甘えん坊だけど放っておけない、いざというときは本当に頼りになる、昔から好きだった人が……」
「……のび太君のこと?」
「ごめんなさい!」
遅かったのか。
僕が手をこまねいている間に、あの男は既に彼女の心を奪っていたのか。
は、ははははは……
何やってんだよ、僕は。
これじゃまるでピエロだよ……。
――出木杉英才の初恋は、無情にも失恋に終わった。
そこから先の記憶は曖昧だった。
わざわざ呼びつけてしまった詫びに駅前の店で昼食でもどうかと誘い、彼女の分も代金を負担して店を出た、ということだけは僅かに覚えている。
その間、彼の心はひたすら負の感情に支配されていた。
出木杉英才に春は訪れなかった。
山に、里に、野に訪れても、彼の元にだけは訪れなかったのだ。
しかしただ一つだけ、訪れたものがある。
荒みきった彼の心をさらに追い詰めるような最悪なタイミングで、招かれざる客が訪れたのだ。
「……で、出木杉さん……あれ……」
恐れを含んだ表情を浮かべ、静香は練馬区の空を指差す。その方向には、ブラックホールのような巨大な穴があった。
約一年前、二人はそれと疑似したものを見たことがある。
次元の歪み。ポケモン世界と彼らの世界をつなぐ穴だ。
今空に見えているものがその類いである確率は高いが、しかしあまりにも大きさが違いすぎた。
「なんだ……あれは……」
大きさもそうだが、そこにある穴からは一年前に見た次元の歪みにはなかった「何か」が感じられた。
危険な「何か」が――。
「来る!」
「えっ?」
出木杉は黒い次元の歪みに目の焦点を合わせ、表情を強張らせる。
次の瞬間、黒い次元の歪みの中から、無数の「影」が飛び出してきた。
実体のない暗黒のそれは、何の前触れもなく、穴から出てくる以前から出木杉に狙いを定めていたかのように、いきなり襲いかかってきた。
「ギャラドス!」
出木杉は即座に懐からモンスターボールを取り出し、開閉スイッチを押す。
咄嗟の行動だった。
五感ではなく、本能が命じていた。
アレは危険だ。
即刻排除しろ、と。
「竜の怒りだ!」
迫り来る「影」に対し、青い竜は緋色のエネルギー波を放射する。
影は意思を持った生き物のように左右へと回避行動を取るが、避けきることが出来なかった一部のものは着弾と同時に、跡形もなく消滅した。
しかし、竜の怒りが消滅せしめたのはほんの一部だった。
この間にも巨大な穴からは無数の「影」が魚群のように飛び出しており、ギャラドスによる攻撃は海に角砂糖を溶かす程度の効果しかなかった。
「ポケモンじゃない……何なんだ?」
明確な形がなく、今は「影」と表現するしかないその姿に、もちろん出木杉は見覚えがない。
ということは、アレはやはりポケモンではないのか?
……たとえ正体が何であったとしても、アレが自分に敵意を持っていることだけは、動きを見ていれば明らかだった。
「ガーディ!」
もう一つのモンスターボールを放り投げ、出木杉は二匹目のポケモン、ガーディを繰り出す。
そのガーディに彼が送った指示は、単純に影と戦闘することではなかった。
「僕とギャラドスであれを食い止める! 君は静香ちゃんを守ってくれ!」
無数の影は獲物を見定めるかのように上空を旋回し、好機を見計らって出木杉の居場所へと降下していく。
ギャラドスの竜の怒りが進行を食い止めるが、数が多すぎて足止めだけで精一杯だ。
「出木杉さんっ!」
「今の内に逃げて! 僕も隙を見て逃げるから」
最優先すべきは自分よりも静香の安全だ。影は今のところ自分にしか興味を持っていないようだが、他の人間を襲わないという保証はどこにもない。
正体も目的も不明だが、死というものが身近に感じてしまう恐怖の感情を、今の出木杉は抱いていた。
彼女にだけはこんな感情を味わせたくない。だから早く逃げてくれ。
「……気をつけて」
「……うん。ガーディ、彼女のことは任せたよ」
ガーディは主人に忠実なポケモンだ。命令に背くどころか、今まで一度として怪訝な態度を取ったことがない。
(そう心配そうな顔するなよ……こんなわけもわからない奴に、僕が負けるか!)
一度も見たことのない、今にも泣き出しそうなガーディの顔に、出木杉は強く「行け!」と命令する。
後方へと遠退いていく足音を聞いて、彼はようやく安堵の息を吐いた。
……これで心置きなく戦える。
出木杉は今も尚穴から出現してくる無数の「影」と、彼に向かって急迫すればギャラドスに撃ち落とされる「影」を一瞥し、そして大きく目を見開く。
「何者なのか知らないけど……君達を許してはおけない!」
こちらの言葉がわかるとは思えないが、出木杉は影に対し、憤怒の声をぶつけた。
努力が報われず、想い人にはフラれ、その挙げ句これだ。
「みんな……みんな壊れてしまえっ!」
その怒りに共振するように「影」は急迫する速度を上げ、いくつかが竜の怒りの弾幕を掻い潜ってきた。
舌打ちし、出木杉はギャラドスの背中に飛び乗る。
「上昇しろ! 街中じゃ戦いにくい」
水タイプのポケモンだが、ギャラドスは飛行タイプでもある。青い竜は尻尾を勢い良く地面に叩きつけると、一瞬にして空高く飛び上がった。
出木杉を狙って襲いかかってきた影の一部は、丁度その下を通り抜けていく。
「触れたらまずい。距離を取って、竜の怒りで応戦しろ!」
影の動きはイノシシのように前進してくるだけだ。しかし決して触れてはならないことを、これもまた本能が命じていた。
触れたら、恐ろしいことが起きると。
指示に従い、ギャラドスは空中を水中のように自在に動き回りながら、向かってくる影と距離を取りつつ竜の怒りで攻撃を仕掛ける。
この一年近くの間で、彼らは多くの野生ポケモン達と戦闘を繰り返し、またそれだけの経験値を積んできた。
パワーは言うに及ばず、スピードもイツキと戦った頃よりも格段に上がっている。
しかし、敵のスピードは出木杉の予想よりも遥かに速かった。
「距離が保てない……!?」
一定の距離を取りながら攻撃出来たのはほんの数秒間だけ。影はさらにスピードを上げ、ギャラドスとの間合いをみるみる内に詰めていく。
……信じられない。
こんな奴らが、僕が手塩にかけて育てたポケモンよりも速いなんて!
「ふ……ふざけるなぁぁーーっ!」
青く光るギャラドスの尻尾の一振りが、半径一メートル圏内に入った影を薙ぎ払う。アクアテール――今のギャラドスが扱える最強の技だ。
続けざまに竜の怒りを放ち、目の前に広がる黒い影を手当たり次第吹き飛ばす。
出木杉は無我夢中だった。
死の狭間に置き去りにされた生き物が生を求め、必死にもがきあがいているかのように。
ふざけるなっ!
僕は出木杉英才だ。運動も勉強も同級生の誰よりも完璧にこなし、今もこれからも、充実した毎日を過ごしていく筈の人間だ。
僕が何をした!?
何の権利があって、無能なアイツらが笑って生きて、有能な僕がこんなところで朽ちなければならない!?
才能だけじゃない。僕は周りの期待に応え続ける為に、誰よりも厳しい努力をしてきたんだ!
何もしてこなかったアイツらより……あの男より不幸になってたまるかっ!
「下等生物がぁぁぁっっ!」
彼の叫びに呼応するように、ギャラドスは現在のレベルでは覚えない筈の技、「破壊光線」を発動する。
死の危機に直面した時、生物は内に秘めた潜在能力を一時的に解放することがある。今がまさにその時だった。
練馬の空に一条の光条が疾り、射線上に並んでいた暗黒の影を一掃する。竜の怒りとは威力そのものが桁違いであった。
しかし不幸にも、今だけはその威力が仇となる。
「どうしたギャラドス!? まだ敵はあんなに残っている! 動け! 動けっ! 動けぇぇぇっ!」
攻撃の反動。常の出木杉なら、相棒の行動不能の意味を理解するのに時間はかからなかっただろう。
とても冷静では居られなかった。
視界を暗黒に染める、影の大群を見てしまっては――。
「うあ゛あ゛あ゛あああああああああああああああああああっっっッッ!!」
無数の黒い影が広がり、ギャラドスと出木杉の全身にまとわりつく。
彼らは影に取り込まれたのだ。
衝撃と苦痛が脳を満たす。塞き止めていたダムが一斉に放水を開始するように、影達は次々と彼らの身体に取り付いていった。
あまりの激痛により、今の彼らにはそれを知覚することも出来ない。
――やはり、触れてはならなかった。
一般の家庭で育った少年にはとても想像のつかないような憎しみの心が、そこにあった。
それは殺意をも超越した、この世のものとは思えない悪意の塊だった――。
投下終了。七色の翼が読みにくかったので改行を増やしてみた。
次回はツバサ登場。主役の出番はもう少し先です
今回は静香の出番を多くしたい。ドラえもん? シラネ
ドwwラwwえwwもwwんwwww
不憫過ぎワロタww
乙。出木杉黒いなwwてか下等生物でフリーザ連想したww
でも出来杉の気持ちもわかるな〜
必死に努力して努力して幸せを得ようとしているのに、
(普段は)な〜んの努力もしないのび太なんかに想い人取られちゃ、そら黒くもなるわ
たしかにな
しかもぐうたらなせいで自業自得な未来がやってくるはずののび太にはチートな仲間が救済に来るし
そんなん努力家からしたら嫉妬したくもなるわな
世界三大恥ずかしい告白シーンなんで動画あるのか
ググったらニコニコ大百科の記事がひっつかかかった
でもどんなに恥ずかしい告白シーン見ても、いざ自分がフラれて見ると途端に自分を凄く恥ずかしく感じる気がする
黒い物体はポケモンの『技』か何かだろうか
次元の狭間
投下します
影の出現に町中が混乱に陥り、居合わせた人々は悲鳴を上げ、逃げ惑う。
源静香もまたそんな人間の一人であり、今はガーディと共に影の傍から離れる為、必死に走っている。
その時、彼女はふと足を止めた。
聞こえてしまったのだ。
出木杉英才の叫びが。
「あ゛あ゛ああああああああっっ!!」
それは聞く者の肌を粟立たせる断末魔の絶叫だった。
その方向に振り向いた瞬間、静香とガーディの顔は青白く凍てついた。
「出木杉さん! 出木杉さんっ!」
静香が視界の奥に映る黒い塊に向けて叫ぶ。彼の姿もギャラドスの姿も見えなかったが、絶叫の発信源がその場所であることは間違いなかった。
餌に群がるピラニアの如く、影は次から次へと彼らの肉体に取りついていく。
「や、やめろ! やめてくれっ! あ……ああああ、あ゛ああああああっっ――!」
ブツリ、とそこで声が途絶えた。
無に近い静寂が静香の感覚を満たす。
今見ている光景が夢であったらどんなに良いかと、現実逃避すらしようとした。
あり得ない。こんなことって……
「出木杉……さん?」
何も聞こえなかった。まるで命の灯火を完全に消してしまったかのように。
嘘よ。
こんなの嘘よっ!
「そんな……そんなことって……」
彼なら大丈夫だと思っていた。心配こそしたが、出木杉英才という男なら、例えどのような屈境に置かれても切り抜けるものだと信じて疑わなかった。
静香は茫然と佇む。
今自分の目の前で、出木杉英才という一人の少年が消えたのだ。
「…そん……な……」
桜の花びらが乱れ散るアスファルトの上に、大粒の涙が零れ落ちる。
だが、それ以上悲しむ暇すら影は与えてくれなかった。
出木杉とギャラドスを文字通り「飲み込んだ」無数の影は、新たな獲物を見つけると、再び一斉に動き出す。
超高速で向かう先は、源静香の居場所だった。
「あっ」
頭の中が真っ白になっていた静香には、即座に行動に移すことが出来なかった。
故に、迫り来る影を前に彼女が出来たのは、黙ってその場に立ち竦むことだけだった。
――次は自分が飲み込まれる。
脳が自らの危険を呼び掛けるが、静香には身じろぎすら出来なかった。
迫り来る暗黒の影は彼女の心に深海よりも深い絶望と、究極の恐怖を与えた。
「きゃああああああっ!」
視界全体を覆う暗黒の影を見て、彼女は初めて悲鳴を上げるという簡単な反応が起こせた。
しかし、そんなものはこの状況下では何の意味もなさない。
彼女の悲鳴を聞いても、ガーディの火炎放射を浴びても、影は進行を止めない。それは人間が持つ恋愛感情にも似た執着ぶりであった。
「シャドーボール!」
影の進行が彼女から半径三メートル圏内まで差し掛かってきた次の瞬間、上方から飛来してきた漆黒の球弾が、迫る影を消滅させた。
ハッと空を振り仰ぐと、こちらへ向かってくる一匹の鳥ポケモンの姿が映った。
「ツバサさん……!」
彼女の危機に間一髪で駆けつけたそのポケモンの背中には、昨年の夏休みに出会った白い少女の姿があった。
身長はあの頃よりは少し高くなったように見えるが、十二歳の少女の平均よりはまだ下回っている。
服装はあの頃と似た白を基調としたものだが、頭には帽子を被っておらず、艶やかな黒髪が露出している。
重力に逆らって一部跳ね上がった特徴的な前髪は、どこかで見たような――気もするが、今の彼女にはそんなことを考えている余裕はなかった。
「ツバサさん、どうして……」
「急いでヨルノズクの脚に掴まって! ガーディも!」
「え、ええ」
金色の瞳の少女、ツバサ。
約一年ぶりの再会とは思えないやり取りも当然である。今は一刻を争う事態だ。
先ほど彼女のヨルノズクが放った「シャドーボール」が消滅させた影は、この場に存在している影の百分の一にも及ばない。他の影は依然静香を狙っており、到底気を緩められる状況ではなかった。
「しっかり掴まって!」
「ツバサさん! 出木杉さんが……」
「話は後で聞く! 今は逃げるのが先よ! ヨルノズク、空を飛ぶ!」
静香がヨルノズクの右足を両腕で掴み、ガーディが背中に飛び乗ってくるのを確認すると、ツバサは額から多量の汗を流しながら、焦りに満ちた顔でヨルノズクに指示を送る。
両翼の抑揚と同時に彼女らは一気に上空へと昇り、後方から迫る影の大群を振りきった。
「……追ってこないわね。諦めたのかしら」
「………………」
追撃を覚悟していたツバサは影との距離をあっさりと引き離すことに成功したことに意外そうに呟いた。
ひとまず彼女らは助かったのだ。
……しかし。
「話は地上に降りたら聞くわ。私もお前に訊きたいことがある」
「……ええ」
静香には訊きたい話が山ほどある。
アレは一体、何なのか?
そして彼女はアレを知っているのか、等――。
練馬駅から数キロ離れた地に、ヨルノズクは降り立つ。そこは、周囲に人気のない山だった。
学校の裏山より一回り大きいこの山は自然にも恵まれており、野生動物はもちろん、何匹もの野生ポケモンが住み着いている。以前静香はその野生ポケモン達を保護する為に、出木杉と共にここを訪れたことがあった。
ヨルノズクをここに降ろした理由は、恐らく人気がないからと、もしもの時に隠れる場所が多いからだろう。
足を着けた静香は、すぐにツバサと向き合う。だが、いざ話そうとなると中々話しにくいものだ。
数秒の沈黙を破ったのは静香でも彼女でもなく、彼女が胸に下げた金色のモンスターボールだった。
『今まで感じたことのない、野生ポケモンではあり得ないような強い気配を感じた。我々はそれを追い、海を渡ってあの場所へ向かったのだ』
「到着した時真っ先に見つけたのは、あの黒い物体に襲われているお前だった」
『我々が来るまで、貴様は何をしていた?』
大方予想はついていた。それが、金色のモンスターボールと彼女が自分に訊きたい話なのだろう。
静香は影の射した顔で受け答える。
「実は……」
静香は話した。
影のようなあの黒い物体が現れたのは本当に突然であり、現れるまで何の前触れもなかったことや、一緒に居合わせた出木杉が、あれに「飲み込まれた」ということを。
「なんですって!?」
両の目を大きく見開き、ツバサが驚愕の声を上げる。
出木杉英才は飲み込まれてしまった。自分を逃がす為に戦って、その結果……。
ツバサは奥歯を軋め、右手に作った握りこぶしを強く握りしめる。
「じゃあアイツは、アイツもあそこに居たってことじゃない……!」
知らなかったとは言え、出木杉を置き去りにして逃げてしまったことを悔やんでいるのだろう。ツバサの表情は、彼女自身に対して憤っていた。
「……出木杉さん……」
静香は今にも泣き出しそうな思いだった。
自分を先に行かせてくれた彼の顔と、「影」に飲み込まれてから上がった断末魔の叫びが、脳裏に蘇る。
そう、断末魔の叫び。
あれは死に行く人間そのものだった。ドラマやアニメなどとは比較にならない、現実の――
「ううっ……」
思い出すことも、静香には堪えられなかった。両手で頭を抱えてうずくまり、止めどない涙の粒が次々と地面に落ちる。
……ないわ。
こんなこと、ありえないっ!
出木杉さんは良い人だった。とても大切な、かけがえのない友達だった。
私が困った時はいつも助けてくれるのに、自分が困った時は一人で悩んで一人で解決してきた。
自分に厳しいのに他人には優しい。そんな彼のことが静香は好きだった。
最高の、友達だった――。
「どうして……どうして出木杉さんなのよ……!?」
現れた瞬間から、影は出木杉一人に狙いを絞っていたように思える。彼を飲み込んだ後は自分を狙ってきたが、優先的な標的が彼であったことは確かだ。
理不尽だ。彼のような立派な人間が命を落とすなんて。
……いっそ、自分が飲み込まれれば良かったのに。
そうよ。私を逃がす為に彼が飲み込まれるなら、彼が逃げる為に私が飲み込まれれば良かったんだわ。
最後の最後まで彼を悲しませて、私は……
「あっ……?」
どんっ、と不意に静香の背に衝撃が走り、咄嗟に両膝と両手を地面に着ける。
後ろを向くと、そこには右手のひらを突き出しているツバサの姿があった。
「なんか危険なことを考えているみたいだったから」
「……ごめんなさい……ありがとうツバサさん……」
それを言われて、静香はハッと我に変える。マイナスの感情がマイナスを呼び、下手をすれば己の身を滅しかねないほどの精神状態だった。
彼女にとって目の前で友達が「死んだ」という光景は、それほどのものだったのだ。
「まだ死んだって決まったわけじゃない。わからないじゃない、そんなの」
ツバサは静香から踵を返し、二本の足で佇んでいるヨルノズクの方を向く。
そして無言でその背中に乗り込もうとする彼女を、テレパシーが呼び止めた。
『何をする気だ?』
「決まっているじゃない。出木杉英才を連れてくる!」
『待て、あの物体は得体がしれない。迂闊に飛び込むのは危険だ』
「じゃあどうしろって言うのよ!? 私達がもっと早く到着していれば、アイツは助かったかもしれないのよ! 責任は私達が……」
『情報のない敵に無策で挑むべきではないと言っているのだ』
「嫌よ! 私は――」
『いいから待つのだっ!』
「――ッ!」
金色のモンスターボールの中から放たれるテレパシーが、雷のような衝撃を持ってツバサと静香の頭に突き刺さる。
静香は、特にツバサは驚いていた。
テレパシーの主、ホウオウは普段から落ち着いた口調であり、滅多にそれを荒げることはない。
今のはあまりにも必死で、ツバサが聞いたことがないほどに余裕がなかったのだ。
「……あの黒いの、そんなに危険なの?」
『今は判断しかねている。……だが、我が持っているこの疑惑が真実だとすれば、奴は危険などという生易しい言葉では済まされぬ』
常の冷静な口調に戻ったホウオウが放ったその言葉に、ツバサは眉間にしわを寄せる。言っていることが回りくどく、煮え切らない感情を抱いたのだろう。心境は静香もまた同じだった。
ホウオウはあの「影」について何か知っている。知っているのに、話すことを渋っている。ツバサはうっすらとそれを感じていた。
すると、静香が思い出したようにツバサに問いかける。
「貴方はあれのことを、何か知らないの?」
「知らないわよ。私だってあんな奴見たことない。そもそもポケモンなのかどうかもさっぱり……
ホウオウは何か知っているんでしょう? 隠してないで教えてよ」
静香にわからなかった「影」の正体は、ツバサにもわからないと言う。
そのツバサが、金色のモンスターボールに問い詰める。
しかし、効果は薄かった。
『すまないがこの疑惑が晴れぬ内には、その問いに答えることは出来ぬのだ。特にツバサ、お前にはな』
「なんでよ? ……まあ、いいけど」
ホウオウのことは今この世界に居る誰よりも信頼しているし、必要な情報は包み隠さず話してくれる性格であることを、ツバサは知っている。
そのホウオウが話したがらないのだから、少なくとも現時点では知る必要のない情報なのだろう。だから無理に質そうとは思わない。
だが、
「じゃあ、貴方が持っているって言うその疑惑って、一体なんなの?」
先程から言っている「疑惑」というものがどうしても気になる。これは必要な情報かそうでないかとは関係なく、単にツバサが知りたかったのだ。
しかしホウオウは当然のように言った。
『答えられない』
教えたいことには教えたいが、誰かに釘を刺されているので教えられない――ような、ホウオウの口振りである。
疑惑とは言ったが、ホウオウはほとんど確信していた。
あの影の正体を。
しかし、今はまだ話したくなかった。
話せば間違いなく、その過程で彼女が心に傷を負うことになる。
無論、この疑惑が真実だという確証を得た際は、洗いざらい全てを話すつもりだ。
――どうか杞憂で終わってほしいものだ。
最悪の事態など、ホウオウには考えたくもなかった。
投下終了
主役の出番はもう少し後。
ドラなんとかの出番はもっと後。
20年後…
野比のび太30歳、やっぱり童貞
乙。「嫌な予感しかしない」ってやつだな。ほぼ確実に的中するやつ
てかいつかは出番来るのかアレ
おつ
タイトルの銀色の亡霊の仕業か?
ファファファ
キョウさん
誤爆
あげ
保守
187 :
忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2011/11/30(水) 20:45:30.77 ID:/MQpJF0C0
ほ
投下します
『――影の気配が消えた』
山に数時間ほど待機していると、不意にホウオウが言い放った。
練馬駅の空をしばらく浮遊していた影の気配が、いつの間にか消えていたらしい。
ホウオウの気配感知能力はツバサが野生ポケモンを捜す際にも何度も役立ち、彼女はそれを非常に信頼している。
ホウオウが言うことなのだから間違いないのだろう。
確認の為、ヨルノズクの空を飛ぶを使ってツバサは静香を連れずに練馬駅に戻った。
やはり、影の姿はなかった。
まるで全てが幻想であったかのように、見事にその存在を消失させていたのだ。
時刻は午後七時。門限が五時と決まっている源家にとっては、随分と遅い時刻だ。
これ以上の外出は親に心配をかける。ツバサからとりあえず今の練馬区には危険がないことを伝えられ、静香はツバサに送られて帰宅する。
彼女を無事自宅に送り届けたツバサはすぐに踵を返し、その場を立ち去ろうとする。
今日は疲れた。身体的にではなく、精神的に。
適当なホテルに泊まり、今日の捜索は打ち止めにしよう――と決めた時だった。
「よかったら、私の家に泊まらない?」
静香が懇願の目を向けて呼び止めてきた。
怖いのだろう。家には家族が居るとはいえ、ポケモントレーナーではない彼女には自衛の手段がない。ガーディが着いてきてくれるようだが、とてもではないが「影」には太刀打ち出来そうにない。
もし、あの時のように突然襲い掛かってきたら……と不安に思っていることは、僅かに震えるその両肩を見ればわかる。
仕方ないわね、と普段の調子で受けるツバサだが、どちらにせよ一度影に襲われた彼女のことは見張っていくつもりだった。
彼女まで、自分の知らないところで失いたくない。
「いいわ。だけど気休めにしかならないわよ」
「ありがとう。本当に……」
今にも泣き出しそうな顔をしていた。そんな顔を無視出来るほど、ツバサは非情ではない。
静香を先頭に、二人と一匹は源家へと入った。
静香の両親は二人とも気の良い人で、部外者であるツバサが家に泊まることを快く承諾してくれた。
彼女はツバサのことを隣町で会った友達だと、細かいところは軽く流しながら、特に無理のない紹介をしてくれた。本人いわく嘘は苦手らしいが、中々上手いものである。
「あら、ガーディちゃんじゃない。どうしたの?」
「出木杉さんがしばらく預かってって……だから……」
「わかったわ。こんな犬が欲しかったのよね〜」
静香の母は腰を下ろして腕を広げると、ガーディを腕に抱え、頭を撫でる。
静香が言うにはガーディは既に彼女の両親と面識があり、出木杉が飼っているペットとして母にも気に入られているとのことだ。
ポケットモンスターという生物が現実の世界に存在していることは、今や世界中の誰もが知っている。
元々はゲームやアニメ、いわゆる二次元の存在だったポケモンだ。当初世界は酷く混乱していたものだが、その時よりは幾分か落ち着いてきているとは言える。
幸いなのは野比のび太達ポケモントレーナーの存在が公にされていないこと、そして、野生ポケモン達の居場所が人里離れた山や森の奥地に固まっており、滅多に人前に姿を現さないことだ。
イツキとの決着以後、特に人を襲うような事件も聞かず、今は珍しい動物程度の認識で済んでいるようだ。
だが、いつまでもそうはいかないだろう。
ポケモンの力を知っている人間がその脅威性を訴え、野生ポケモンに危害を加えるかもしれない。
増えすぎたポケモン達が山や森に収まりきらず、住宅街に住み着く可能性もある。ピチューやコラッタ程度なら大して危険ではないが、凶暴なポケモンも何匹か居る。
それに、次元の歪みがこの次元空間に与える影響も計り知れない。ホウオウの顕現などという無茶をした割には不気味なまでに安定しているが、放っておけば世界を滅ぼしかねないものであることは明らかだ。
故に、ツバサは野生ポケモンの保護、次元の歪みの補修を毎日行っている。
それは彼女にとって果たさなければならない、一つの使命なのだ。
源家の食卓にて夕食を取ったツバサは、二階にある静香の部屋まで案内された。
「お風呂に入ってくるから、くつろいでて」と言い、静香はツバサを置いて自室を後にする。
一応彼女からは先に入るかと聞かれたが、ツバサは後で構わないと断り、彼女を先に行かせた。
一人残った部屋の中、ツバサはベッドの上に背中を倒し、楽な体制で胸元に下げた金色のモンスターボールに問いかける。
「……なんで影が突然消えたのか、わかる?」
答えるのは雷のように低い声。
『……うむ』
答えは肯定。わからないと返してくるものばかりと思っていたツバサは一瞬目を見開き、バッと上体を起こす。
「わかるの?」
『一度姿を現したと思えば、ほどなくして忽然と姿を消す。同じだ、あの時と』
「あの時?」
しばらく黙っていたのは何かについて考え込んでいたからだろう。そしてようやく、その考えがまとまったと見える。
ホウオウの言葉は先までよりは歯切れが良かった。
『奴が姿を消したのは、場所を移したからだ。この世界にあるどの場所よりも遠い場所へ……奴の住み処である反転世界へと』
「反転世界……?」
聞いたことのあるような、しかし耳に覚えのない、親しみのない単語だった。
困惑の表情を浮かべるツバサの前で、金色のモンスターボールは話を続ける。
『そう、反転世界……破れた世界とも呼ばれる、この世の裏側に存在する世界だ』
「あの影はこの世界からその世界へと移動したってことね」
『うむ。……それがわかり、我は奴の正体を確信した』
これまで見てきた情報が一つになり、ホウオウは影の正体を突き止めたようだ。
だが、やはり自分には話したくないという気持ちが無意識に感じ取れる。
ホウオウはいつだって重要なことは話してくれた。口数は少ないが、自分に対して隠し事をすることはなかった筈――いや、それはツバサがそう思っていただけで、本当は色々なことを隠しているのかもしれない。
「私は……知りたい。あれの正体を知ることで私が不幸になっても、ホウオウには隠し事をされたくない。だから、話して?」
家族から、父親代わりをしてくれた彼には隠し事をしてほしくない。それが自分に不利なことなら尚更話してほしいと思うのが、ツバサの性格だった。
『後悔はないな?』
後悔するかもしれない。
それでも知りたい。
『……わかった。奴は――』
呼吸が止まる。
意識が集中する。
判決が下される瞬間のように、部屋の空気は張りつめた。
『奴の名は霊竜……お前の父、ゴールドの宿敵だ』
それからホウオウが語り始めた一つの物語は、今まで構築してきた彼女の世界を一瞬で消し去った。
全てを話し終えた後、静香が風呂場から帰ってくるまでの間、彼女の金色の瞳には、一滴の涙が溜まっていた――。
投下終了
お待たせした割に投下量少なくてすみません
次回は主役登場。投下まで時間かかると思います
乙。お大事にしてください
前作の伏線はこれだったというわけだな
さて、どんな話が来るのやら…
久々に投下キター
霊のムカデポケモンが来ますな
ムカデww
続きに期待
保守
あ
201 :
忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2011/12/18(日) 19:57:19.40 ID:L039zrES0
ほしゅ
年内にあと1回投下来るかなぁ
保守
あげ
あけおめあげ
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/ / //⌒
/ (゚)/ / /
/ ( /。⌒丶。
| \\゚。∴。o
,'ヽ, ゙liヽ i゙\\゚。:o
_ iヽ,,i、;;゙--、__,,ll | i \U∴)
:(,`;;,,-;';; ;;;゙゜:::::::: ;;,ii゙ .| ゙、 ゙U|
l,''::::::::::::: :: ;;゙_;;,i゙ | ゙、 ||
.<'ヽ'゙`;r'::::::::::::::。:/゙,丿 | ゙、 U
)l!、r‐;゙:::::;;;‐,r:,;i゙ノ /l | i
<,゙_r;'⌒ヽ__;ノ o |/ ノ |
,丿o ο ___ / 人,
.._,,,r'´ _,,,---'´ ゙ヽ/ ,ノ `ヽ、
(_ ,(,,,, _ __) ,/─----、`ヽ
 ̄ ヽ、'''─-─'' ̄ ノ---──'゙``'─--─ー'゙
207 :
名無しさん、君に決めた!:2012/01/06(金) 21:01:20.29 ID:rxPdT5dZO
サクッという音と共に、背に鈍痛を感じた。振り返ると果物ナイフを手にした、スネ夫がいた
208 :
名無しさん、君に決めた!:2012/01/07(土) 11:03:16.78 ID:8mqqHv5LO
スネヲ「執行猶予中だから、遣り返せねえだろう(´Д`) ケケケ」と旨そうにタバコの煙を飲んだ
ジャイアソ「カエサルのものはカエサルに」
210 :
名無しさん、君に決めた!:2012/01/10(火) 16:19:18.43 ID:+VA/OyO/O
シルクハット伯爵「祭りかのう?祭りかのう?
211 :
名無しさん、君に決めた!:2012/01/14(土) 14:11:48.60 ID:qVICnS2YO
スネ夫のナイフはシルクハット伯爵からのおくりものだた
212 :
名無しさん、君に決めた!:2012/01/19(木) 18:01:57.31 ID:85La7z6wO
もうすぐあがれそうだ、ギラギラした目で牌を睨んだ
,z'='ゝ、__,ィ!
_ __,,.、/ミミミミミミヲ'__
、___,,ィイミミミ>‐'`'‐v':::::::::`:,'´``ヽミミミミミミミニ=-_,,.ィ!
ヽ,、____\ミミミミ>:::::< 'z::::::::;:ィ' ,i゙ミミミミミミミヾ砂炒′
ミッ、__\ミミミミミ`ミミ〉:::::::`:ッ.._,.ノ `ー^゙ `'ーー'ヾミミミミミミ三=ヌ彳ッ、
兮兌來W=ミミミミミミミ>‐-'゙´ ヾミミミミx自慰或゙´
,>安為益ミミミミミミ'! ,.,,.、,ィ i弌冦圦早ゞ''´
;=弌生理域圧ェェェッミ! _ゝォ;ェ、 ,姉欹ヽ、 ̄`゙`
`゙ヾ冬/変>'゙'y !::傚 s ゙恩てノ 1
/゙´ ,゙ 'つ汐′ ;一'l `~´ ,y′
,-'、、 ヽ_ノ ,ィr〈
,, -―==-! `゙ーャ、___、___,,.ィ<‐'´ 丿
/_ ヾ、_ ゙Yjor、o0゙´_/
'"´ ``‐、- _ `> r' ' !、 |
ヽ、 ! ヽ'´ ゝ゚.r'′/
`ー-ヘ ` ゙ー'′ ヽ
゙t'__ l
``ー ..,,__ く
`ー―‐′
214 :
名無しさん、君に決めた!:2012/01/23(月) 20:08:36.42 ID:ijtBS3dnO
安部はこれは素人の業ではないと呟いた、
215 :
名無しさん、君に決めた!:2012/01/26(木) 18:17:42.57 ID:7hULC6UkO
「このあたりに腕の立つ料理人がいるときいたんだがな。」と尋ねた、男は興味もなく答えた「中華料理ならな。」
料理人つまり始末屋、中華料理つまり■続く■
(ざわ・・・・ざわ・・・・)
217 :
名無しさん、君に決めた!:2012/01/27(金) 16:35:00.17 ID:ZCnLnx98O
ほらッ、と男は俺にマッチを投げた
マッチ箱の中にはトイレットペーパー片に携帯の番号があった。
それを携帯に打ち込むと、俺はマッチで焼き灰皿に棄てた
銅鑼衛門「ノルもっと〜!!カブカブ〜!!」
しずか「大変、のび太さん!!ドラちゃんが狂ったわ!!」
のび太「詳細は今夜7時、地デジ6チャンネルで!!」
期待あげ
220 :
名無しさん、君に決めた!:2012/01/28(土) 09:27:04.93 ID:czDzIYNFO
ジャイアンが震災復興支援キムチを売りにきた、一袋千五百円で三袋からだそうだ。
けんじゃのせんたく、
●ぜんりょくできょひ。
●せっかくなんでかふ。
●なぜきむちなんですか?としつもんする
→●ふつうにきふする。
他にもSSを、書いているスレが今もあるのはご存知か?
ドラえもんはライチュウを食べた。のび太はスネ夫とダークライを食べた。スネ夫はふしぎなあめをいっぱい食べた。
スネ夫は幻覚を見た、それはこんな感じだ
225 :
名無しさん、君に決めた!:2012/01/29(日) 23:35:04.66 ID:PWp4IP+z0
ふしぎなあめが空から雨の様に降ってくる・・・!
おや?ドラえもんのようすが…
おめでとう!ドラえもんはチャオブーに進化した!
お待たせしました。
この流れで投下して良いのかわかりませんが投下します
――大丈夫。
標高三千メートルを超える高山の頂上に、神を奉る神殿がある。
その場より二本の脚で立っている人間は、眼鏡をかけた少年が一人。
青髪の男性や複数の少年少女達も居合わせてはいるが、皆神殿の地に伏している状態で、「立って」いるのは彼だけである。
『大丈夫なものか……創造の神を相手に、お前一人で戦うつもりか?』
少年の視線の先にあるのは光で造られた天に続く階段。彼は単身で、無敵の力を持った神に挑もうとしているのだ。
愚かなことはやめろ……と、そんな彼に制止の声をかけるのは、身体中が傷に覆われた「空間の神」と呼ばれる白いポケモンである。
しかし少年は、その声を受け入れなかった。
幼い顔に何かを悟った表情を浮かべ、彼は振り向いた。
――楽しかったよ。
――本当に、楽しかった。
――ありがとう、一緒に居てくれて。
――ありがとう、僕と出会ってくれて。
他の誰のどの笑みよりも深く綺麗で、ヒトという存在が再現出来る最高の笑顔で彼は言った。
それが少年が浮かべる最後の笑顔になることを、この時から空間の神は知っていた。
『…オレとの出会いがお前から……お前から全てを奪ってしまった。……オレが……お前と出会いさえしなければ……!』
――そんなこと言わないでよ。
――僕は奪われてなんかいない。
――大切なものをいっぱいくれて、いっぱい教えてくれたのは、君だったんだ。
空間の神の両目から、冷たい液体が滴り落ちる。
それが涙であることを、彼の神は知らなかった。
そんなものを流している力はあるのに、戦う力は何も残されていない。
現状に憤る神に対し、少年はずっと優しかった。
――アルセウスの怒りは、全部僕が受け止める……だから君は心配しないで、パルキア。
――またいつか、冒険しようね……!
別れの言葉までも笑って言い切ってみせた。
光の階段を駆け上がっていく彼の後ろ姿を、傷だらけの神は祈りながら見送るしかなかった。
――その後、神と少年が再会することはなかった。
春休みが終わり、練馬区○×小学校は本日、始業式を迎える。
体育館の床に三角座りで腰を下ろしている全校生徒の中で、野比のび太は一人退屈そうに欠伸をしながら校長の話を聞いていた。
ここで熟睡しないのは去年からの大きな進歩だが、その意識も長くは持ちそうにない。
約二十分にも及ぶ長ったらしい校長の話が終わると、彼の我慢は遂に限界を迎えようとしていた。
――しかし。
「ヒビキ・ツバサです。よろしくお願いします」
先まで続いていた老人のしゃがれ声が、知らぬ間に少女の高い声色に変わっていた。
いや、のび太の意識がぷつ切れている間に、マイクを持つ者が老人から少女へと替わっていたのだ。
どうやら今年度新しく各クラスの仲間入りをすることになった転入生の紹介が、知らぬ間に始まっていたらしい。
いや、転入生が集会で自己紹介するのは毎春恒例であり、それ自体は何の問題もない。
問題なのは数人居る転入生の内の一人。先ほどのび太の意識を一瞬で覚醒させた、黒髪金眼の少女の姿と声だった。
出席番号順により、のび太より前の位置に座っている剛田武ことジャイアンが飛び上がるように顔を上げ、同じように驚いているのがわかる。
後ろを向けば、骨川スネ夫が細い目を極限まで開き硬直している姿が、そしてそんな彼の反応を楽しむかのように笑んでいる源静香の姿があった。
欠席の出木杉も含め、彼らは今年も運良く同じクラスになれた。しかしそれがさして大事と思えないほど、彼らがこの時受けた衝撃は大きかった。
「それではツバサさん、改めて自己紹介を」
始業式を終え、新たに決まった六年生の教室に戻ると、例の転入生が改めて自己紹介を促される。
これもまた運良く、彼女ものび太達と同じクラスだったのだ。
「ヒビキ・ツバサです……」
やっぱり、あの子だ……。
一年前の夏、共に戦った異世界の少女。
黒板に書かれた名前は「響翼」。漢字なのは、ここでは日本人扱いになるからという理由だろう。
聞きたいことはたくさんある。だが、今は純粋に、彼女と再会出来たことが嬉しかった。
自己紹介を手短に済ませた彼女は担任教師に誘導されるまでもなく、人の座っていない座席――静香の隣へと腰を下ろした。
表情は憮然としていて、状況に慣れていない為かどこか硬い。静香がそれを微笑みで溶かしている姿が印象に残った。
初日ということもあって始業式後の授業はクラス係を決めるなどの学級活動だけだったが、それが終了した後はクラス一同、特に女子連中による転入生への質問攻めが忙しかった。
どのくらい忙しかったかと言うと、それは真っ先に話しかけようとしたスネ夫がボロ雑巾と化して吹き飛ばされるぐらいだ。
これがただの転入生ならば物珍しいからというだけで終わるのだが、何分彼女は他人を引き付ける整った容姿を持っていた。第一印象とは所詮容姿で決まるものなのだ。
クラス一同の第一声が男女問わず「カワイイ〜!」であったことから容易に予想出来る事態だった。
ようやくほとぼりが冷めたのは皆が帰路に着く放課後だ
先に話しかけたのはヒビキ・ツバサその人の方だった。
「話したいことがあるから、屋上来て」
「う、うん」
再会を喜んでいる暇はない。彼女の金色の瞳はそう言っていた。
話したいことというのがろくでもない話であることは、聞かなくてもわかる。
故にのび太は言葉少なめに頷き、荷物をまとめて階段へと向かった。
戸籍やら手続きやら細かな面倒事は万能な親族に任せ、ヒビキ・ツバサが響翼として○×小学校に転入してきたのには理由がある。
大いに私情を挟むが、それは友人を自分の近辺で監視する為だ。のび太達をいざという時に「影」の魔の手から守る為に、出来るだけ彼らの近くに居ようという魂胆である。
「影」はあの日以来姿を現していないが、ホウオウが言うには間違いなくこの練馬区に潜んでいるとのことだ。
どうやら強大な気配が街の中で現れたり消えたりしているらしい。
それこそが霊竜の気配だと、ホウオウは断言していた。
『貴方は無理しなくて、こっちに帰ってきていいのよ?』
この間、久方ぶりに連絡を取った母親から言われた言葉を、ツバサは回想する。
これから自分がしようとしていることがどれほど危険か、彼女にはそれがわからないわけではない。
『何とかしてシルバー君やレッドさん達を応援に行かせられるようにするから、お願い……』
最初は提案の調子だった母の言葉は、次には完全に頼みの言葉に変わっていた。
『……貴方まで、居なくならないで……!』
娘から霊竜を相手にする話を聞いた時の母の反応は、彼女のものとは思えないほど酷く怯えを含んでいた。
霊竜――それはかつて、死を司る神と呼ばれたポケモン。
ゴールドとシルバー、レッドの三人がかりでようやく打ち倒すことが出来た最強にして最悪のポケモンである。
人やポケモンに乗り移ることで生命エネルギーを吸収し、自分の力にすると聞いた。
行動の目的は不明。だが放置すれば惑星上の全ての生物が全て死に絶える危険性がある。
ホウオウが居るとしても、ツバサだけの力ではどうすることも出来ない存在なのだ。
しかし彼女は守りたかった。
初めてできた友人達を、ただ守りたかったのだ。
もう自分を誤魔化さないと決めたから、今は傍に居たかった。
投下終了です。
最近中々書く時間が取れなくてすみません。もしかしたら打ち切りになるかもしれません……
その時は最終回までのプロットを載せます。ネタ切れなわけではないので悪しからず。
age
乙!待ってたぜ!
ツバサがかなり健気になってるな
237 :
名無しさん、君に決めた!:2012/02/03(金) 00:43:50.37 ID:lQIgJhH+0
おつ
age
保守
hosyu
| |
| | ,z'='ゝ、__,ィ!
_ __| |,,.、/ミミミミミミヲ'__
、___,,ィイミミミ>‐'`'‐v'::::| |:::::`:,'´``ヽミミミミミミミニ=-_,,.ィ!
ヽ,、____\ミミミミ>:::::< 'z:::| |:::::;:ィ' ,i゙ミミミミミミミヾ砂炒′
ミッ、__\ミミミミミ`ミミ〉:::::::`:ッ.._,.ノ `| |ー^゙ `'ーー'ヾミミミミミミ三=ヌ彳ッ、
兮兌來W=ミミミミミミミ>‐-'゙´ | | ヾミミミミx自慰或゙´
,>安為益ミミミミミミ'! | | ,.,,.、,ィ i弌冦圦早ゞ''´
;=弌生理域圧ェェェッミ! _ゝ=;=、 | | ,三三Yヽ、 ̄`゙`
`゙ヾ冬/変>'゙'y !::三三 | |s ゙三三ノ 1
/゙´ ,゙ '三三′ ;| |一'l `~´ ,y′ <キャアアアアアアアアアアアアアア!!!
,-'、、 `| |_ノ ,ィr〈
,, -―==-! `゙ーャ、___、_| |__,,.ィ<‐'´ 丿
/_ ヾ、_ ゙Yjor| |、o0゙´_/
'"´ ``‐、- _ `> r' | |' !、 |
ヽ、 ! ヽ'´ ゝ| |゚.r'′/ ←
>>213 `ー-ヘ ` ゙ー| |'′ ヽ
゙t'__ | | l
``ー ..,,__ | | く
`| |ー―‐′
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あげ
ほしゅ
あげ
245 :
名無しさん、君に決めた!:2012/03/02(金) 22:09:43.79 ID:kKDrRn0WO
3月保守あげ
hosyu
あげ
ドラーモン氏の大長編の続きって投下されて・・・ないよね
あげ
昨日のドラえもんの映画はよかったなあ、ポケモン映画とはレベルが違う
さあ、覇王クウガも落ちてるな…
保守
しゅほほ
ほっちゅ
もうすぐ音沙汰なしで二ヶ月なわけだが
支援
ほっちゅりん
ほしゅー
ドラえもーん
〜春休み終了のお知らせ〜
あげ
どどどどどらえもん
さげ
あげ
ほしゅ
ほ
依頼により避難所から転載
381:AC兼のび太と銀色の亡霊 ◆XbJjp4HhQQ
12/05/22(火) 21:55:41 ID:rvWuPLog
お待たせしましたスミマセン。本スレの銀色の亡霊の方が完結までの連載が難しくなったので、前回言った通りプロットを載せます。
規制で向こうには載せられなかったので、こちらになります。
382:のび太と銀色の亡霊 ◆XbJjp4HhQQ
12/05/22(火) 21:58:11 ID:rvWuPLog
ツバサ、のび太達四人を屋上に集め、出木杉が行方不明のこと、彼を襲った「影」のことを話す。何か怪しいことがあればすぐに伝えに来るように忠告する。
↓
のび太、二日後の帰り道でドラえもんと再会。ドラえもんはタイムマシンではなく、時間の神、ディアルガに乗って現れた。ドラえもんは著しい歴史の改変によって未来の世界が間もなく消滅することを告げる。ディアルガは消滅を防ぐ為に奮闘していたのだが、限界が来ていると。
↓
ドラえもん、のび太と抱擁を交わし消滅。ディアルガは「出来る限りは足掻いてみよう」と言い残し、時間の乱れを直すべく飛翔。
↓
のび太、以上のことをツバサに報告。
↓
一方、骨川家ではスネ夫が外出中の母の帰りを待っていた。母は夜遅くになってようやく帰ってきたが、何やら様子がおかしい。
↓
スネ夫母、スネ夫に暴行。首を絞められ、スネ夫はわけもわからないまま意識を失いかける。
↓
ツバサが救援に駆けつけ、スネ夫母に攻撃。怯んだところに虹色の羽根を投げつる。
羽根が当たった瞬間、スネ夫母の身体から黒い闇が離れていった。スネ夫母は気絶。
↓
土曜日、五人は静香宅にて会議を行う。
「影」は人間に乗り移る。その正体は人間に対し深い憎悪を持ったポケモン達の亡霊だ、とツバサは告げる。
五人はそれぞれの感情を抱くが、共通して「影」との戦いを決意する。
↓
練馬区を中心に100人以上もの都民が行方不明になっていることを、テレビのニュースで報道される。そしてのび太達の学校は休校となる。
↓
ツバサへの報告と連絡を徹底することを条件に、のび太達は五手に分かれて区内の捜査を始める。
↓
のび太、裏山の捜査中に不可思議な空間に引き込まれる。そこには空間の神、パルキアの姿があった。
↓
第一声はテレパシーによる『久しぶりだな』という言葉。パルキアは以前、別の世界ののび太と出会ったと言う。その世界ののび太はパルキアの恩人で、世界を救った英雄だったと話す。
パルキアの全身は傷だらけで、何か恐ろしい敵と壮絶な戦いを繰り広げていたようだ。
聞けば一年間もの間、次元の狭間で「霊竜」と戦っていたのだと答える。一度は「霊竜」に実体を消滅させるほどのダメージを与えることに成功したが、その戦いが時間と空間に多大な影響を与え、この世界に次元の歪みを生み出してしまったのだと告白する。
イツキの来訪も、元を辿れば彼らの戦いが原因だったのである。
↓
パルキア、のび太と同行。モンスターボールの中で傷を癒す。
↓
スネ夫、コンビニにて赤紫色の髪の青年を発見。それは今まで彼らが死んだと思っていたイツキだった。
スネ夫は気づかれないようにストーキングし、イツキは廃ビルの前で足を止めた。
↓
ホウオウ、今までにない強大な気配を感じる。気配は学校の屋上にあると言い、ツバサはヨルノズクで向かう。
270 :
名無しさん、君に決めた!:2012/05/24(木) 01:59:17.29 ID:LLsLvaSc0
383:のび太と銀色の亡霊 ◆XbJjp4HhQQ
12/05/22(火) 21:59:52 ID:rvWuPLog
↓
○×小学校屋上、そこには行方不明だった出木杉の姿があった。
降り立ったツバサは彼と対峙する。
↓
出木杉は出木杉であって出木杉ではない。その正体は彼の肉体に乗り移った「影」であり、全ての亡霊を統べる王――ツバサらが霊竜と称する最悪のポケモンだった。
↓
ツバサ、ホウオウ以外の全てのポケモンを繰り出すも彼が繰り出した黒いギャラドスの前に惨敗。敗れたツバサは彼の周りに出現した数多の「影」に飲み込まれ、意識不明に陥る。
↓
その「影」に気づいたスネ夫以外の三人が屋上に到着。出木杉の存在に動揺するもすぐにツバサを連れて離脱する。
↓
「霊竜」がこの世界とポケモンの世界の両方、全ての人類に対してテレパシーを発信する。内容は「この世界をポケモンの楽園に変えること」と「ポケモン世界の人類への逆襲」。
両世界では一部の野生ポケモン達が暴走を始め、無数の「影」が全国各地に出現。ポケモン世界の方も混乱の為、レッドらのこちらへの救援は不可能となる。
↓
のび太達は静香の提案で出木杉がコイキングを育てた山へと逃れる。
スネ夫に連絡し、彼の到着を待つ。
↓
連絡から数秒後、あり得ない速さでスネ夫が到着するが、彼はテレポートで移動してきたようだ。彼の傍にはイツキの姿が。
↓
のび太達は身構えるが、イツキに敵意は無い。死んだように眠っているセレビィを腕に抱きながら、意識不明のツバサの元へと歩み寄る。
「割りを食うのはいつも子供だね」と意味深に呟き、その後のび太達と共闘を約束する。
↓
ホウオウ、ツバサの看病をしつつパルキアと会談。「この世界を我が顕現可能な次元にすることは可能か」と問う。答えは可能。しかしそれにはパルキアが全ての力を使う必要があり、オレの命を引き換えにしなければならないと答えた。
↓
時間は一刻を争う。ツバサを欠いたまま、彼らは「霊竜」との最終決戦に挑む。
人々を襲う「影」を駆逐しつつ、のび太とイツキは「霊竜」との戦いに赴く。戦闘には参加出来ないが、静香は出木杉を救う為に何かしたいと彼らに同行する。
271 :
名無しさん、君に決めた!:2012/05/24(木) 01:59:51.27 ID:LLsLvaSc0
↓
三人は出木杉(霊竜)と再び対峙。静香は出木杉の覚醒を促す為呼び掛けるが、霊竜に乗り移られた彼は全く動じない。
↓
出木杉(霊竜)vsのび太&イツキ。
イツキの援護もあって徐々に圧していくが、彼のギャラドスが静香を攻撃。静香の護衛にはガーディが着いているが、その破壊光線の威力の前には役に立てず、イツキが繰り出したナッシーとヤドランが身を呈して彼女を庇う。
イツキは「構わない。続けたまえ」と彼女に出木杉への呼び掛けを続行させる。
↓
のび太も呼び掛けに加わり、しばらくして出木杉が反応を見せる。
彼が突如苦しみ始めたその隙を突いて、のび太のピカチュウが自己判断でギャラドスに雷を叩き込む。その攻撃が決め手となりギャラドスは沈黙する。
↓
もがき苦しむ出木杉の身体から禍々しい闇が溢れ出てくる。闇は天に昇ると周囲の「影」を手当たり次第吸収していき、竜の姿を形成する。
↓
闇と分離した出木杉は静香に対し「ありがとう」、のび太に対し「君には負けたよ」と清々しい表情で言う。親友が救われたことに安堵する二人だが、事態は最悪な状況を迎えていた。
↓
霊竜復活。その姿はギラティナと酷似していた。
霊竜は一年に及ぶパルキアとの戦いで大きなダメージを受けていたが、人やポケモンが持つ負の感情を取り込むことでより強力な力をつけて復活を果たした。
↓
霊竜の存在により次元が大きく歪み、世界が崩壊の危機に陥る。のび太は無謀にも戦闘を挑むが、一瞬にして全ての手持ちを失ってしまう。
↓
パルキア、世界の崩壊を防ぐ為、己の命を引き換えに次元を安定させることを決意する。儀式までの時間稼ぎをイツキに頼む。
272 :
名無しさん、君に決めた!:2012/05/24(木) 02:00:21.25 ID:LLsLvaSc0
連投規制があるため、続きはまた後で
273 :
名無しさん、君に決めた!:2012/05/25(金) 16:35:01.51 ID:C1a6XBTVO
384:のび太と銀色の亡霊 ◆XbJjp4HhQQ
12/05/22(火) 22:01:03 ID:rvWuPLog
↓
意識不明のツバサ、取り付かれた「影」から「影」が見てきた記憶の映像を夢見心地に見せられる。それは霊竜の記憶であり、無念に散っていった野生ポケモン達の思いでもあった。
霊竜の記憶の中から、彼女は父ゴールドと霊竜による戦いを見る。
ゴールド失踪のきっかけは、霊竜との悲しい戦いにあった。彼は霊竜のような存在を生み出さない為、惨めな亡霊にさせない為、野生ポケモンを救済する旅に出掛けたのだ。ツバサは彼のことを憎んでいた無知な自分に叱咤する。
↓
ツバサ覚醒。ホウオウに父のことは大好きだと言う。
↓
ツバサ、練馬区に佇む霊竜の元へ向かう。彼女の道を塞ぐ「影」や野生ポケモン達の相手は全てスネ夫とジャイアンが引き受け、切り開いてくれた道からのび太達と合流。
↓
のび太から事情を聞いたツバサは時間稼ぎの為、イツキの応援に向かおうとする。
しかし、イツキは既に敗れていた。
ツバサはホウオウ以外の全てのポケモンを扱うも、霊竜に圧倒される。
↓
パルキア、儀式を終える。彼の持つ全ての力によってこの世界の次元は完全に安定し、崩壊の危険はなくなった。パルキアはのび太に別れの言葉を告げ、紅の光に消える。
↓
次元崩壊の危険がなくなったことで、ツバサがホウオウを召喚する。霊竜との世代を越えた因縁の戦いに、決着をつける為。
↓
ホウオウ、善戦し霊竜を追い詰める。が、不利を悟った霊竜は何処かへ逃亡する。
↓
しばしその場に訪れた静寂。
霊竜との戦いに敗れたイツキは仰向けで倒れたまま、薄れゆく意識の中で自らを囲むのび太、ツバサ、静香の三人に一言ずつ声を掛ける。ツバサとは和解した。
そしてセレビィを抱えたまま、彼は息を引き取った。
385:のび太と銀色の亡霊 ◆XbJjp4HhQQ
12/05/22(火) 22:02:13 ID:rvWuPLog
↓
上空には黒い穴がある。それは霊竜が逃れた「破れた世界」へとつながる空間であると、ホウオウが解説する。
のび太とツバサのポケモンはホウオウの聖なる灰で完全回復。しかし、人を生き返らせることは出来ない。
↓
静香に出木杉を任せ、のび太と静香はホウオウに乗って破れた世界へと突入する。
↓
破れた世界の中は無数の影――ポケモン達の亡霊で溢れていた。ホウオウがそれらの相手をしている間、のび太が身体を休めている霊竜の姿を発見。
↓
ホウオウが「影」を引き付けている隙に、のび太はリザードンに乗って霊竜にとどめを刺しに向かう。
↓
ピカチュウの雷とリザードンのオーバーヒートで霊竜を撃破。しかし、それと同時にのび太は目の前に現れた巨大な「影」に飲まれてしまう。
↓
のび太はあらかじめその手に虹色の羽根を持っていた為、取り付こうとしてきた「影」は呆気なく振り払われた。
だがその瞬間、のび太もまた「影」と霊竜の思いを読み取った。人間から捨てられた者、そして弱い者は死んでいくというポケモン達の惨めな生涯に、自分に何が出来るだろうかと考える。
↓
のび太が周囲を見回すと、無数に居た筈の「影」の姿は消えていた。代わりに、霊竜と酷似した白銀のポケモンの姿があった。
↓
そのポケモンの名はギラティナ。亡霊を成仏させる死の神と呼ばれるポケモンだ。
しかし次々と怨念を増大させていく霊達の力に負け、その身体を取り付かれてしまったのだと話す。霊竜とは亡霊に取り付かれたギラティナの姿だったのだ。
↓
ギラティナ、直ちに全ての亡霊を成仏させ、のび太とツバサを元の世界に帰そうとする。しかし、のび太はそれを拒んだ。
「僕もツバサちゃんの世界に行く」
パルキアが次元を安定させた為、のび太の世界とツバサの世界を行き来することはもう出来ない。それでもいいと。二度と帰れなくてもいいと。
死んでいったポケモン達の思いを知ったのび太は、ポケモンの世界でツバサの父ゴールドのように救済の旅をすることを決意した。
「バカなんじゃないの?」というツバサの問いに「そんなの知ってるでしょ」と返すのび太。ツバサは否定的ながらも最後には「お前もお父さんも、本当に大バカね……」と怒りながら笑み、のび太の来訪を歓迎する。
↓
ホウオウに乗ったのび太とツバサはギラティナに導かれ、ポケモンの世界へと消え去った。
同じ頃、練馬区の上空には巨大な虹の輪が浮かんでおり、それを見た野生ポケモン達は何故か涙を流し、暴走を止めたと言う……。
【THE END】
それから8年後――胸以外心身共に成長した少女がジャングル内でダメ親父と再会した。
さらにもう8年後には、出木杉と静香の結婚式に参加する眼鏡の青年と黄色い電気ネズミの姿があったとか――。
386:のび太と銀色の亡霊 ◆XbJjp4HhQQ
12/05/22(火) 22:06:20 ID:rvWuPLog
以上がのび太と銀色の亡霊のプロットと言うか、あらすじになります。わかりにくい部分は多々ありますが(イツキやパルキア関連の話とか)、それらの部分は心理描写が入るのであらすじにしにくかったり……作者の力不足ですはい。
詳細は今後暇があれば投下したいと思いますが、どうなるかはわかりません。 ただ一つ、ドラえもんを終始空気にしてすみませんでした。
以上、転載でした
なんつーか今まで長かったな、お疲れさん
乙
イツキが味方側で活躍してよかったわ、うん
あれ、終わったのか
あげ
真・スレッドストッパー。。。( ̄ー ̄)ニヤリッ
は?
ねこーん
さっさと糞スレ削除依頼出しとけ