石マニアのダイゴさんは鋼ポケモンが大好きだ。鋼ポケモンについて何か知りたい時、
彼にきくといい。そう兄に教わった。よくわからないがとにかくスゴイ人らしい。
ある日俺はポケモンに乗って空を飛び、ダイゴさんのいるトクサネへと向かった。
ダイゴ宅へ到着。窓越しで家の中を覗く。(俺ってストーカーみたいじゃね。)
中には、ダイゴさんと、近所に住んでるっぽい少年がいた。
「ダイゴさんダイゴさんダイゴさん!!!!!!!!馬鹿ネールって何ですか!!!!!!!!」
「嗚呼・・ハガネールはね、イワークにメタルコートを・・・云々。」
「じゃあ!!じゃあじゃあじゃあじゃあ!!!!!!メタロスって!!!!????????」
「嗚呼・・メタグロスねぇ。僕が一番好きなポケモンだね・・・そい…」
「あのね!!!きいてきいてきいて!!!《織田無道》ってどんなヤツ!!???」
「はいっ? 《エアームド》かい?」
ダイゴさんはあきれた顔をしていた。少年は真剣な顔立ちであった。
うおおおおっ…ガキだ。うるさいガキは速やかに帰るべき。ダイゴさんに纏わりつくなよ。
今日はダイゴさんに質問をしに来たというのに。俺は心の中で帰れコールだ。(帰れ帰れ!!)
そういやさっきあのガキが「ハガ」ネールのことを「馬鹿」ネールと間違っていた希ガス。
「馬鹿」なのはお前だろ。そう言いたかった。名前くらいわかれ。
俺はポケモンには詳しい、はず。少なくともこのガキよりは。
午後1時頃になって、ようやく少年がドアから出てきた。ありがとう。そしてさようなら。
ダイゴさんに、ポケモンのことで聞きたかった事があるのだ。
「おや、またお客さんが来たのかな?」
(来たのかな?って??来たよ。来たというかさっきからいたよね。うん。)
家の中は色々な石が置いてあった。やっぱりコイツは石マニアなんだなー…。
ソファーの上に座る。ダイゴさんはテーブルをはさんで反対側のソファーに座った。
俺は温かいお茶と、クッキーをいただいた。ありがとう。俺はクッキー大嫌い。
しばらくの沈黙が続いた後、俺が口をひらく。
「エアームド、、について知りたいんですが。先程の少年が織田無道と言っていたヤツです。」
「嗚呼・・いいよ。エアームドね。」
俺はエアームドが見たかった。欲しかった。だがアイツらは、俺の住む地域に生息していない。
本物のアイツらを一目みたい。あの銀に輝く身体。欲しい。見たい。手足を売ってでも。
その昔、毎号必ず読んでいた某ポケモン雑誌のひとコーナー「僕の私のポケモン自慢」にて、
投稿者のコメントと一緒にエアームドの写真が掲載されてた。顔も知らないその投稿者が、憎かった。
(学校行くときも寝るときもコイツと一緒です(笑)か。うらやましすぎるぜ。)
エアームドが俺のパーティに…もしも加わったとしたら…どうなるかな。
ダイゴさんが何か重要な事を話していたようだが、俺の耳には届かなかった。
なぜなら今は俺の妄想タイム。夢くらい見させてくれ。
アイツの背に乗り大空を羽ばたきたい。うは、これ、いい。
そして、どこへ行くにもアイツに乗って旅をする。きっと楽しい旅になる。
ピジョット「じゃあ、俺はもう用なしだな。」
うん。そうだ。ような… え? お前、あ。
エアームドに気を取られて、俺はお前の存在を忘れていたよ。俺は毎日ピジョットの背に乗っていた。
今日だって、ここへ来るのにお前の背に乗っていた。
お前とはポッポの頃からの付き合いであり、これからもずっと付き合っていくつもりだった。
しかし、エアームドを捕まえることにより、ピジョットは出番がなくなると思ったのだ。
実際にパーティのバランスや、育て中のポケモンの事を考えると、
ピジョットとエアームドの両方を入れることは甚だ無理だ。無理無理無理無理マグカルゴ。
極めて遺憾なのか、そうなのか。悔しいのか。
そんなに、焼き餅を焼かないでほしい。俺は餅大嫌い。
嫉妬の嫉は、嫉(ねた)むの嫉。嫉妬の妬は、妬(ねた)むの妬である。
…俺が幼少の頃、親にねだってポケモンを飼うことにした。ポッポだった。
これなら凶暴なポケモンじゃないから飼っても良いだろう。親がそう言った。
アイツとはいつも一緒に行動していた。風邪のときでも。風呂でも。
小二の頃、俺をいじめた剛田に向かって、ポッポが「すなかけ」で復讐してくれた。嬉しかった。
修学旅行中、フェリーの甲板で友達とふざけて遊んでいたときに、
すべって津軽海峡の海へ落ちたことがある。俺、バカ。でもピジョンが助けてくれた。
TDLで迷子になったときは、空からピジョットが助けに来てくれた。これは広すぎるTDLが悪い。
そう思うと、俺とお前は切っても切れない関係にあるんだよな…。
しかし、もう飽きた。ボックス行きでも我慢してくれ。
それからピジョットと口喧嘩をした。一人と一匹の罵り合いは小一時間続いた。
他のポケモンたちが、俺たちを心配そうに見つめていたが気にしなかった。
「ついに絶好だ」「ああ」
ダイゴさんには悪い。話を全然聞いてなかった。俺はもう帰る。
ピジョットはどっかいった。バイバイ!そして俺はこの辺の草むらをぶらぶらと散歩。
夜までに帰宅しようかな。ダイゴさんちに泊めてもらおうか。
なんか今日ちょっと暑いよな。そう思ったときだった。
「あ」
あんなに欲しがっていたエアームドが、エアームドが!
木陰で羽を休めていた。いた。いたよ。ちょっとビックリした。
俺「お前エアームドだろ!だよな!そうだよな!!」
エアームド「うっせーボケ黙れアンタ誰だここで何してん」
俺「俺は俺!散歩をしている!お前は何してんだよ!」
エアームド「俺も散歩だよ!!」
俺「ッく・・コイツただものじゃねえ! 行け!ピジョット!!」
・・・
ピジョットはでてこなかった。当たり前だ。当たり前だのクラッカーだ。
俺「そうかー、じゃあ行けガラガラっ!」俺はボールを投げた。
ボールの中から、骨をかぶったポケモンとちゃぶ台と茶碗がでてきた。
ガラガラ「!!うぐふっ ゴメン今食事中!出すな!」
俺「わかった!なんなら行けッ!ウツボット!捕まえやすくするため眠り粉をッ!!!」
ボールの中から、食虫植物のようなポケモンと、テレビが出てきた・・・。
ウツボット「!! 待て今ごきげんよう見てんだ!あとにしてくれ!」
マジかよ!!
俺は小堺一機の「一機」の読み方はいっきだと思っていた。
レベルの高いポケモンはあとコイツしか残ってない。リザードン頼む。
投げたボールの中から、大きなポケモンが出てきた。キッチンと一緒に。
リザードン「!! え! ゴメン今調理中!天ぷら揚げてるからムリ!!」
俺「そんなこと言わずに!!お願いだ!!」
リザードン「さては俺!天ぷらを揚げたことが無いのだナっ!」
くそう!なんでボールの中にテレビやキッチンが!!俺ピンチ!!!
ピンチどころでない大ピンチだ!!!むしろ超ピンチだ!!!!!
ガラガラ「食い終わった!一丁やってくるか!!」
俺「おお!ありがとう!」
骨をかぶったポケモンは、棒状の骨をブーメランのように投げつけた。
エアームド「当たらん!!」
ガラガラ「フッフッフ。だがそれはブーメラン!!戻ってくるんだぜ!!」
エアームド「なにぃッ!!」
しかし避けられた!「いてッ!!」
俺「俺に当たった!!」 ガラガラ「スマン!!」
ウツボット「明日もごきげんよう!! 見終わった!」
俺「そうか!まずは、しびれごな!」
しかしエアームドの翼で吹き飛ばされた!
俺「俺にかかった!!」 ウツボット「スマン!!」
なんてしびれるんだ!!神経機能がおかしくなったぜ!!
リザードン「天ぷらが揚がった! 俺が行こう!!」
俺「そうか!鋼は炎に弱い!火炎放射だ!」
リザードン「がおー」
エアームド「いてー」
リザードン「ずおー」
エアームド「いてー」
リザードン「しねー」
エアームド「勘弁勘弁!!」
とっさに俺はボールを投げた!捕まえた!!念願のエアームドを手に入れたぞ!!
それを、一匹の鳥ポケモンが見つめていた。
期待age
あんなに欲しかったポケモンがここにいる。
もう自分だけのものだ。一生大事にしたい。
何年も昔から、愛してやまなかったポケモンだ。
言葉では言い表せないが、とにかくこのポケモンが好きだ。
やっと手に入った。とても嬉しい。エアームドオタと言われてもいい。
今にも天に行ってしまいそうだ。いやまだ死ねない。
俺はボールを投げた。
エアームド「いきなり出すな氏ね」
小生意気なことを言う。言わなければいいのだが・・・。
俺は、背に飛び乗った。これで大空を駆けてくれ。長年の夢なんだ・・・。
・・・ん・・違う。アレ?
・・・なんか想像していたのと違う。こんなんじゃない。
はっきり言って乗りづらい。乗りづらいし、痛い。
硬い身体に、腕などをぶつける。そして降りづらい。なんだコレ・・・
まだピジョットの方がマシだった。乗るんなら断然ピジョットの方がいい。
でももういない。ここまできて、なんかガッカリだ。
あいにくリザードンにそらをとぶを覚えさせるのは、俺の都合上無理。無理無理マグマッグ。
エアームド「帰っていいか!?」
ああ・・。俺は「帰っていい」と言ってしまった。
いちいちイライラしながら乗るのなら、いらない。それにこざかしいときたもんだ・・・。
期待エイジ
ガキンチョがオナニーするスレはここですか?
・・・ダイゴさんは、こう言っていた。
『身体が頑丈な玄人でないと(エアームドに乗るのは)難しい』と。
俺はその話を聞いていなかった。聞いている振りをして、妄想だ。
おまけにピジョットと喧嘩までする。さぞダイゴさんは飽きれたであろう。
あのガキ(織田無道)よりも飽きれていたハズ。俺はガキ以下。ガキ以下のゴキだ。ゴキブリだ。
人の話を聞かないから、こうなる。身から出たさびだ。
話を聞いていればエアームドに愛着がなくなってピジョットと別れなくてすんだかも分からない。
俺っておバカさん。そんな自分がイヤになった。くやしくて涙目になった。
俺は一匹のポケモンをなくした。一番大事なポケモンのはずだった。
虚しくなってくる。熱くなってくる。
心の中で何かが渦巻いて、気持ち悪くなってきた。とりあえず、走り出す。
周りに人がいるのか、とかはわからない。顔は悔し涙で溢れていた。
途中、転んだ。顔面痛い。涙と土が混ざった。はずかしい。もうどうにでもなれ。
―そのとき、ふかふかしたヘンな手みたいなものに上半身を起こされた。
「あ?」
ピジョット「あ?じゃねーよアホ」
うおおおおおおおっ。なんでお前がここにいるんだ?と不思議でたまらなかった。
もう一生、会えないものだと決め付けていた。
ピジョット「心配だからずっと見てたぜ!」
ありがとう。マジでありがとう。なんて言っていいのかわからない。
お前最高過ぎじゃね。最も高いって書いて最高じゃね。
俺はピジョットの背に乗った。「まっすぐ家まで帰ろう。」
いつもの感触だ。懐かしくて死にそう。このフカフカじゃないと俺、生きていけない。
すでに日も暮れて、眼下には家々の灯りがつき始める。
途中、ヤツの背を涙で濡らしてやった。
その涙は、先程の悔しさではなく嬉しさによるものだった。
さっきまでの涙も、かいた汗も、変なモヤモヤ感も、すべて風で吹き飛んでしまった。
絶好の話なんて、何をイマサラタウン。俺とお前の友情は常盤シティってか。